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 今月の金子さん

ディレクトリは十人十色


        れまでたびたびWWW上での検索について触れてきましたが、その際に関心があったのは、検索エンジンで思いついたキーワードで検索することによって、そこからどんな発見ができるだろうか、というものでした。今回はもうひとつの検索方法である「ディレクトリ」についてです。

        ィレクトリ」での検索方法は、登録されたWebサイトの情報がカテゴリー別に分類されていて、最初の大項目から中項目、小項目へとどんどん階層を下がっていくことによって、目的のホームページに達するというものです。といっても、検索エンジンにはディレクトリの機能をあわせ持っているものも多いので、特に意識していなくても、両者を組み合わせて検索をしていることが多いのではないかと思います。
         もちろん、ディレクトリも検索エンジンと同様、目的の情報に達するための手段としてあるわけですが、今回もそういった実用性のメガネは外しておいて、このディレクトリという道具自体に目を向けてみると、またいろいろな発見ができそうです。

        くつかのディレクトリを使ってみてまず気づくのは、そのカテゴリーの構成が、それぞれのディレクトリによって様々に異なっているということです。日本の代表的なディレクトリ・サービスのひとつである<NTT DIRECTORY>では、一番上位のカテゴリーは「懸賞」「クイズ/ゲーム」「音楽・芸能界」「スポーツ」など、21の大項目で構成されています。こうしたエンターテインメント系・アミューズメント系をトップレベルで細かく扱っているほか、当然ながらNTTに関する情報へのアクセスが整っているのも特徴です。
         また、「WebMag」読者にはおなじみの<Info Navigator>のジャンル別検索では、「科学・技術」「経済・金融」「法律」「政治・行政」など18の大項目があります。このようにビジネスや社会情報の扱いが大きいほか、「芸術」や「健康・医療」といった項目があるなど、ちょいと大人向けの分類で、Webサイトの情報をカテゴリー別に分類する際の考え方がNTT DIRECTORYとは異なっていることがわかります。
        とりわけユニークなのが<Yahoo! Japan>で、これは本家のU.S.A.版<Yahoo!>のカテゴリーを踏襲しているため、他の国内ディレクトリでは見られないような項目がたくさん登場します。その構成でも、項目の上下の関係が独特であったり、ある中項目が別のカテゴリーでは小項目として出てくるなど、構造が複雑で、使いにくいなぁと思う反面、逆にそこから新しい言葉を知ったり、それが考えるきっかけになったりすることもしばしばです。

        ういった、様々なディレクトリの分類体系を集めて、それらを比較したらきっと面白いと思い、誰かホームページ上でそれをやっている人はいないかと探したのですが、今のところ見つかっていません。例えばYahoo! Japanには<サーチエンジンの比較>という項目がありますが、そこにリストアップされているホームページは、各検索エンジンの速度やヒット数を比較したものがほとんどのようです。どなたか、ディレクトリの分類体系の比較なんていうノンキな作業をこつこつとやっていらっしゃる方をご存知でしたら、ぜひ教えてください。哲学や言語学関係の人にとってはなかなか魅力的な素材だと思うのですが、どうでしょうか?
         それというのも、「ノンキな作業」とは言いましたが、分類体系を作るにはそれなりの理念というか、思想がないと作れないわけで、そうした理念や思想の反映である分類体系を比較してみるのは、無駄ではないどころか、けっこう重要なことなのではないかと思うわけです。まして、急激に変化するインターネットの世界において、例えば3年間にあるディレクトリの分類体系や各項目の割合がどのように変化したかなんていうのを研究すれば、うまくやれば、そこから現代社会の一断面が明らかになってくるような気がします。う〜ん、きっともう、誰かやっているんでしょうねぇ。

        ちろん、WWW上のディレクトリを待つまでもなく、こうした分類体系についてはこれまでにも様々な研究がなされています。手軽に読めるものとしては、樺山紘一著『西洋学事始』(中公文庫、1987年)の「分類学」の章や、坂本賢三著『「分ける」こと「わかる」こと』(講談社現代新書、1982年)などがありますし、大部なものではトム・マッカーサー著『辞書の世界史』(三省堂、1991年)も参考になります。
        とっておきは『大百科事典』(平凡社、1984-85年)の「分類」の項目の中にある、吉田集而氏による「分類の文化人類学」という記述で、これはもう著者がどこまで本気、どこから冗談で書いているのかわからないような名文なので、興味のある方はぜひ一度図書館などで読んでみてください。
        今回は普段なにげなく使っているディレクトリについて、あらためて目を向けてみようという話題でした。ちょっと変わった分類をしているディレクトリ・サービスを見つけたり、ディレクトリにしたら面白そうな新しい分類体系のアイデアなどありましたら、ぜひ教えてください。