金子伸二

大学時代の友人と数年ぶりに会いました。アチラは卒業以来の真っ当な会社員。それに対してコチラは「フリーランス」とは聞こえがいいが、つまりは定職を持たない素浪人の身。「金子の仕事はよくわからん」と言われるのを「ごもっとも」と頷きながらも、あらゆることに対して素人でありつづけるのも悪くはないよと、心の中で強がりを言いました。でも、周囲の状況はますます厳しくなりそうで、そんなことを言っていられるのも今のうちかなぁ?

◆◆今月の金子さん〜謎の『日本三大』の世界・2◆◆

回はネット上の探索で、「日本三大奇祭」と呼ばれるお祭りが、日本に三つどころか、各地に多数ある事実を発見して、その不思議さにしばし思いを馳せたわけですが、今回もまた、謎が謎を呼ぶ「日本三大モノ」の世界を探ってみることにしましょう。

祭りのなかには、その土地独特のスタイルを持った「奇祭」のほかに、日本各地に広く見られるお祭りもあります。その代表は、夏の風物詩「七夕祭り」でしょう。
 七夕祭りといえば、宮城県仙台市の<仙台七夕祭り>、そして神奈川県平塚市の<湘南ひらつか七夕まつり>が全国的に有名です。この二つの七夕祭りが「日本三大七夕祭り」に数えられるという点には、あまり異論はないようですが、残る一つの座をどこの七夕祭りが占めるかという点については、かなりの諸説があるようです。「三大七夕」をキーワードにして、さっそく検索してみましょう。

ずは、「我こそ仙台、平塚と並ぶ三大七夕の一つ」と称するのが、愛知県安城市の<安城七夕まつり>と、愛知県一宮市の<おりもの感謝祭一宮七夕まつり>。同じ愛知県に属する二つの市が競い合うというのは、関係者にとっては深刻な問題なんでしょうね。加えて、同じ東海地方の静岡県清水市の<清水七夕まつり>も盛大で、地元では「三大七夕の一つ」という評価が常識のようです。
 さらに、東京都杉並区の<阿佐谷七夕まつり>、千葉県茂原市の<茂原七夕まつり>も、それぞれ「三大七夕」を標榜しているほか、富山県の高岡市や、岩手県の陸前高田市など、「三大七夕」として名乗りを上げている祭りは枚挙にいとまがありません。

ぜこうも、各地に七夕祭りがあって、「三大七夕」という評価を互いに競い合っているのか、あらためて考えてみると不思議な現象といえます。
 それぞれのページを見ながら気づいたのは、各地の七夕祭りの多くが昭和30年前後に始まり、商工会議所や商店街が主催をしていること。なるほど、七夕祭りなら宗教色も強くなく、古くからの地縁に属さない新住民でも気軽に参加できる。飾り付けで華やかさが演出できるし、星祭りと考えればロマンもある。それに、旧暦の七夕のある八月は、俗に「二八(ニッパチ)」と呼ばれて消費が落ち込む時期に当たるとあれば、商工会や商店街がお客を呼び込むイベントとして注目するのも納得できます。
 そうとなれば、少しでも多くの来場者を得るために、その規模を競い、知名度を争うのは当然の成り行きで、かくして戦後続々と、全国各地に「三大七夕」が並び立つという状況が生じたのではないでしょうか。それぞれの七夕の成立事情をさらに調べて比較していくと、都市と祭りとの関係について面白い発見ができるかもしれません。

「奇祭」や「七夕祭り」の他にも、「日本三大」の座を巡って熾烈な争いが展開されているものは、あまり知られていないだけで、実は数多くあるようです。
 「日本三大松原」といえば、静岡県清水市の「三保の松原」、京都府宮津市の「天の橋立」、佐賀県唐津市の「虹の松原」が全国的に有名ですが、こと福井県にあっては事情が異なり、「天の橋立」ではなく敦賀市の<気比の松原>が数えられています。どうやら、この「日本三大」と称するもの、実際に三つが確定しているということよりも、そこに関る人々の気持ちの問題に重要な意味がありそうです。

俗学者・柳田國男は『明治大正史 世相篇』の中で「風光推移」と「故郷異郷」という二つの章を並べて設け、前者では人々が土地の風物を楽しむ際に「名所」という観念に強く拘束されていることを指摘し、後者では交通や情報の発達によって都市と都市との間に競争の意識が増しつつあることを語っています。
 これを現代の「日本三大」の場合に当てはめれば、都市と都市との競争において、それぞれの都市の独自性や個性を競い合うよりも、他の都市と比較して優位を示しやすい、全国的に共通した領域での知名度でもって争う方が重視されている、というように読み解くことができそうです。これは「日本三大」のような名物に限らず、例えばバブル期に全国で行われた地方博覧会や、今も各地に作り続けられている劇場やホール、美術館といった文化施設にも共通する、日本の都市の特徴的なあり方とも言えるのではないでしょうか。
 興味本位で始まった「日本三大」を巡るウェブ・トラベルは、いつの間にやら都市論とも呼べる大きな問題の入口へとつながってきました。さて、次回はどんな発見の旅となりますやら……。

今回アクセスしたページ


仙台七夕祭り
(http://www.intercraft.co.jp/tanabata-1997/)
湘南ひらつか七夕まつり
(http://tanabata.nic.co.jp/)
安城七夕まつり
(http://www.namos.co.jp/aichi-hatsu/kontoku/tanabata/anjyo.html)
おりもの感謝祭一宮七夕まつり
(http://www.namos.co.jp/aichi-hatsu/kontoku/tanabata/ichinomi.html)
清水七夕まつり
(http://www2.crosswave.co.jp/ginza/77/)
阿佐谷七夕まつり
(http://www.shinjuku.tokyo.mbc.ntt.co.jp/asagaya/index.html)
茂原七夕まつり
(http://member.nifty.ne.jp/y-files/Mobara/Tanabata.htm)
気比の松原 (福井県)
(http://www.pref.fukui.jp/japanese/meisho24.html)


InfoNavigatorここから思いついた言葉でホームページを検索!
*半角カナは使用できません
オプション検索 ヘルプ