金子伸二

 先年亡くなられた大学時代の恩師の遺稿集を現在作っています。新聞や雑誌に発表された原稿をOCRでテキスト化して、DTPで一冊の本にまとめるという次第。作業が進行するにしたがって、無数の誤植の修正や組版上の細かな調整に追われています。これが終わらないと、夏は来ないなぁ〜……。

◆◆今月の金子さん〜煙突は屹立する◆◆

れまでにも何度か、日本の近代の建築物や土木建造物を扱ったサイトを紹介してきましたが、今回は「煙突」を求めてウェブ・トラベルに出かけてみました。それも、できれば写真で様々な煙突を見てみたいと思ったので、検索エンジン<InfoNavigator>で「煙突 写真」をキーワードに検索をしてみました。そこで出てきた結果を主な手がかりに発見した、煙突をめぐるページ群をご紹介しましょう。

の名もズバリ<えんとつ>は、煙突についての「いろんな煙突情報を集めました」というホームページ。中でも夜中に見る、火の出る煙突の素晴らしさを語る件は、まさに「熱」を帯びたものがあります。「大阪市南西部のえんとつまっぷ」によれば、中山製鋼所の煙突の夜景はかなりの迫力らしく、ぜひ一度見てみたいもの。「堺の関西電力発電所」の整列する煙突群もなかなかの風情です。
 <煙突工場ホームページ>は、1996年の夏に東京都内の各所や郷里の和歌山で見かけた煙突を紹介したページ。煙突を血眼に探すというよりは、何となく歩いていて目にとまった煙突を、周辺の街並みや風景の一部として捉えているような、一歩引いた視点が独特。淡々とした語り口も、なんかいい味出してます。

のように、どうも煙突には、人の気持ちを惹き付ける不思議な魅力があるようです。<音楽と形のページ>の「形のページ」では、煙突をはじめとする、巨大建造物の形態についての考察が展開されています。このなかで作者は、煙突には人間の根源的な衝動が露出している、と語っています。また、とりわけ煙突を眺める際の「見上げる」視線に着目し、それが地上から離脱するかのような快感を見る者に与えると分析しています。
 なるほど、屹立する煙突は、均質な街並みに一種の異化効果をもたらしているようです。

方で煙突は、日本の近代化・工業化のシンボルでもありました。
 九州大学附属図書館の電子展示<よみがえる福岡の炭坑>では、明治期の福岡の炭坑の様子を記録した貴重な写真を見ることができます。福岡にこんなにも数多くの炭坑があったのかという驚きとともに、蒸気の白煙を吐く赤煉瓦の煙突が、竪坑櫓とならぶ炭坑の象徴であったことがわかります。
 また、愛知県豊橋市の歴史を写真で紹介した<写真に見る豊橋・今むかしホームページ>の「3 糸の町豊橋」では、製糸工場の煙突が林立する戦前の豊橋の街と、宅地化が進み煙突が消えた戦後の街とを比較することができます。振り返ってみれば、以前は身の回りにも銭湯や工場など、たくさんの煙突がありましたが、今では街中の中小の煙突群はすっかり姿を潜め、かわりに清掃工場の巨大な煙突が忽然と聳えるようになり、煙突の有り様もだいぶ変わってきたことに気づかされます。

城県日立市のガイドマップ<日立散歩地図>では、同市にあった「大煙突」が紹介されています。鉱山の排煙による公害に対する苦肉の策として作られた巨大煙突も、役目を終えてからはライトアップされるなどして街の名物として親しまれていましたが、近年になって途中から折れてしまったそうです。緑に覆われた山頂に聳え立つかつての姿と比べると、現在の姿はどこか寂しげです。
 阪神淡路大震災は、阪神工業地帯にある多くの工場にも被害をもたらしました。<神戸製鋼の復興情報>では、神戸製鉄所の倒壊した煙突の震災直後の姿と、完成した新煙突が紹介されています。煙突は、その本来の姿が異様であるだけに、不測の事態でそれが失われた時には、強烈な喪失感を人々に与えるもののようです。

境問題が緊急な課題として議論される昨今では、煙突はどちらかといえば敵(カタキ)役として扱われることが多いようです。実際に、ベルリンの壁が壊れる直前に東ドイツを旅した時には、化学工場から悪臭を伴った黄灰色の煙が吐き出されているのを目の当たりにし、林立する煙突が禍々(まがまが)しく見えたものでした。と同時に、煙突はその独特の形態から、街のランドマークとして、また記憶の拠り所として、人の気持ちを惹き付ける魅力も持っています。いずれにしても、我々と煙突との付き合いは、当分の間は続いていくことでしょう。通勤通学や買い物の途中、ちょっと煙突に気を付けてみると、また新たな発見が生まれてくるかもしれません。

今回アクセスしたページ


InfoNavigator
(http://infonavi.infoweb.ne.jp/)
えんとつ
(http://www.venus.dtinet.or.jp/~hiraisi/)
煙突工場ホームページ
(http://www.at-m.or.jp/~toshiki/)
音楽と形のページ
(http://netpassport-wc.netpassport.or.jp/~wnaito28/index.htm)
よみがえる福岡の炭坑−明治期の写真・炭坑札・地図展−(九州大学附属図書館)
(http://www.lib.kyushu-u.ac.jp/tanko.htm)
写真に見る豊橋・今むかしホームページ(東三河チャイルド)
(http://www.amitaj.or.jp/kids/rekisi/)
日立散歩地図(jsdi)
(http://www.jsdi.or.jp/~info-jsdi/hitachi/hitachi.html)
神戸製鋼の復興情報(神戸製鋼)
(http://www.kobelco.co.jp/p106/p1060j.htm)


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