金子伸二

 久しぶりにパソコンを新調した。今までのは数世代前のモデルで、多少の遅さは感じつつも不自由なく使い続けていたのだが、こうして新機種と比べてみると、あまりの速度の違いにあらためて愕然としてしまう。特にウェブのブラウジングは段違いだ。ネットサーフィン(死語?)を満喫するなら最新のハードを使うに限ることを実感したのだが、このことは逆に、現在のウェブはハード資源をすさまじく浪費する極めて効率の悪いシステムになりつつある、ということでもある。2大ブラウザーのシェア争いも結構だが、そのエネルギーをウェブに替わる新たなサービスの開発に注いでほしいものだ。

◆◆今月の金子さん〜お仕事は何ですか?◆◆

段生活していて困ることの一つが、自分の仕事を何と呼んだらいいのか、ということだ。たとえばパソコンのソフトを買って、ユーザー登録ハガキに記入する段になると、「職業」の欄にどう書くかで一時悩む羽目に陥る。結局は「教師」としたり(いちおう某大学の非常勤講師をしているので、ウソはついてない)、何だかよくわからない「自由業」という項目に○をつけたりして(講師以外にもフリーでアレコレ仕事をしているので、これもウソではない)、お茶を濁している。これが「公務員」とか「会社員」とか一言で表せるものなら苦労はないのだが、いい歳をしていまだに定職らしきものに就いていない身分としては、ささやかな負い目を感じつつ、その場その場で答を捻出している。
 これが初対面の人との自己紹介になるとさらに厄介なことになる。「お仕事は何を?」「あ〜、いや〜、それがですね、まあイロイロと……ワハハ」「???」 べつに相手の方も特別な関心を持っているわけではないのだから、もっともらしく答えればそれでその場は済むのだが、職業の呼び方で長いこと悩んできたせいで、職業について聞かれるとシドロモドロになる癖がついてしまったらしい。情けないことである。
 といって、一気に開き直って、「○○コーディネーター」だの「××クリエイター」だのというワケのわからん職業を得意げに名乗るような度胸も持ちあわせていない。いったい今の自分の仕事を指すのにブナンな呼び方はないものか。とりあえず、世の中で一般に通用している職業にはどんなものがあるものやらと、インターネットで調べてみた。

業の分類で広く使われているのが、国勢調査における職業分類だ。<総務庁統計局・統計センター>のページでは国勢調査についてのデータが提供されているが、国勢調査における職業分類を網羅した表<職業の分類一覧>には国勢調査で用いられた294項目の職業がリストアップされている。一つ一つを見ていくと、ふだんよく耳にするような職業もあれば、「せん孔機等操作員」「接客社交係」「揚返工,かせ取工」など、あまり聞きなれない職業もある。「音楽家」や「俳優,舞踊家,演芸家」「職業スポーツ家」がそれぞれ個人に教授するかどうかによってさらに区分されているのが不思議だし、全職業の最後にある「分類不能の職業」というのに実際どんな人が含まれるのかも謎だ。一見して、日本の近代の産業を根元で支えてきた職業が勢ぞろいをしている。「コーディネーター」や「クリエーター」の出る幕は、ここにはない。
 この国勢調査の職業分類は日本標準職業分類というもので、1960年に行政管理庁(今の総務庁統計局)によって制定されて以来、何度か改定されて現在に至っている。いちばん最近では、昨1997年に4回目の改定が行われて、その内容が<日本標準職業分類(平成9年12月改定)分類項目表>に収められている。
 改定のポイントを記した<日本標準職業分類の改定(要旨)>によると、この改定で新設された項目には「システム・エンジニア」や「プログラマー」「電気通信技術者」「ホームヘルパー」などがあり、一方で廃止された項目には「採炭員」や「支柱員」といった石炭産業に関連した職業や、「帽子製造工」「木製おけ・たる・曲物製造工」などがあるという。また、項目の他に具体的な職業を示した「職業例示名」というものがあり、これについて新たに加わったものには「ゲームプログラマー」や「ソムリエ」などがあり、逆に削除された例示名には「バナナたたき売人」や「踏切警手」があるそうだ。時代によって新たに生まれつつある職業、消えつつある職業がこの素っ気無い表の中から見えてくるようだ。

業分類ということでもう一つ思い浮かぶのが、電話帳の職業分類だ。<タウンページNET>ではNTTの電話帳に関する情報が提供されているが、<時代を映す鑑、職業分類の変遷>によると、1951年の最初の職業別電話帳では職業分類が530であったものが、現在では1650に達するという。この変遷の過程について、もう少し詳しく紹介してくれると面白そうだ。タウンページの場合は「職業別」といっても、個人個人の職業が網羅されているというより、実際にはそれぞれの事業所の「産業別」といった性格が強いので、国勢調査の分類とはまた違った側面がそこから見えてくるように思える。

て、結局のところ自分の職業を何と呼んだらいいのか。原稿を書いたりしている点からすれば、国勢調査の分類で言うところの「文芸家、著述家」になるのかもしれないが、作家でもないくせにこんな職業を名乗るのはなんだか気恥ずかしい。いっそ、大杉栄や荒畑寒村らとともに原稿製作や翻訳、代筆などをナリワイとする会社「売文社」を設立した主義者・堺利彦の精神を見習って「売文業」とでも名乗った方がいさぎよいのかもしれない。でも、「分類不能の職業」もやっぱり気になるなぁ。

今回アクセスしたページ


総務庁統計局・統計センター
(http://www.stat.go.jp/)
タウンページNET
(http://directory.isp.ntt.co.jp/index.html)


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