金子伸二

 国内を旅行した時には、旅先でコンビニに入るのが楽しみになっている。一見するとどこでも同じの無個性な場所に思えるが、じっくり観察するとその土地でしか見られない商品に出会えるからだ。同じことは例えばチェーンの居酒屋にも当てはまる。札幌では「ラーメンサラダ」なるものがいくつもの店のメニューに載っていて、隣の席の女の子たちがさも当たり前のように注文していたので驚いてしまった。コンビニの取り扱い商品や居酒屋チェーンのメニューの全国比較をしたらどんな結果になるのだろうか。均質なように見える今の日本の都市も、実は隠れた多様性に満ちている。

◆◆今月の金子さん〜お土産お菓子探検◆◆

の原稿を書いているのは98年の年末、まさに帰省ラッシュがピークを迎えている時期だ。新聞やテレビのニュースでは、両手に荷物とお土産を抱えて東京駅や羽田空港から人々が故郷へと向かう、毎年夏と冬に繰り返されるお馴染みの光景が伝えられている。
 この「お土産」というもの、今や帰省や旅行には欠かすことのできないものとなっているが、それだけにまた頭痛の種でもある。出張土産に何を買って帰れば社内(とりわけお菓子類には評価の厳しい女性社員)にウケるのかは、その後の人間関係を円滑にするという点で、本来の仕事に匹敵する重要な問題だし、もはや都会と変わらなくなってしまった郷里の甥っ子や姪っ子たちに「またコレ? もう食べ飽きちゃった!」と見下されないようなお土産を持って帰ることは、マスメディアの二次的な情報に馴らされた現代の子供たちに「食」という直接的な体験によって世間の広さを実感させる貴重な教育的機会でもある(嘘!)。
 いずれにしても、お土産の選択は本人の知識と経験とセンスが問われる全人的な行為であるし、それを発揮する場となるお土産の世界も現代においては非常に奥深く幅広いものになっている。今回はそのお土産の世界を、なかでも変化の激しいお菓子を中心に探ってみることにしよう。

日北海道に行った帰りのこと、新千歳空港の売店でお土産を物色していたら、生チョコレートがやたらと目についてびっくりしてしまった。オリジナルとされるメーカーだけでなく、何社もの、それもパッケージや価格がそっくりな製品があちこちに山積みされて、次々に買われていく。一方、これまで北海道土産の定番だった「バターサ○ド」や「白い○人」は肩身が狭そうにしているし、さらに以前からある石炭型の飴やマリモ型の羊羹などは売店の隅に追いやられている有様だ。生チョコが人気であることは聞いていたが、ここまでとは思わなかった。つくづく、お土産お菓子界の栄枯盛衰の激しさを実感した経験だった。この分では、今のところ「もみじ饅頭」が制圧している感のある広島空港の売店も、いつ新たなお土産に席捲されるかわからない。いつも同じように見えるお土産売り場では、実はお菓子達の非情な闘いが繰り広げられているわけだ。
 この点は東京土産においても変わらない。かつて東京から地方への帰省土産といえば浅草<常磐堂>の「雷おこし」が定番であったが、その後は<亀屋万年堂>の「ナボナ」が「お菓子のホームラン王」として台頭、洒落た缶に入った<ヨックモック>(なぜか英語ページのみ)が一世を風靡した後、現在ではグレープストーンの<東京ばな奈『見ぃつけたっ』>という意表を突いたネーミングのお菓子が安定した人気をキープしている。ちなみにこの最後のお菓子は、東京土産でありながら、東京でよりも地方での知名度が高いという「純・お土産特化型」お菓子だ。
 ところで、東京土産に関しては、その代表選手として長い人気を誇る「ひよ子」が実は福岡土産ではないかという、いわゆる「ひよ子問題」というものがある。とある番組でCHAGE&ASKAがこの説を語っていたのを聞いた時には大きなショックを受けたのだが、調べてみると製造元の<ひよ子本舗吉野堂>は大正元年に現在の福岡県飯塚市に創業したお菓子屋さんなので、この説に間違いはないらしい。ただ、筑豊炭田の中心として繁栄した飯塚のお菓子が、どのようにして今のような東京土産になったのかはよくわからないので、さらなる調査が必要だろう。
 他にも、地方銘菓にしばしば見られる「世界食品オリンピック(モンド・セレクション)金賞受賞」というお墨付きの実態など、お土産お菓子に関する謎は多い。

のようにお土産お菓子には、一筋縄ではいかない数々の未解明な現象があるのだが、そうした謎を乗り越えて「これ」という一品を賢明に選択するには、「お土産界」の実態をきちんと把握することがまずもって肝要だ。例えば東京土産に関しては、羽田空港の売店である<東京食賓館>には、現在の東京を代表するお土産お菓子がそつなく押さえられているし、JR東海の駅売店<東海キヨスク>の「おみやげ」では、関東から関西までの主なお土産の展開が見て取れる。また、全国の高速道路のサービスエリアやパーキングエリアの情報を提供する<SAPAガイド>では、なんと各エリア取り扱いのお土産まで知ることができる。居ながらにして全国のお土産の分布を知ることができるわけで、お土産研究の基礎資料として有効だろう。同様に全国の各空港売店や主要駅キオスクのお土産状況についてもWeb上で知ることができたら、現代社会の一断面をそこからうかがうことができそうだ。

定の売場ということではなく、全国のお土産を個々に紹介してくれる実用的なWebページは、かなりの数がある。
 <JTB日本全国おみやげNET>は食品から工芸品に至るまでの全国のお土産についての情報が検索(「まんじゅう検索」とか「団子検索」とか!)できるほか、ネット上での購入も可能なページだ。
  <Kurata-net>ではお菓子についての情報を総合的に提供しているが、「全国のお菓子屋さん紹介」で地方を選択すると、「皆様から寄せられたお勧めのお菓子屋さん」という、読者の口コミ的な投稿が紹介されていて面白い。
 小野家のホームページにある<日本のお土産銘菓データベース>は「整理中」とあるが個人ページとしては大変な力作。全国のお土産お菓子の「しおり」(あの、由来とか書いてある紙片)の画像が見られるのはここぐらいではないだろうか。
 <全国菓子屋博覧会>は山形県鶴岡市のお菓子屋さん・木村屋さんのページにある。投稿による全国のお菓子の情報が集められているが、特徴がそっけなく箇条書きになっていると逆に想像力がそそられて、みんなとてもおいしそうに思えてくるから不思議だ。研究熱心なお菓子屋さんなのだろう。
 <全国特産品WEB>は福岡県商工会連合会・福岡県内市町村商工会が提供しているのだが、全国の特産品を対象に紹介している。「お菓子」や「おもちゃ」などのジャンル別検索に加え、用途別、金額別、それになんと材料別(!)などの様々な検索が可能だ。用途別の「お彼岸」とか、材料別の「鉛」でいったい何が出てくるのか、気になるでしょ?
 これらのページは、実際にお土産を買う際の手がかりになるだけでなく、ただ眺めているだけでも、それぞれの土地柄が感じられてくるから面白い。

 「土産」の語源は実ははっきりしないらしいのだが、「宮笥」(みやけ)であるとするのが一般的のようだ。「笥(け)はいれもののことで,宮笥とは神から授かった器といった意味」(『平凡社大百科事典』)であるという。「かつての旅は寺社詣でが中心であり、詣でた寺社の神の恩恵をわかち与えるために、持ち返った物を人々に配ることにみやげの意味があった」(『縮刷版 日本民俗事典』弘文堂)とされるように、土産は個人の特殊な経験を集団の普遍的な経験へと共有化していくための「方法の発明」であった。おいしいものがあふれかえっている現代にあっても、お土産お菓子の包みを開けるときのささやかな期待感と独特のB級な「美味(うま)っぽさ」は、希薄な人間関係をかすかに触れ合わせる接点を与えてくれている。

今回アクセスしたページ


浅草うまいもの会
(http://www.egg.or.jp/asakusa/index.html)
亀屋万年堂
(http://village.infoweb.ne.jp/~navona/)
YOKU MOKU USA
(http://www.yokumoku.com/)
CYBER BANANA
(http://www.rik.ne.jp/banana/)
ひよ子本舗吉野堂
(http://www.cyberbeing.com/hiyoko/)
Haneda Airport Information
(http://www2f.biglobe.ne.jp/~masaho/index.htm)
東海キヨスク
(http://www.kiosk.co.jp/)
財団法人 道路サービス機構
(http://www.j-sapa.or.jp/index.html)
JTB日本全国おみやげNET
(http://www.jic.co.jp/omiyage/index-2.html)
JKurata-net
(http://www.kurata-net.co.jp/)
ONO-FAMILY
(http://www01.u-page.so-net.ne.jp/cb3/nono/index.html)
木村屋
(http://www.kimuraya.co.jp/index.html)
全国特産品WEB
(http://www.fukuoka.com/tokusan/index.html)


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