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 今月の木暮さん

真夏の出来事 -引っ越し編-


        陽が20m程近づいたような気さえする、ある暑い日のお話だ。

        のクソ暑い中、予定通り引っ越しを敢行した。っ越しが決まった時に「引っ越しのサカイ」「アート引っ越しセンター」「日本引越センター」のホームページで引っ越しの見積もりを取ってみたらどこの会社でも10万円前後という結果が出たので、ケチって荷物は自分で梱包して友人や後輩に運送してもらう事にした。
         たかが1LDK、一日で荷造り出来るだろうとタカを括っていたのだが、本や衣類や、こんなもん買ったっけ?と我が目を疑うような物が押し入れから戸棚から出るわ出るわで、明日は朝の9時から引っ越しだというのにいつまでたっても片付かないモノ達に嫌気がさし、収拾のつかない荷物に背を向けて思わず「ルパン三世」なんか見て現実逃避してしまったら、あっと言う間に「明日の朝」になってしまった。
         最後は何も考えずに手当たり次第箱に詰めまくったのでかろうじて時間には間に合ったが、各々の重さにヒドいバラつきが生じてしまった。
         特に同じ大きさでも靴だけの箱と本だけの箱の重さの差といったら尋常ではなく、本を欲張って箱一杯に詰め込んだら見掛けは軽そうで持ってみるとすげぇ重い、まるで小泣きじじいのような代物になってしまい、それを運んでいた友人や後輩は皆優しいので口には出さなかったが、もうちょっと考えて詰めろよバカと刺すような視線で私に訴えかけていた。

        過ぎになって皆の疲労もピークに達しようという頃、フラリと父(69歳)が引っ越しを見学しにやって来た。
         こっちゃ汗だくでばかでかい段ボール箱と格闘しているのに、やれ「お昼は引っ越しソバを作れ」だの「皆さんにビールと枝豆を用意して」だの悠長な指示を出しまくる父に、うるせー、ジジィ!現状を把握してからモノを言えとも言えず、かろうじて「食器は(まだ段ボールの中だから)無いし、今それどころじゃないから店屋物とるよ!」と反論した。
         そして父が無言でいなくなった時に自分が大失言をしていた事に気付いたが、時すでに遅かった。
         父はありがたくも容赦なく8人分の食器と鍋釜一揃いをホームセンターから買い込んできたのである。
         彼は「便利で使い勝手が良くて丈夫で安い」を基準にモノを買う人なので、選択された食器類は学食や工事現場でよく見掛けるコップや茶碗であった。
         私は今回は「地中海ニース風」にインテリアをコーディネートしようと思っていたのに、台所だけがどんどん「昭和40年代団地風」にされていく有り様に、気が遠くなりそうになった。

        て余談だが、引っ越し先を知人に知らせまくらなければならない「転居のお知らせ」は、筆無精の私にとって苦痛な作業である。
         そこで今回はパソコン所持者に対しては暑中見舞いを兼ねて「インターネット・ポストカード」を送付した。これは私のイチ押しサービスだ。電子メールとかだと文字ばっかで今一つハートが伝わらないのだが、これならほぼ自分好みのポストカードが無料で送ることが出来るのが嬉しい(しかも大概のカードには「懸賞付き」「JAVAで動く」「リアルタイム映像付き」等の付加価値がついている)。
         私がこれを始めて受け取ったのは去年のクリスマスの事で、スイスの友人からさりげなく届いた小洒落たBGM付きX'masカードを見たとき心底感動しまくったものだ。

        かし引っ越しは疲れる。こんな事は一生に一〜二度で沢山だ。

        料品を片付けていたら出てきた永谷園のお茶漬のオマケカードを眺めながら、生涯で90回も転居を繰り返したという葛飾北斎に「我がままぶっこかずにそこに居ろ」と言ってやりたい衝動に駆られたのは、多少私が壊れていたからかもしれない。