栗田涼子

 プロヴァンス名物のミストラルが吹くと、南仏とはいえ、このところ氷点下にまで気温が下がるようになりました。フランスには「便座カバー」や「電気ウォーマー」がないので、近頃トイレに入るのが寒くて億劫なほど。日本のトイレメーカーのみなさん!フランスに進出したら、必ずや大儲けできると思いますっ!?

◆◆今月の栗田さん〜香りの雑学◆◆

間の五感のうちで、私たちの心や体の最も奥深い繊細な部分に働きかける力をもっているのは嗅覚ではないだろうか。ある匂いを嗅いだとき、その匂いとともに忘れていた昔のシーンが鮮やかに蘇ってくることがある。例えば先日のこと。あまり寒いので暖炉に火をおこしていたところ、枯葉や薪が燃えるいい匂いとともに、幼い頃の懐かしい情景がふと脳裏に蘇ってきた。夏の夕立の後の湿った土ぼこり、日向で温かくなった髪の毛の匂い、雪の朝のシンと冷えきった空気の匂い・・・。人にはそれぞれ、過去のノスタルジックな想い出と結びついた「匂いの記憶」があるものだ。プルースト(<Societe des Amis de Marcel Proust des Amis de Combray>)の”菩提樹のお茶とマドレーヌ菓子”ではないけれど、幼い頃の匂いの記憶には、イメージを喚起する不思議な力があるようだ。また、匂いには、人間の心理に働きかける作用があることもよく知られている。近ごろ流行りのアロマテラピー(<Herb & Aroma information>)は、香りが人間の生理に及ぼす影響をうまく取り入れた心理療法のひとつだ。そこまで本格的でなくとも、気分転換に香水をつけ変えてみたり、入浴剤の香りでリラックスするなど、気軽に香りのある生活を楽しんでいる人も多いことだろう。考えてみれば、現代ほど香りが私たちの日常に深く関わっている時代はないかもしれない。というわけで、今回は「匂いと香り」をテーマにネットサーフィンしてみることにした。

族や親しい人達と抱き合ったり頬にキスしたりといったスキンシップを日常的に行うフランス人は、日本人と比べて香りに敏感だ。女性はもちろん、男性でも香水やオーデコロンをさりげなく上手に使っている人は多い。またパフュームリー(香水専門店)で、数え切れないほどある香水の中から、自分に合った個性的な香りを見つけるのも楽しみなもの。ときとして匂いは、言葉や身振りを超えたより雄弁なコミュニケーションの手段となるから、香水もまた、彼らにとっては自己を表現するための大切な要素のひとつなのだろう。フランスの香りに関する最新情報を連載している<パリ通信>によると、最近の流行は「食べたい香り」だという。バニラやミルクなど、お菓子を連想させるような甘く官能的な香りこそ、世紀末の女性像にピッタリなのだそうだ・・・?!。

ころで、香りの歴史はいつ頃どの様にして始まったのだろうか。オンラインマガジン<香り通信16区>で、香りにまつわる歴史を概観してみよう。それによれば、1500万年前、ネアンデルタール人は埋葬のために香木を焚いていたことが調査によって明らかにされているという。またエジプトでは、香料は宗教的祭事や瞑想のほか、薬や美容液としても用いられていたらしい。一方、古代中国では結核やハンセン病の治療に使われ、また聖書にも没薬と乳香が幼子イエスに捧げられたというエピソードが登場する。香りは、有史以前の時代から常に人類の歴史とともにあったのだ。
 フランスをはじめとするヨーロッパ諸国に香料がもたらされたのは、ずっと後になってから。十字軍によってイスラム文化圏からヨーロッパに持ち込まれた香料は、当時、疫病を防ぐための薬として使用されていたようだ。現在のように、香りを楽しむために香水が使われるようになるのは15世紀以降、大航海時代にアジア大陸から香辛料とともに様々なエキゾチックな香りがもたらされて以来のことだ(<S&Bセレクテッドスパイスホームページ/スパイスの歴史に関するお話>)。その後、イタリアを経てフランスに伝播した香水は、宮廷生活を舞台にめざましく発展する。当時は、香りをつけた手袋や帯を身につけることが貴族のたしなみだったらしい。しかし、香りには他にもっと差し迫った重要な用途があったようだ。
 <学校では教えてくれないトイレの歴史>によれば、慢性的な下痢に見舞われていたルイ14世は、常に糞尿の悪臭を放っていたという。その臭いを隠すため、全身に香水を浴びていたというのだ。またヴェルサイユ宮殿の庭園には、消臭のためオレンジの木が千本以上も植えられたという。高貴なお方にまつわる、何とも鼻持ちならないウンチク(?)話である。もっとも、悪臭や病が蔓延していたからこそ、香水は飛躍的に進歩したのだともいえよう。かつてフランスでは、19世紀にルイ・パストゥールによって病原菌の存在が発見されるまで、疫病は「臭気」を媒介にして伝染すると信じられていたようだ。当時パリの街には下水道と屠殺場、人々の排泄物が放つ臭気が充満していたというから、その悪臭たるや凄まじいものだったに違いない。臭気はブルジョワ階級の人々にとって病と貧困のシンボルであったから、彼らは躍起になって香水を浴びたというわけだ。匂いの歴史は、埋もれた文化史を読み解く重要なコードを与えてくれそうだ。

て、日本にも世界に誇るべき香りの伝統「香道」があることをご存じだろうか。聞いたことはあるけれど、その実態がよくわからない・・・ という方は、まず<香道への招待>で予備知識を得よう。香道の成り立ち、香木についての知識、香席でのマナーなどがわかりやすく紹介されている。日本で香木を焚いて楽しむという習慣が始まったのは飛鳥時代。その後、室町時代には現在の香道の作法が大成されたという。香りを楽しむのが本来の目的とはいえ、やはり心の鍛錬を図ることに重きが置かれる香道は、茶道と同じく、戦国時代には「武士のたしなみ」(<「香道」武士のたしなみ>)として定着したようだ。また、香の種類や匂いを当てる「聞香」が武士の間で盛んに行われるようになったのもこの時代。香道では、香りを「嗅ぐ」のではなく「聞く」というのだそうだ。何とも優雅な洗練された遊びである。また、香の老舗<京都鳩居堂>のページでは、お香の焚き方が写真とともに解説されている。これを参考に、時には日本古来の香りの芸術を楽しんでみるのも一考だろう。

て、最期に紹介するのは、毎日を健康で快適に過ごすための香りの利用法を満載した<The Aromatherapy>のページ。アロマテラピーの効用に関するトピックスが盛りだくさんだ。例えば、冬のこの季節に役立つのが「風邪の予防と回復法」。頭痛には、こめかみや首筋、後頭部などに、直接ラベンダーのエッセンシャルオイルを擦り込むと効果的だとか。また、鼻づまりにはユーカリプタス、ペパーミント、マージョラムの精油を熱いお湯に2〜3滴落として蒸気吸入するとよいそうだ。いい香りを楽しめて、同時に体の調子を整えてくれるのならまさに一石二鳥。一度はトライする価値がありそうだ。この他にも、乾燥肌のかゆみ対策や、二日酔いのアフターケアなどについての処方箋も紹介されている。忘年会や新年会でお疲れ気味のこのシーズン。 是非、貴方も試してみてはいかが?

今回アクセスしたページ


Societe des Amis de Marcel Proust des Amis de Combray
(http://www.alma-inter.fr/proust/sommaire.htm)
Herb & Aroma information
(http://s-h.co.jp/hai/index.html)
Wellba
(http://www.wellba.com/index.html)
香り通信16区
(http://www.pluto.dti.ne.jp/~kaori16/magazine.html)
S&Bセレクテッドスパイスホームページ
(http://www.sbfoods.co.jp/spice/default.htm)
トイレといれToilet
(http://www2s.biglobe.ne.jp/~notujiya/toilet.html)
Birds&Herbe Room
(http://www.netlaputa.ne.jp/~miya-sun/index.html)
安土城 信長の夢
(http://www2.yomiuri.co.jp/osaka/azuchi/home.htm)
京都鳩居堂
(http://www.mediawars.or.jp/homepage/kyukyo/index.htm)


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