栗田涼子

 NATOによる空爆が始まってからおよそ一ヶ月。日本からは遠く離れた対岸の火事のようにしか感じられないかもしれませんが、セルビアとは陸続きのフランスを含めた周辺諸国では日々緊迫感が募っています。私の住んでいる隣町にあるフランス軍駐屯基地には、内陸戦に備えてか、続々と兵士やトラックやヘリコプター集まってきています。ここからコソボまで飛行機でわずか1〜2時間、他人事ではいられない気持ちで情勢を見守る毎日です。

◆◆今月の栗田さん〜フランスガーデニング事情◆◆

ランスで知り合い、昨年日本に帰国した友人から先日久しぶりに手紙が届いた。「日本に帰ったらすぐに職探ししなくちゃ」と言っていた彼女。どうやら念願の仕事が見つかったらしく、新しい職場での近況を知らせてきた。彼女の職業は "庭の設計士"。今風の呼び方をすれば、"ガーデニングプランナー" とでも言うのだろうか。もともと建築士である彼女は、新しい職場で水を得た魚のごとく、充実した毎日を送っているようだ。彼女いわく、日本はここ数年来の大変なガーデニングブームで、人々の眼が屋外に向いているという。素敵な庭にしたいけれど、一体どうしたらよいの・・・?というクライアントの要望に応えながら、依頼主のライフスタイルに合った庭づくりの手助けをするのが彼女の仕事なのだそうだ。なかなか、やりがいがありそうである。
 また、近頃は日本でも、手軽にガーデニングを楽しめる<コンテナガーデン>やハーブ栽培の人気もすっかり定着したようだ。花や緑とともに暮らす「心地よい生活空間」を、昨今の日本人(特に都会人)が渇望しているということの証なのだろう。かくゆう私も、目下ガーデニングの魅力にすっかり夢中になっている一人。折りしもわが家では "庭の大改造" を計画中で、土壌体質を改良すべく慣れない手に鍬を持っては土と格闘し、園芸事典と首っ引きで、植物の育て方や肥料について勉強する毎日だ。知れば知るほど奥が深い "ジャルディナージュ" (仏語でガーデニング)の世界・・・。今回はフランスのガーデニング事情についてウオッチングしてみることにしよう。

般に "フランスの庭" というと、ヴェルサイユ宮殿の庭園に代表されるような、シンメトリカルで整然とした人工的な庭を思い起こすだろう。パリ近郊の公園や庭園を紹介するページ、<パリの主な公園>によると、「フランス式」と呼ばれる庭園は、ルネッサンスのイタリア式庭園を模したものが始まりとされているらしい。その後、形式主義的なフランス式庭園に反発する<英国式庭園>がヨーロッパ全域で流行してからは、フランスでももっと自然な庭園造りが行われるようになった。
 フランスの一般家庭の庭の場合はどうかというと、あまり形式にこだわらないごく自然な感じの庭が多く、いわゆる<イングリッシュガーデン>とはまたひと味違った趣が感じられる。庭のないアパルトマンに暮らす人も、通りに面した陽当たりのよいバルコニーに、ジェラニウムや金連花など色とりどりの鉢植えを並べて、花のある生活を楽しんでいる。往々にして「いざガーデニング!」という気負いがなく、花や草木が人々の生活に自然にとけ込んでいる感じだ。またフランスでは、各地方ごとに建物の外観(壁・窓枠・瓦の色や形)に規定があるため、それぞれの地方特有の "景観" が存在する。当然、庭のつくりにも、街並みの雰囲気にあわせた地方色がでてくる。さらに、気候も地質もフランスの北と南では全く違うため、植生もかなり異なる。例えばここ南仏プロヴァンス地方の場合、土壌は超石灰質で砂や小石が多く、極端に乾燥している。したがってこの地方の庭には、キョウチクトウやオリーブの木、ラベンダーやローズマリーやタイムなど、乾燥に強く、超アルカリ質にも耐えうる頑丈な草木が必然的に選ばれるというわけだ。プロヴァンス地方がハーブやオリーブで有名なのは、ひとえに劣悪な土壌体質と乾燥した気候の賜物なのである。

て、花々が一斉に咲き始めるこの季節、家主の工夫が凝らされた個性的な庭々は、道行く人の眼を楽しませてくれるが、中でもひときわ眼を引くのが、<ナン・ジャルダン>(庭の小人) と呼ばれるミニチュア人形の存在だ。「白雪姫」でお馴染みの、あの小人である。フランスでも、この人形を庭の片隅に飾る家が少なくない。見方によっては相当キッチュでユーモラスなこれらの人形たち・・・。一体、いつごろから彼等は庭のマスコットとして歴史の舞台に登場してきたのだろう。
 起源をたどって見ると、意外にも中世トルコにまで遡ることができるようだ。15世紀中頃、トルコ商人を通じてヨーロッパにもたらされ、当時は、幸運を招くシンボルとして各国の王侯貴族にもてはやされた。また、ルネッサンス時代には、イタリアの人文主義者たちが集う館の庭で、これらのミニチュア人形は、訪れた客を迎え入れる庭番のような役割を与えられていたらしい。17世紀以降になるとヨーロッパ各地に伝播し、その後19世紀には、ドイツに大量生産のための陶器工場までできた。現在、おそらくは世界各国の庭に見うけられるであろうこのナンジャルダン。起源はディズニー映画の白雪姫かと思いきや、そのオリジンは遥か昔にまでおよぶ伝統と格式ある人形であった!
 余談ながら、ここでエピソードをひとつ。フランスでは数年前、FNLNJ(ナンジャルダン国民自由戦線)を名乗るグループが、各家庭の庭に「軟禁」されているナン・ジャルダンを救出すべく(?!)彼等を盗み出し、自然に帰そう!という崇高なる使命にしたがって、森に解放(放置)するという連続盗難事件が起きて世間を騒がせた。ナン・ジャルダンを愛するあまりの犯行だというが、如何にもフランス人らしいユーモアあふれる逸話ではないか。

ころで、フランスのガーデニング事情を語るうえで忘れてならないのは、<BONSAI>だ。あの「盆栽」である。フランス語では「ボンザイ」と呼ばれ、一般の人々の間でもかなりポピュラーな存在として認知されている。例えば、大型スーパーマーケットの花売場には、必ずと言っていいほどボンザイコーナーが設けられており、買い物ついでの主婦などが気軽に買っていくのだ。木の種類やスタイルは日本のそれと同じく様々あるようだが、ジャスミンやシプレと呼ばれる南仏特有の杉が、盆栽用の植木鉢にアレンジされていたりする。室内の観葉植物として手軽であるし、東洋のエキゾチックな感じがフランス人受けするのだろうか。そういえば、書店のガーデニングコーナーに行くと "Le Jardin Zen"、つまり禅風の庭づくりのガイドブックなどが売られていて、驚かされることがある。フランスの庭にちょっと東洋風のエッセンスを加えただけの、どう贔屓目にみても「禅」の境地からはかけ離れた庭にしか見えないけれども、西欧の人々にとっては、あれで十分神秘的なつもりなのであろう。

 とにもかくにも、私のガーデニング修行はまだ始まったばかり。夢は膨らむばかりだが、さてどうなることやら。しかし当分の間は、小石と雑草とエスカルゴとの闘いの日々が続きそうだ。

今回アクセスしたページ


AQUA
(http://www.net-ib.com/index.htm)
Gulliver's Travel Agency (Japan)
(http://www.gta.co.jp/)
英国ファンのページ
(http://plaza16.mbn.or.jp/~S_Muramoto/index.html)
GREEN PARK
(http://www.green-park.com/index.html)
Mouvement d'Emancipation des Nains de Jardin
(http://www.menj.com/Pages/accueil.htm)
Le livre internet sur les bonsais
(http://www.odyssee.net/~mhcgdd/bonsai.htm)


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