真柄裕美

 うちの5歳の娘は、ちょっとしたアレルギーがあり、時々足と腕にブツブツが出る。ところが、本人は、アレルギーという言葉を、エネルギーと取り違えていて、「おかあさ〜ん、エネルギー、出ちゃった〜」と見せに来る。アレルギーと言われたら、眉間に皺を寄せて心配するが、エネルギーと言われると、「ほんとだね〜」と笑っていられる。言葉の持つ力はすごいと感心しつつ、娘の間違いはしばらく訂正しないでおくつもり。

◆◆今月の真柄さん〜ネットでめぐる民話の旅◆◆

話作家として知られる松谷みよ子氏に、「あの世からのことづて-私の遠野物語」という作品がある。ここには、作者が人から聞いた話、それも人の生き死にや霊魂にまつわる話が集められている。例えば、死亡した時刻に遠くの親戚に挨拶に来た人の話、火の玉の案内で命拾いした人の話、山が崩れるのを列車に教えた熊の話などが語られる。いわゆる超常現象なのだが、殊更おどろおどろしくはなく、人から聞いた話が静かに、しかも愛情を込めて語られる。また、ここに登場する死者と出会う現世の人達も、不思議な出来事をさほど訝しがることもなく、あるがままを受けとめ、死者の気持ちを推し量って、涙を流したり、感謝したりする。そして、それが、実に淡々と語られる。この本を始めて読んだ時、わたしは、とても不思議な感覚を覚えた。巷の幽霊話や、怪奇小説にどっぷりと浸りきったわたしには、この本の静かで、温かい語り口が、かなり新鮮で、ちょっとしたカルチャーショックだった。どうしてこんなに面白いのだろう・・・。このおもしろさは、作者の魅力にもよるのだろうが、松谷氏が活躍されている民話というジャンルのなかにも何か原因があるのかもしれない。民話イコール昔話、または、子供向けの話、とイメージしていたわたしの誤った先入観は捨てた方がよさそうだ。民話というのは、現代の読み物として、かなり面白いのではないか。そんな期待を込めて、ウェブ・トラベルへ。

 <民話>は、民話を広く募集して、都道府県別に載せているページ。集められた民話の数はまだ少ないが、それぞれ読みごたえがある。何より楽しいのは、その土地の方言で語られていることだ。例えば、京都弁で語られる<子育て幽霊>などは、子供のために飴を買いに来る幽霊の話だが、“・・・やなあ、・・・来はるんやて・・・して寝たんえ”という柔らかい語尾で書かれると、やさしく、おっとりした幽霊に感じられる。それから、この方言のせいか、文字を読んでいるだけでも、今にも語り部の語りが聞こえてきそうな気がした。今のところ、民話の数が少ないが、これが全国的に網羅されたら、とても豊かなページになるだろうと想像できる。

話や昔話の中には、地域が違っても似たような話があるが、これが沖縄まで行くと、本土とは全く違う話が伝えられている。幕府や政府の抑圧など何のその、沖縄では、独自の豊穣なる物語が育まれたのだ。
 <おきなわの民話>は、沖縄の民話ばかり30近くも集めたページ。民話の朗読も聞くことができる。<ハブの恩返し>のハブや「海の神と陸の神」に登場する“白はま”など、沖縄の自然や風土から生まれた話が多い。このページには、<星砂の由来>、「火のはじまり」、<人間の始まり>など、沖縄の神話も集められている。「星砂の由来」は、星の神の子供が殺されて星砂になるというとても美しい物語。

の島、沖縄で本土と違う民話が伝えられているように、北海道でも、独自の民話が伝わっている。
 <岩見沢の民話>は、北海道の開拓民の話を語り継いでいきたいという想いから民話が集められている。北海道の開拓だから、森を伐採し、畑をつくり、家を建て、道をつくり、と実際にはかなりの重労働と貧困に悩まされてきたのだろうが、民話という装いで、穏やかで、どこかユーモラスな話に仕立てられている。例えば、カボチャしか食べるものがなく、みんなの手が黄色になるので、誰が一番黄色いかと競い合う<カボチャの黄疸>、朝から晩まで肉体労働に従事するために、朝目が覚めても、指がまっすぐに伸びない<ねているゆび>など、当時の苦労の多い生活を伝えながらも、登場する人物は明るく、生き生きとしている。
 北海道の開拓の影に、明治政府に弾圧されたアイヌ民族の悲しい歴史が思い浮かぶが、当時、開拓民とアイヌがどのように関わったかは、ここでは語られていない。そのかわり、<砂金沢物語><逃亡囚物語>など所々に、アイヌの話が登場する。「逃亡囚物語」からは、アイヌの人達は逃亡囚をかくまうほど心が優しい、と和人の間で考えられていたことがわかる。

後に、民話の研究・採録をおこなう会の活動をみてみたい。
 <日本民話の会>では、民話の研究、採録、そして、書籍も出版している。なかでも、「日本民話の手帖」は、テーマ別に、民話と民話の考察が掲載される出版物で、目次を読むだけでも充実した内容が想像できる。また、会の活動として、外国民話研究会などもあり、いろいろな国の民話を原語で読んだり、現地で採訪して、民族の比較研究をしている。未紹介資料を翻訳し、テーマ別民話集の編纂にも取り組んでいるとのこと。この会から、数々の新しい民話が伝えられていくのだろう。

話のサイト巡りで、いろいろな話を楽しみながら読んだ。しばらく民話に浸っていたせいか、何だかとてもほのぼのした気持ちになっている。民話には、癒しの効果があるのかな・・・。

今回アクセスしたページ


花鳥風月
(http://www.tr-108.co.jp/as/Html/index.html)
ハローねっとジャパン 沖縄発
(http://www.okinawa.kyushu.mbc.ntt.co.jp/wnnc/index_j.html)
いわみざわの民話のホームページ
(http://www2h.meshnet.or.jp/~shin/minwa/#top)
日本民話の会(こねっとワールド)
(http://wnnserv.wnn.or.jp/wnn-s/study/theme/culture/cat/minnwa/minnwa.html)


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