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 今月の宮内さん

川の思想とダムの思想


        ノケロ村の子供たちは本当によく川で遊ぶ。
         南太平洋の国、ソロモン諸島のこの村では、洪水のときに上流から流されてきた大木も、昔の橋の支柱跡も、子供たちにとって、恰好の飛び込み台になる。アノケロ村の脇を流れるこのクワラエ川で、子供たちが、大騒ぎしながら飛び込んだり、カヌー競争をしたりしている横を、大人たちは上流のココヤシ畑からココナツを浮かべて運んでいる。少し上流では、畑から収穫したタロイモやサツマイモを、川で洗っている。大雨のときはごうごうと音を立てて暴流する音を、家でじっと聞いているしかない。ときに沿岸の畑がやられるときもあるが、しかし、そのことが畑に豊かな土壌を運んでくれることにもなる。
         運ぶ、移動する、獲る、洗う、遊ぶ。川をめぐる人間の営為は多様だ。多様であることで、川と人間とのかかわりが安定的に保たれてきた。

        本では、明治29(1896)年に河川法が制定され、河川管理が国に委ねられるようになったとき、この関係が変わっていった。地域で多様に利用する人たちの手から、富国強兵を目指す国家の手に移り、川は、電気エネルギーを供給するため、あるいは産業発展のために水を効率よく利用するためのものになった。川の思想からダムの思想への変化である。
         川は護岸工事で固められ、上流にはダムができた。川は縁遠くなった。そして私たちは川で遊ぶことを忘れた。

        こで、「もっと川で遊ぼう!」と呼びかけているのは、「足羽川の清流を愛する会」(福井県)のページだ。福井県のどまんなかを流れる足羽(あすわ)川は、流域住民にとってかけがえのない川であったが、日本中の多くの川と同じように、次第にコンクリートで固められ、住民に疎遠な川になってしまった。
        「私たちの無知や無関心がこうした乱開発を許してきてしまった、とも言えます。いつの頃からか私たちは、川に親しむことがなくなりました。(中略)そこで、この会では、おおいに川と遊ぼう、大人も子供たちと一緒になって楽しもうじゃないか、ということになりました。遊びを通して、川のもっているきのうの大切さを学ぶことができれば、これ以上素晴らしいことはないと思います」(「愛する会」の設立趣旨より)。

        ぶことによって川の思想を取り戻すのだ。「愛する会」は川遊びのイベントを幾度となく企画し、さらには川遊びが講じて、なぜか足羽川流域で農園まで始めてしまった。
         「足羽川の清流を愛する会」が現在力を入れているのは「足羽川ダム」建設計画の問題だ。1960年代に発電用ということで浮上したこのダム計画は、その後、工業用水用、そして治水(洪水防止)用へと名目をコロコロと変え、今もなお建設計画が存続している。「愛する会」のページは、「ダムはかえって水害を引き起こす」、「ダムは水質を悪化させる」、「ダムは地域住民の生活を破壊し、地域社会を衰退させる」、などさまざまな根拠を挙げて、「足羽川にダムはいらない」と計画に反対している。

        本全国でこれまで2500ケ所のダムが作られ、今なお500ケ所以上のダムが計画中である。必要もないのに莫大な税金が投入されつづけるダムに対し、日本のダムのページ苫田ダムのページ(岡山)木頭村の未来を考える会(徳島)子守唄の里・五木を育む清流川辺川を守る県民の会(熊本)週刊川辺川(熊本)川を考えるなど、さまざまなサイトが、疑問を投げかける。

        界的にも、大規模ダム開発をストップさせ、川本来のあり方を取り戻そうという動きは盛んだ。アメリカ・カリフォルニア州のNGO、Friends of the Riverは、州議会の委員会でユバ・ダム開発計画案を廃案にすることに成功している。世界的なネットワークであるInternational Rivers Network(事務局はアメリカ・バークレー)は、この3月、ブラジル・チュリティバCuritibaで第1回ダム被害者国際会議を開き、大規模ダム開発の国際的モラトリアムをよびかけるチュリティバ宣言を発表した。「破壊的なダムの時代に終わりを告げ、公正、持続可能、かつ効果的な河川管理、エネルギー供給のオルタナティブを履行することは、必要だし、また可能である」。Global Rivers Environmental Education Network(GREEN)は、1984年以来、持続可能な河川の保全を目指し、学校教育の現場に資料を提供する試みを行っている。

        れでもやっぱり川のことは、まだ私たちにとって身近ではない。
         今度の週末は、マウスの手を休めて、近くの川を、少しゆっくりめに歩いてみようか。





        今回アクセスしたページ

        足羽川の清流を愛する会(http://www.mitene.or.jp/~asuwa/asuwa1.htm)
        日本のダムのページ(http://www.na.rim.or.jp/~donpapas/)
        苫田ダムのページ(岡山)(http://www.naruto-u.ac.jp/~senoo/tomata/)
        木頭村の未来を考える会(徳島)(http://www.st.rim.or.jp/~flipper/dambusters/kitou95.html)
        子守唄の里・五木を育む清流川辺川を守る県民の会(熊本)(http://plaza4.mbn.or.jp/~kawabe/index.html)
        週刊川辺川(熊本)(http://www.coara.or.jp/~kawamoto/)
        川を考える(http://www02.so-net.or.jp/~tomu/NAGARA.html)
        Friends of the River(http://www.friendsoftheriver.org/)
        International Rivers Network(http://www.irn.org/)
        Global Rivers Environmental Education Network(GREEN)(http://www.igc.apc.org/green/greeninfo.html)