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 今月の宮内さん

海外旅行の医療情報術


        ラリアにかかった。4年前のことだ。南太平洋ソロモン諸島で軽くかかって(そのときにはマラリアだとは思わなかった)、そのあと、当時留学していたオーストラリアに帰ってきて3ヶ月ほどしてから再発した。マラリアとは、ハマダラ蚊という、専門家によると“停止したときお尻をあげる癖のある”蚊が媒介する伝染病で、マラリア原虫が人間の肝臓に巣食って増殖し、それが血流中に放出されると発症して、高熱などに苦しむことになる。
         マラリアには原虫の種類によって何種類かあり、私がかかったのはいちばん軽い(しかしいちばんしつこい、つまり再発しやすい)「三日熱マラリア」だった。40度以上の熱が出て、一時脱水症状に陥った。たった一日だったけれど、生まれて始めて入院というものをした。多文化主義を標榜するオーストラリアらしく、中国人の医師が私の前に現れた。とはいえ、病院で受けた治療は、治療薬を飲み、点滴を打っただけだった。

        国、とくに熱帯地域に出かけるとき、誰しも病気を気にする。しかし、正確な情報はなかなか手に入りにくいし、日本の医者は熱帯の病気に詳しくない。変な話だが、そこいらの医者よりも、かかって以来“敵”を知るに精を出してきた私の方がよほど詳しいかもしれない。
         「大丈夫だよ。俺行ったけど何にも病気にならなかったよ」という知人をあなたは信じてはならない。知人の経験は、数多くあるサンプルのたった一つにすぎない。正確な情報を得ることがとにかく大事である。少し前なら一般には手に入りにくかった最新の情報が、現在ではインターネットを通じて容易に手に入る。最新の、というのが重要で、たとえば、数年前まで一般的に使われていたファンシダールという予防薬は、現在副作用の危険のため、予防薬としては使わないようにとWHOは勧告している。しかしいまだにファンシダールをマラリア予防薬として飲んでいる人もいるのだ。

        本語では、<海外医療情報ネットワーク>がもっとも充実している。「海外医療情報ネットワーク」は、ある日本人アフリカ研究者が日本でマラリアを発病させ死亡したのをきっかけに作られた、マラリアに関する医療情報をシェアするためのネットワークである。マラリアをはじめとする熱帯での各種疾病について、詳しい説明がある。マラリア原虫が赤血球内に侵入している写真などという、あまり見たくないものも見ることができるし、日本で発病したときにどこへ相談すればいいかも載っている。もちろんどういう薬をもっていけばいいのかもわかる。WHO(世界保健機構)の<海外旅行と健康>の日本語版もここにあるし、外務省提供の<海外安全相談センター情報>もなぜか外務省のホームページにはなくて、ここにある。海外安全情報のアメリカ政府版に当たるのが、<Travel Warnings & Consular Information Sheets>である。
         私の友人は、「海外医療情報ネットワーク」の中の「虫刺され対策」で推奨されているアメリカの会社の蚊帳を、国際電話して個人輸入した。一人用のテントに似たその蚊帳は、たしかにコンパクトでしかも蚊を完全にシャットアウトするすぐれものだった。
        岡山大学でも、<マラリアネット>という同様のページをもっている。外国では、米国のCenters forDisease Control and Preventionが出している<Travel Information>が充実している。

        うした情報を印刷して持っていくのも手だが、何せ紙というものはかさばってしまう。どうせもともと電子情報である。電子情報のまま持っていけば重さはゼロである。私はNECのモバイル・ギアを愛用しているので(何せ電気のないところによく行くので、乾電池で長時間使えるモバイル・ギアは本当に重宝している)、フラッシュカードに種々の情報を入れて、旅に出かける。テキストファイルなら何でも入る。10MBのフラッシュカードを全部テキストファイルで埋めるとしたら、原稿用紙15,000枚分の情報が入る計算になる。
         ついでにいくつか旅の情報源を――。その国の民衆の生活に近いところで旅したいと考えている人なら、国際協力事業団JICAの<任国情報>が結構役に立つ。このページは青年海外協力隊やJICAの専門家としてそこで生活する人用の情報なので、情報はしっかりしている。ネパールで卵や乳製品を手に入れるにはどうするか。「市場で売っている。卵は多少癖のある味の種類もある。またアヒルの卵も出回っている。牛乳は加工乳である。一般的に品薄で、街頭で行列を作って買っている」。なるほど。

        には地図も必要だ。地図は案外現地では手に入らない。書籍もそうだ。<Adventurous Traveler Bookstore>は地図や書籍などの充実した旅情報をオンラインで販売している。有名な総合書籍ショップ<Amazon.com>で旅する地域の書籍を手に入れるのも手だ。 旅に必ずそうした“情報”が必要かどうか、私にはよくわからない。しかし、その土地の歴史も知らないまま旅している若者に出会うと、それはやっぱりおかしいんじゃないか、と言いたくなる。