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 今月の宮内さん

お雑煮から垣間みる日本の多様性


        んちのお雑煮ってどんなお雑煮?」と聞かれて、多くの人はこう答える――「え? どんなって、普通のお雑煮だよ」。この「普通」があやしい。「なんでも普通」のつまらない世の中になってきているとは言え、まだまだ「普通」でないものはたくさんある。

        あるメーリングリストでもこの季節外れの話題を振ってみた。おお、盛り上がった。ある福井の学生は、最初「うちのお雑煮は、丸餅・焼かずに入れる。味は基本はだし(かつお)でした。ただ、なぜか2日はお味噌味にするのだよね、うちの母は」と発言した翌日、こう訂正してきた。「母に詳しく聞いたら、あれは東京かぶれのお雑煮で、2日のお雑煮が福井流。こちらの作り方は、

        1. 鍋になべ底サイズのでっかい昆布を一枚べら〜んと敷く。
        2. 丸餅を入れ、水をかぶるくらい入れてしばらく煮る。
        3. 餅が煮え始めてきたらかぶを入れる。
        4. かぶも煮えたら田舎味噌(すり味噌じゃないやつ)をいれる。
        5. 仕上げにかぶの葉っぱの刻んだのを入れる。
        6. お椀に盛って、かつお節を天盛り(てんこ盛りではない)。
        7. おいしくいただく」。

        ほんと、聞いてみないと分からないものだ。自分のうちのお雑煮でさえそうなのだから、日本全国のお雑煮ならなおさらそうだ。

        たようなことを試みたのが、Apple MediaKidsの「全国お雑煮比較」。北海道の中学校の先生からの呼びかけに、全国の学校の先生や生徒が答えた。熊本の小学生が「雑煮にはするめを入れるよ」と書けば、滋賀の養護学校の生徒は、「九州のお雑煮にはするめを入れるとはしりませんでした。するめのおぞうにはどんな味がするのか一度食べてみたいですね。ああ雑煮の写真をみていたら腹が減ってきた!?」と返してきた。これは楽しいコミュニケーションだ。

        には聞いたことがあるが、まだ食べたことないのが、香川のあん餅雑煮。「香川のお雑煮」によると、「白いお味噌とお餅の中の黒い(?)あんこが、お椀の中でねっとり絡み合う。それでも口に入れると、こってり甘く、讃岐っ子にはこたえられないおいしさの香川のお雑煮。・・・一度作ってみてはいかがでしょうか?」。そう言われてもねえ。ところで香川はみんなあん餅雑煮だと思っていたら、同ページによると、そうでもないらしい。地域によっては、普通の丸餅を使うところもあるようだ。また、「えひめの雑煮いろいろ」によると、隣の愛媛県松山市周辺でもあん餅雑煮を作るところがあるという。松山は私の郷里なのだが、これはまったく知らなかった。これまでいつも隣の香川のあん餅雑煮を馬鹿にしていたのだが、これからはそうもいかなくなった。

        川のお雑煮」のページは、穴水・能登島の「小豆雑煮」というぜんざいそっくりの雑煮を紹介しているし、「ハローねっとジャパン 静岡発 雑煮」のページは、静岡県水窪町でもともと雑煮を食べる習慣がなかったことを紹介している。そういえば沖縄でも雑煮の習慣はないらしい。いろいろあるもんだ。行かなければわからない。行ってもわからない。インターネットは、日本各地の多様性を、あらためて教えてくれる。

        ころで、「えひめの雑煮いろいろ」で紹介されている愛媛県宮窪町のある家では、大晦日に(正月ではなく)神棚に雑煮とご飯をお供えするらしい。これは実は民俗学者柳田国男が『食物と心臓』で披露した説を補強する事例になっている。柳田説によると、お雑煮は、神様にお供えした餅を、そのあと神と共に食べる一種の儀式であり、また、昔の日本では1日は日の入りから始まっていた。したがって、正月は、今で言う大晦日の夕方に始まっており、このときに神様に食べものをお供えし、朝が明けてからそれを食べるのである。

        様とともに食べるというのは、いっしょに食べることで力を分け与えてもらうということだ。今では、力を分け与えてもらわなくても、いくらでも食べられる時代になった。神様はどこかで、また人間といっしょに食べたいよう、と唸っているかもしれない。