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 今月の宮内さん

神の子と人間


        年かに一度、太平洋の南米沖の海水温度が上がって魚がちっとも釣れない、ということに、ペルーやエクアドル漁民たちが気が付いたのは、もうずいぶん前になる。ちょうどクリスマスのころにそのピークが来ることから、漁民たちはその現象を「神の子(イエス)」=エル・ニーニョと命名した。

         そのエル・ニーニョ、今年のものは、今世紀最大級らしい。

        年のエル・ニーニョがどのくらいのものかを知りたくて、<米国商務省海洋大気局(NOAA)のエルニーニョのページ>をのぞいた。このページでは、エルニーニョの最新情報が海温図などで見られるほか、エルニーニョのしくみについてもわかりやすく図解している。日本語では、日本の<Weather Line><お天気相談所>のビジュアルがわかりやすい。

        ル・ニーニョの影響は世界各地に出ている。<CNNfn(CNNの経済ニュース)のページ>によると、エルニーニョの影響は農業や鉱業に出ており、オーストラリアでは乾燥した天候のために小麦生産が減少し、インドネシアでは雨が降らなくてコーヒーやカカオの生産が減少。パプアニューギニアでは、川の水位が下がったために、上流での銅鉱山が生産困難に陥っている。こうした自体は世界の食糧市場に大きな影響を及ぼしつつある。

        物たちも影響を受けている。<ロサンゼルス・タイムズ紙のホームページ>によると、カリフォルニア沖のサンミゲル島でこの夏以来6,000頭のカリフォルニア・アシカが死んだ。エル・ニーニョのせいで、アシカの食料であるイカやアンチョビ、ニシンやイワシが島にやって来なくなったからだという。同じ様子は、<CNNInteractive>でも「放映」されている(独自のプラグインを使って、CNNの放送そのものがインターネットで見られる。初めて見たけれど、これはすごい)。

         もちろん人間も影響を受けている。

        在もっともエルニーニョの被害を受けている国はパプアニューギニアである。オーストラリア国立大学のブライアント・アレン博士とマイク・ボーク博士は、「パプアニューギニアの大部分が、過去100年でもっとも深刻な干ばつに会っている」と述べている(The World-Wide Web Virtual Library - Papua New Guinea - El Nino & PNG droughtにある<Report of an Assessment of the Impacts of Frost and Drought in Papua New Guinea>)。この報告によると、現在(報告は1997年10月のもの)、現在パプアニューギニアでは、干ばつのせいで食べるものがなくなり、8万人が生命の危機にさらされている。さらに7万人がそれに近い状態にあり、早晩危機的な状況になると予想されている。また、17万5000人の人が、畑からの食料が急速になくなっている。さらに22万人は畑にまだ食料があるものの、あと2ケ月くらいの蓄えしかない。一方、飲み水の枯渇も深刻で、13万人に影響が及んでいる。乾燥のために多発する火事も深刻だ、という。
         オーストラリアの<シドニー・モーニング・ヘラルド紙のページ>は、パプアニューギニアの村で作物ができない畑で絶望のために泣き崩れる女性の写真を掲載している。
         パプアニューギニアの干ばつについては、日本のマスコミにはほとんど出てこない。しかし、こうして海外のメディアから出される情報に接することができ、専門家のちゃんとした報告も読める。これはさすがにインターネットのおかげだ。
         上の報告を書いたアレン博士とボーク博士は、同じ報告書の中で、パプアニューギニアにおける飢餓の歴史について冷静に書いている。「パプアニューギニアの人々のほとんどがこんなにひどい体験は初めてのため、ジャーナリストは“歴史上最悪”といったセンセーショナルな言い方をするのだが、グレートバリアリーフのサンゴ礁の成長率を調べると、数千年の間に幾度となく、このようなことが起こっていることがわかる。またパプアニューギニアの人々の記憶によっても、1941〜1942年もひどかったようだし、1910年代半ばはおそらくもっとひどかったと推測される」。
         エル・ニーニョなんて、人間が地球に悪いことをたくさんし始めた結果、近年になって生まれたものだと思っていたら、そうではないらしい。EnvironmentalNews Networkの<スペシャル・レポート−エル・ニーニョ>によると、1567年からエル・ニーニョの記録があるという。
         ところで、エルニーニョは干ばつを引き起こすだけではなく、場所によっては正反対の現象をもたらす。アフリカのソマリアでは、この11月、エル・ニーニョのせいで大洪水が起こり、500名近い人が死亡した(<CNN>による)。ソマリアの洪水については、世界的な国際協力NGOである<CARE>のページや<ソマリア援助調整組織>(SACB: Somalia Aid CoordinationBody)のページにも詳しい。
         CAREのページや国連人道問題局(DHA)の<ReliefWeb>のページには、パプアニューギニアの干ばつ、ソマリアの洪水だけでなく、緊急に援助が必要とされている世界中のできごとがずらずらと並んでいる。いやはや、たいへんなことが、世界中で起きているのだ。

         今世紀最大級ともいわれる今年のエルニーニョも、幸い、終わりに近づいているそうだ(<CNNのニュース>による)。悲惨な爪痕を残していった「神の子」は、何を見、何を考え、去っていくのか。