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 今月の宮内さん

世界の新聞を読む


        太平洋ソロモン諸島の小さな町。小脇に何かを抱えた男が町角に立ち、刷りたての新聞『ソロモン・スター』を売り始めた。人が集まってきて、新聞は飛ぶようにして売れた。何があったわけでもない。新聞そのものが人気があるのだ。政治ニュース、社会ニュース、国際ニュース、読者の投稿、広告、スポーツニュース。1部70セント(約20円)は、ソロモン諸島の人にとって決して安いわけではないが、新聞には情報がつまっている。
         世界の新聞を読みたい、と思った。新聞から、世界の人々の息吹を感じたい、と思った。
         こんなとき、まず訪れるべきは、<新聞の街角>だ。世界中のオンライン新聞へのリンクを網羅的に集めたこのページ、驚くべきは、そのリンクのそれぞれに、何語の新聞だとか、経済情報が多いとか、短く有益なコメントが付けられていることだ。新聞だけでなく、官庁情報やオンライン雑誌など、膨大な情報源へのリンクになっている。
         私もここからたどってみた。

        ずは通貨危機に揺れるインドネシア。やはり明るいニュースはない。英語とインドネシア語のオンライン新聞<Indonesia Daily News Online>は、「中部ジャワですでに10万人の失業者が出た」と報じた。「通貨の下落で、多くの建設計画が中断の憂き目に遭い、10万人が失業。また、東カリマンタンでは多くのベニア工場が大量解雇を行わざるを得ない状況に追い込まれた」(1月23日)。そうした中、19人の政治学者たちが、政治経済改革を断行できる新しい大統領をと訴えたというニュース。政治学者たちは同時に、IMF(国際通貨基金)による経済立て直し策について、民衆に打撃を与えるだけで、本当に立て直しになるのか疑問だ、とした(1月21日)。

        ジア通貨危機の影響を受けた香港。1月22日の<Hong Kong Standard>紙は、オンラインのトップ記事で、倒産したCAパシフィック セキュリティーズの顧客200人以上が怒って香港政府に抗議したことを伝えた。旧正月が明けた1月30日の記事には、お寺に今年の景気を願って大勢の人々が押しかけている様子が伝えられている。「しかし、寺の占い師はあまりお声がかからない。『みんな占いのお金をけちっているのでしょう』と占い師」。

        し遠いところでアジア首長国連邦(というよりUAEと言った方が近ごろは通りがいい)の新聞。UAEでは、<Khaleej Times>がオンラインで記事を公開している。「首都アブダビでは、オーストラリアからの羊の供給が急落し、羊肉不足に直面している」というのが、1月21日の最初の記事だった。羊肉は、UAEの人々の生活に欠かせないものらしい。しかしその欠かせない羊肉をオーストラリアからの輸入に頼るところ大であることが推測される。「しかし、2日以内にはオーストラリアから45,000頭の羊がやってくる」のでご安心を、と、記事は続けて書いている。まずはひと安心。

        かし、安心できないのが、原油流出で汚染された海。UAEでは、1月半ばに原油を積んだ船から油が4,000トン流出し、海洋汚染が深刻になった。「ウムム・アルクワイン海岸ガード」のオベイド・イブラヒム・フマイド氏は、また、「汚染したシナイヤ島はカモメ、アオサギ、フラミンゴなどの鳥、ウサギ、ガゼルなどの動物が数多く生息していたところだ」と語り、「汚染の原因を作った会社は厳しい罰を受けるべきだと語った」。環境問題はどこにでもある。同じ日の別の記事は、首長国連邦環境グループとコカコーラ社が子供向けの環境教育パックが配布したことを伝えている。

        ろいろ知らないことがあるなあ、と思う。Khaleej Timeの記事を見ていると、「往年の有名インド人歌手クマール・サヌ氏が、6人のインド映画スターとともに、来月コンサートを開く」、とある。なぜUAEでインド人歌手が人気があるのだろう、と思ってCIAの<World Fact Book>などで調べてみたら、UAEの人口の約半分が実はインド系住民だという。しかし彼らのほとんどはUAEの市民権を持てない状況にあるらしい。
         世界の新聞を読むなんて、少し前なら、研究機関の人など、かぎられた人にしかできないぜいたくだった(私も以前はアジア・オセアニア地域の新聞を読みにアジア経済研究所などへ足を運んだものだ)。インターネットはその垣根をとっぱらってしまった。国内紙も同じだ。少し前まで不可能だった、居住地以外の地方紙を読むことが、今では簡単になった。北海道にいながら、<沖縄タイムズ>や<南日本新聞>の主要記事を読むことができるのだ。自分の地域と東京の情報しか知らない偏りがこれでいくらか直るかもしれない。

        でも注目すべきは<佐賀新聞>のページで、なんと記事データベースをホームページ上で無料で公開しているのだ。しかも共同通信配信の記事まで入っているから、全国ニュースや他の地域のニュース、さらには国際ニュースもかなりデータベースに入っている。これは使える。ちなみに「羊肉」で検索してみた。共同配信の記事で、インドのファストフード事情が出てきた。それによると、インドでもここ数年大都市にファストフードが登場。首都ニューデリーの高級商品店街にも登場。「値段は、羊肉バーガーが一個18ルピー(約55円)、コーラが紙コップ一杯16ルピー(約49円)」。羊肉バーガー、なのである、やはり。