宮内泰介

 みすず書房から、『鶴見良行著作集』の刊行が始まった。『バナナと日本人』や『ナマコの眼』で有名な鶴見良行だが、実は、短文の名手であった。あちこちの業界誌や雑誌に書いた短い文章がたくさんあり、それがこのたびの著作集でまとめて読めるようになった。私は生前鶴見氏の近くにいた一人だが、地べたを歩き、聞き、わかりやすく伝える、という鶴見氏の姿勢を少しでも継いでいかねば、とますます思っている。

宮内さんのHomePageへ

◆◆今月の宮内さん〜地方出版という元気◆◆

方出版はホームページの母である。
 東京がメディアを支配してどのくらいになるのだろう? 少なくともその勢いは落ちるどころかますます加速している。
 インターネットが、そうした東京メディアに対抗する「人々のメディア」としてもちあげられることもある。しかし、事はそう簡単でもない、と私は思う。人々が各地で勝手に語れば東京支配に対抗できるものでもない。やはり語り方というものがある。東京メディアの語り口は相当な蓄積があって、対抗するのは容易でない。しかし、この語り方に歴史的な蓄積をもっているのが地方出版である。その意味で地方出版はホームページの母なのである

とえば栃木県の<随想舎>。ここの出版の柱の一つは田中正造であり、足尾銅山である。足尾に育ち、銅山で働いていた著者が聞き書きした記録『足尾に生きたひとびと 語りつぐ民衆の歴史』(村上安正著)など、この出版社ならではの本が並んでいる。足尾にこだわり、田中正造にこだわり、歴史を掘り起こし、歩き、書き、そして出版するという作業は、東京メディアにはできないわざであった。
 関東以北で最も有名な(?)出版社である無明社出版(秋田)は、昨年も、結城登美雄著『山に暮らす海に生きる』などのすぐれた本を出した。<同社のページ>によると、無明社出版は、1972年「秋田市にある秋田大学教育学部の前にできた十坪に満たない古本屋」が出発点で、1976年から出版活動を始めた。以降、「この四半世紀の間、年間30〜40点の本を発行しつづけ、これまで600点の出版物を世に出してき」たというのは、地方出版としては、異例の充実度だ。ホームページ内にある「雪国はなったらし写真館」には、思わず心惹かれてしまった。これは、この出版社で出している写真集からのもので、「昭和30年代の『ワルガキ』たちの遊びや暮らし」を写した写真が載せられている。
 地方出版や小出版を見ていると、作り手の息が聞こえてきそうだ。それは、この本をぜひ世に出したい、という、少々荒い息づかいかもしれないし、少し肩の力を抜いてゆるめに作った本の「ほっ」という吐息かもしれない。
 大阪の出版社、<海風社のページ>も、そうした生の息づかいが感じられる。「今日の出版・文化状況に欠落しているものは何か。明治百年の近代に限っていえば、それは、明らかに被抑圧者側からの真実の声を不当に封殺したまま埋もれさせつづけたことです」と謳い、南島(奄美、沖縄)、在日韓国・朝鮮人からの視点にこだわる出版活動を続けている。出版している図書の一部をPDF(Acrobat Readerで読める形式)で「立ち読み」できるというのもすぐれた試みだ。オンラインで本を買うことに躊躇する人のほとんどは、その本を手にとって立ち読みできないということがネックだと思っているだろうから、この試みはもっと拡がっていいと思う。
 静岡の羽衣出版は、静岡県内の歴史資料や民俗資料をわかりやすい形で提供しようと出版活動を始めたが、マッキントッシュを使ったDTPを使う中で、そうした古い歴史をマルチメディアで提供する可能性に気づいたという。ホームページ上ではやはりPDFで新刊本の一部を公開していて、“立ち読み”できる。

うした地方出版を案内するページとしては、たとえば、<沖縄県産本ニュース>などの地域別のページがあるが、何と言っても充実しているのは<地方・小出版新刊ニュース>のページである。このサイトを運営しているのは、地方・小出版の卸業者である地方・小出版流通センター。ホームページでは、地方・小出版の新刊一覧とともに、話題書のコーナー、同センターが発行するオンライン版情報誌のWeb版などがある。日本の地方出版の豊かさを一目で見ようとすればこのページである。

 インターネット時代だからこそ、こうした地方出版はもっと豊かになっていいはずだ。そう思わせるようなページの数々だった。

今回アクセスしたページ


随想舎
(http://www.technical.co.jp/zui//index.html)
無明社出版
(http://www.fureai.or.jp/~anbai/)
海風社のページ
(http://www.bekkoame.or.jp/~mijinko/index.html)
沖縄県産本ニュース
(http://www.ryukyu.ne.jp/~silver/learn/kensan/index.html)
本と出版・流通のページ
(http://www.bekkoame.or.jp/~much/index.html)


ここから思いついた言葉でホームページを検索!

InfoNavigator
*半角カナは使用できません
検索のコツ