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 今月の大榎さん

見せたいものは隠されて、隠し
たものは暴かれるネットの常識



        ・日本のインターネットでホットな話題とは?

        わゆる米国の通信品位法は、ネットワーカーから産業界のボスまでを巻き込んでのブーイング(ブルーリボン)によって退けられたが、これを対岸の火事と眺めているわけにはいかなくなってしまった。今、日本のインターネットで一番ホットな話題として、「盗聴法案」が浮上しているのだ。
          法制審議会で審議されてきた「組織的犯罪対策法」(組対法)は、秋の臨時国会への上程を目指して法務省での作業が進んでいる。そして、この組対法には、捜査当局による通信傍受を認める盗聴条項が盛り込まれているという。秘密を守ることを旨としてきた通信の世界が、今、180度転換しようとしている。通信・ネットワークを利用している我々ユーザーとしては無視できない話題である。
         ネットワークを通した検閲反対の活動ではお馴染み、富山大学の小倉利丸教授の「法務省盗聴法案を廃案に!!」でも、一部の刑法学者や、日本弁護士連合会による法案反対の意見書を読むことができる。それによると、この法案が通ってしまうと、盗聴可能な対象がハッキリと限定されていないため、我々が事件や犯罪に関わっていなくても、日常利用しているプロバイダーや職場(学校)のメールサーバーなどが、当局によって容易に盗聴される可能性があるというのだ。メールなんて葉書みたいなものだ、といっても、それを知らないうちにジロジロ読まれるというのではたまらない。「品位法」でも問題にされた曖昧な基準が、ここでもまたぞろ姿を現している。
         小倉教授のページからリンクが張られていた、I.KAWAKAMI & SOHM Teamによる「盗聴法案NO! 組織犯罪法NO!」のページには、オウムから公安調査庁まで、右も左も呉越同舟といった雰囲気の、充実したリンク集があるので立ち寄ってみるといいだろう。

        ・表現規制の不可思議

        律の専門家、弁護士の中にも、当然、インターネット利用者がいる。インターネット弁護士協議会を結成している、東京弁護士会の牧野二郎さんによる「インターネット・ロイヤー法律相談室」は、電子メールを使った法律相談コーナーがあるなど、難しい法律と我々を結びつけてくれるありがたいページだ。ここでは、インターネットに関わる事件の事例を知ることができる。特に目を引いたのは、小学校の先生がクラスのホームページを作ったところ、これを禁止されたという「世田谷区小学校ホームページ事件」だ。 「世田谷区個人情報保護条例」違反が主な問題点とされたこの事件では、次々と不思議な規則が現れる。職務上収集した個人情報をコンピュータで処理してはならないという「電子計算組織による処理の禁止」、さらに、その情報を自宅に持ち帰ると「適正管理の原則違反」になり、そして、個人情報を外部に公表したら「外部提供の禁止違反」になるのだそうだ。 つまり、先生がクラスの児童たちの名前をフロッピーに入力し、それを自宅のパソコンでホームページに仕立て上げてアップロードしたら、以上の条例違反に問われたというわけ。しまいには、学校のコンピュータを外部のネットワークにつなげてはならないという規定までが飛び出している。子どもたちがホームページを作って運営するというほほえましい行為に、これだけの法的規制があったのだ。信じられない話だが、コンピュータ教育や、教育のインターネット利用と言っても、これではお先真っ暗だ。 試しに覗いた世田谷区内の小学校関連のページ、「MGK小学校6年1組物語」や「わたしたちのちとせ」には、未だに「このホームページには教育委員会より削除命令が出されていて、身元を明らかにすることを禁じられています…」「…世田谷区は情報保護条例がありますので、まだ、個人情報に関わるような内容はのせられません…」と記してあった。私は、学校でのいろんな規制の中でパソコン(インターネット)と接しなければならない子どもたちを想像して、ちょっと悲しい気分になってしまった。