「地雷ではなく花をください」AAR難民を助ける会より
NPOのネットワーク/
閉塞状況の突破口


 




 こんにちは、みどりです!

 それはつい先日、友達と3人でユカリのお婆ちゃんが独りで住む山あいの町へ泊まりに出掛けたその帰り道でのこと。
「あーあ、いいところだったね!」
「うん、車で30分も走れば行ける温泉がたくさんあるなんて夢のよう!」
「畑で採れる野菜もおいしいし!」
「なんだかホンキで住みたくなっちゃう」
そう言ったみどりにユカリがとっておき(!?)のアイデアを話してくれた。
「冬が近づくとコタツの出し入れとかあるでしょ?お婆ちゃんの家でそれを手伝ってて思いついたんだけど、町のお年寄り向けにちょっと困ったときにお手伝いする便利屋サービスを安い料金でやれば、結構ニーズがあるんじゃないかなって」
「ふーん、それってNPOにするといいかも」と潤子。
「え?エヌ・ピー・オー?」
「そう。公共性のあるモノやサービスを提供する民間の非営利組織。詳しいことはよくわからないけど、ボランティア団体と違ってモノやサービスを有料で提供してもいいって話だよ。だから、今のユカリのアイディアなら、きっと会社をつくって商売でやるよりも非営利事業としてやる方がいいよ」
「ねぇ潤子、もっと詳しく教えて。非営利事業って一体ナンなの?」
「実は詳しいことは私もよくわからないんだよね。みどり調べてみてよー。ついでにユカリのアイディアもシュミレーションしてみて!イケそうなら私もその計画に乗る〜!あんな素敵なところに根をおろして暮らせるなら今の会社にはオサラバだっ」

 というわけで、インターネットが使えることを理由にみどりが調査及びシュミレーション担当に任命されたってわけ。ちょこっと調べてみるとどうやら日本でもいま、社会に役だつ事業を民間でおこしやすくする環境づくりが進み始めているらしい。と、くればユカリ発案の「お年寄り向け便利屋サービス」も実現可能かもっ。早速、このサービスをやるとどんなことになるのか、調べてみよーっと!

▼ニーズに密着!自発する非営利事業

 まずは、公共性のあるサービスを提供する民間の非営利事業(NPO=Not for Profit Organization)にどんなものがあるのかを調べてみた。

 <中国語ボランティアネットワーク(通称CVN)>は、中国語圏から日本に来ている人の通訳をボランティアで提供する団体だ。発起人の秦佳朗(はた よしあき)さんはもともと都の相談員として勤めていたんだけれど、行政で出来る範囲のサービスに限界を感じ、仲間とこの活動を始めたのだそうだ。

 <多文化共生センター>も、日本に住む外国人向けにサービスを提供している。ことの発端は阪神・淡路大震災。この時に外国人被災者を15カ国語でサポートしたボランティア団体がその前身だそうだ。震災をきっかけに外国人が抱える医療費、労働災害、国際結婚などでのさまざまな問題が浮き彫りになり、継続して支援して行く必要性を感じたと発足の経緯に書いてある。

 <医療事故市民オンブスマン メディオ>は、医療事故を積極的に究明しようという公的機関が存在しないことからつくられた団体。この他、ネット上で探してみると結構多かったのがパソコンを高齢者や身体障害者に学んでもらい就労促進などを支援する活動。その代表的な例が<プロップステーション>だ。

 <アートスケープ>は、表現活動やセクシャリティについて考える開かれた場を母体にして、エイズ・ポスター・プロジェクトなどを通じて社会へのさまざまな問いかけを行っているNPOだ。

「ようこそCLUB LUV+へ」
AIDS Poster Projectより

 これらの組織が提供しているサービスはボランティア(無料)に限らず有料なものもある。共通しているのは、いずれも企業や行政が手をつけていないところで、ニーズに密着し、それにきめ細かく応える活動が自発的に生まれたということ。そしてこの自発的な活動では、その活動を通じて参加者がやりがいであったり、特技を生かせるという満足感であったり、共通の問題意識をもった友達ができたりと、報酬もさることながら、それ以外に得るものが大きい。ニーズに密着した所で質の高いサービスを提供しようと工夫する小さなグループに参加すれば、他ではえがたい発見があり、経験ができるという訳なんだ。

 ユカリ発案の「お年寄り向け便利屋サービス」は、役場がやっている介護サービスほど大袈裟ではなく、日常生活の中でふと困るような、重いものの買い出しや、隣町へ出掛ける時の付き添いなどがサービスの内容になってくるだろう。都会なら、酒屋さんだけではなくコンビニエンスストアだって一部ではもう宅配サービスをやっているけれど、お婆ちゃんの住むあの町には、そんなサービスもない。鉄道こそまだ走っているけれど、過疎と高齢化がすすむ町はきっとますます不便になっていくばかりだ。サービスを提供する側のみどりたちにとっては、あの素晴らしい環境で暮らしてのびのび仕事をすることができるという満足がある。

 ニーズはありそうだから、結果としてそこそこの収入は得られそうだ。ただ、その収入だけでニーズに応じたきめ細かいサービスを提供し続けていくことは難しいかも知れない。でも、頑張って実績をつくれば助成金や寄付金を集めることができるようになるかも・・・。


▼「社会のためになる」けれど「商売にはならない」!?

 <玉川まちづくりハウス>は、そんな活動例のひとつだ。住民主体のまちづくりを地域の専門家の立場から支援する非営利組織として活動をしている。サイトの冒頭では「低所得者層に安い住宅を供給したり、移民の人に雇用・学習の機会を提供したり、都会の空き地で草花を育てることでスラム化を防ぎ近隣のコミュニケーションを回復」したり、「社会のためになる」けれど「商売にはならない」活動をしているアメリカのNPOを例に、日本型NPOのしくみをつくっていきたいと宣言している。

 <「玉川まちづくりハウス Q&A」>のコーナーによれば、「非営利」という言葉の意味は、その組織の理事や出資者に利益を還元しないということだそうだ。つまり、非営利組織(NPO)の活動はボランティア(無料のサービス)に限らず、有料のサービス提供をしても構わない。ただし、そうして得た収入は、スタッフの人件費や経費を引いた上で、利益があれば目的に沿った活動に再投資されなければならないのが営利事業との違いということになる。

 「玉川まちづくりハウス」では、「世田谷まちづくりファンド」(世田谷区の住民主体のまちづくり活動を資金面で応援する公益信託)や財団法人からの助成金、社団法人からの賞金などを活動資金にあてている。3年前からは専従スタッフの人件費を支払っているが、現状では活動の大部分は地域の多くのボランティアの力によって支えられているという。「将来的には、常勤スタッフの人件費と活動経費については、助成金や寄付、事業収益によってまかなっていくようにしたい」と考えているそうだ。

 「社会のためになる」けれども今のところ「商売にはならない」ので営利企業は手を出さなくて、役所もうまく対応できていないような事業を、市民が自発的に起こしやすくしていこう。それには、事業を維持するための助成金や寄付を集めやすくしていこう、という考え方がアメリカなどのNPOの仕組みの背景にあるようだ。

▼活動資金を集めやすい環境づくり 

<みやぎ−デラウェア NPOへの旅><「(6)逆風と戦いながら」>によれば、米国のNPOには、営利企業にはない税制上の特典があり、所得税、固定資産税などが免税になるほか、NPOに寄付をする企業や個人は、寄付金額が年間所得の50%以下なら寄付金に相当する全額が寄付した企業・個人の所得から控除されるのだそうだ。自分が応援したいNPOに寄付をした方が税金を納めるよりお金が有効に使われると判断すれば、そちらを選ぶことができる仕組みになっている訳だ。

 日本では阪神・淡路大震災を機にボランティア団体を含むこうした民間の非営利事業の活力に注目が集まり、今年の3月には「特定非営利活動促進法」(通称:NPO法)という民間の非営利組織を法人として認めようという法律ができ、この12月からは施行される。
 アメリカのような税制面での優遇措置は今の法律のなかには含まれていないが、衆議院の付帯決議の中で「税制を含め、見直しについて、法律の施行日から2年以内に検討し、結論を得る」こととされている(<NPO法はどう議論されたか/NPO税制が次の課題>)。

 こうして考えると、実績がある程度できてからの「お年寄り向け便利サービス」の資金集めは、現状としてはまずは助成金を出してくれる財団を探すのが良さそうだ。そして次に、「町を元気にしたい」というようなメッセージをちゃんと伝えることができれば、町のファンである人たちから寄付金を集めることが期待できそうだ。例えば、町の出身者が経営している企業。町を出て今は大都会で働き、暮らしている人たち。しっかりした実績をつくって公開していくと同時に、そういう人たちに対して未来に向けての夢をインターネットなんかで発信していくといいかも知れない。

▼NPOのネットワーク----情報共有による補完と連携

 と、ここまでにわかったあれこれについてユカリに電話で報告した。すると、「ふーん、NPOという考え方がよさそうなのはわかってきたけれど、まだシナリオに何か欠けていて、インパクトが足りない感じがするね。」だって。
 たしかに、NPOについて調べていて、自分でもいまひとつピンとこない感じがするのは、どうしてか考えてみた。営利企業どうしの関係は、競争を通じて、よりよいモノを消費者に供給するようになると経済学の教科書には書いてあったなぁ。じゃあ、NPOどうしの関係はどう考えればいいのだろう?

 この問題を考えていたら、ヒントになるサイトがみつかった。<すまいづくり・まちづくりNPONET>は、「玉川まちづくりハウス」などのまちづくり非営利事業の支援を目的としたネットワーク。このサイトの<「支援ボックス」>のコーナーには助成活動をしている全国各地の財団や社団法人のリストが掲載してあり、資金源の情報を共有できるようになっている。

 また、<NPOこねくと>のサイトには<NPOリンク>があり、全国のNPOがリストアップされている。このリストには各NPOのサイトでどんな情報が公開されているかということがひと目でわかる様に記載されていて、チェック項目のなかには、活動理念や活動規約(指針・方針)、活動報告や活動計画(今後の予定)のほか、収支報告やメールコンタクトの可否、更新記録などもある。

 そもそもこのリンク集は「NPOが相互に連携することで、有益な情報を共有するとともにお互いに経営資源を補完しあって、NPOの活動基盤を確かなものにしていくきっかけにしていけないか」という理由からつくったそうだ(<NPOリンクの目指すもの>)。

 そうかぁ。営利企業は重要なノウハウを独占し他の企業から隠そうとするけど、NPOの場合は、なるべく情報を共有して、たがいに協力し連携することが活動原理の基本になっているんだ。だから、インターネットの普及は、NPOにとって鬼に金棒って感じなんだな。

▼世界のNPOをつないだ「地雷禁止キャンペーン」

 インターネットを使って非営利組織が大きな力を発揮した代表的な例が<「地雷禁止国際キャンペーン(ICBL=International Campaign to Ban Landmines)」>だ。

 ICBLは1991年11月、ジョディ・ウィリアムズとドイツの活動家ら3人が設立した組織で、米バーモント州を本部に対人地雷の禁止・除去や被害者の救済を目的に活動している。代表(コーディネイター)のウィリアムズさんは、ベトナム戦争の復員兵の世話をする団体で働いていたが、地雷の悲惨さを知りこの地雷の禁止を求める運動を起こしたそうだ。発足当時は2団体の参加であったが、急激に賛同者を増やし、現在では54カ国、約1000団体が加盟(日本でも約20団体の加盟)している。

 驚いたことに世界には途上国を中心に1億5000万個以上の地雷があり、毎年2万5000の犠牲者が出ているそうだ。しかし、国連では「全会一致」の原則が妨げとなり対人地雷禁止への展望を開けずにいた。そんな中、96年10月にカナダ政府が対人地雷全面禁止条約交渉(オタワ・プロセス)を同調する国だけで進めることを提唱。ICBLは各国のNPOやNGO(国際協力・国際援助に従事する民間の非営利組織)をネットワークし、自国の政府に地雷禁止に踏み切るように働きかけるよう呼びかけるほか、各国政府に圧力をかける活動を始めたのだ。

「地雷ではなく花をください」
AAR難民を助ける会より

 そして、この草の根的なネットワークが大きな力を発揮し、97年12月にはカナダで開かれた調印式で地雷廃絶を目指した「対人地雷全面的禁止条約」に130カ国が調印している。今年9月には国連に批准書を寄託した国が発効に必要な40カ国に達し、来年3月1日に発効することが決まった。
 日本では、ICBLの活動に参加した<NGO『難民を助ける会(AAR)』>が「地雷ではなく花をください」という絵本を制作して国会議員全員に送るというユニークな活動を展開し、日本政府も国際的な動きにも影響されて条約に調印することになった。 (以上、<明治大学岡野ゼミ/第四回NGO班レジュメ>、 『JamJam今日のニュース』<97年10月10日><98年9月17日><週刊こどもニュース/地雷なくす運動にノーベル賞>より)。

 調印式の2ヶ月前にノーベル平和賞を受賞したICBL代表のジョディ・ウィリアムズさんは受賞に際し「地雷廃絶運動の陰の立役者はインターネットだった」と語ったそうだ。世界中のNPOやNGOがICBLの主導でネットワークされひとつの目的を為し遂げていくその様子からは、これまで営利企業などでメインだったピラミッド型の組織とは全く異なる、ネットワーク型組織の有効性と必要性が明らかになったのではないだろうか。

▼共働的ネットワークが社会構造を変える

 一橋大学 社会学部の梅林秀光さんは卒業論文<情報社会におけるNPOの存在理由とその役割><第2章・第5節:NPOのネットワーク>の中で、ICBLが「本部も役職の上下もない」階級的従属関係を拒否した水平的ネットワークであることを例に、ネットワークを構成するそれぞれの主体が階層的な位置づけから独立して、対等にそれぞれに専門的な機能を持ちながらネットワークの中に統合されるNPO的組織について考察している。こうしたネットワーク型組織は、お互いの欠点を補完し合うだけではなく、お互いの専門的な機能を組み合わせることで、不確実性にも柔軟に対処することが可能であるという。

 また、<ネティズンの時代><第3部>でデイビッド・ロンフェルトさんは、インターネットを中心とするネットワークの浸透とともに長期的に見て、T(部族)+I(制度)+M(市場)で表される社会からT+I+M+N(ネットワーク)によって示される社会への移行が起きつつあると予感している。そして、新たな社会の担い手としてNPOに注目し、NPOの特徴は、情報共有にもとづく共働的な(コラボレイティブ)ネットワークをつくりだす点にあると考えている。
 自発的につくられた小さな組織がインターネットなどを通じて必要に応じて繋がり連携する。時代の閉塞感を突き破る芽はここにあるのかもしれないっ!

 さてさて、みどりたちの「お年寄り向け便利屋NPO」も、ネットワーク型組織のスタイルを意識して活動をすれば、これまで行政主体で行っていた福祉事業とはひと味もふた味も違う「過疎の町を元気にするNPO」ネットワークの出発点にすることができるんじゃないかしら?

 IターンやUターンをしたい人がせっかくいても、過疎の進む町にはなかなか仕事がないのが現状。農業だけで生活費を稼ぐのは大変なことだけれど、自分たちが食べる分の野菜をつくることはできる。そこそこの現金収入が得られるニーズに合った仕事を自発的に起こしていけるNPOがたくさん出来てつながっていけば、IターンやUターンの人たちの暮らしの見通しも出てくる。

 この週末には早速、ユカリと潤子にこのシュミレーション結果を報告しなくちゃ。皆さんは、今月の特集を読んでどんなことを感じましたか?感想やご意見など、メールで是非送って下さいね!

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