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本とインターネット


 




 情報のデジタル化、電子化が進むことによって、本の制作、流通、さらには、本そのものの形態に大きな変化が起きつつあります。<WebMag 5号の特集「インターネットと起業」>で紹介したように、アメリカでは<Amazon.com>をはじめとするオンライン書店が急速に成長しつつあります。現在の所、従来の紙の本の流通の革新が起きている訳ですが、やがて、本そのものの電子化も徐々に進んでいくと思われます。
 よく考えてみれば、こうした情報のデジタル化、電子化による出版のあり方の変化は、上手な方向づけができれば著者や読者にとって、今まで考えられなかったような、大きな可能性をもたらすものであることがわかります。
しかし、そうした可能性を現実のものにするために、日本語の出版物の場合には、さまざまな障害を除いていかなければならないのが現状です。

▼本をインターネットで探す

新刊の本と出会う主な機会としてどんなものがあるでしょうか。書店をしばしばのぞく習慣のある人たちは店頭でみつけることが多いでしょうし、新聞を毎日読む人の場合には、新聞の広告や書評で見て読んでみたいと思うこともあるでしょうし、クチコミがきっかけで読むこともあるでしょう。さらに、インターネットもさまざまな形で本と出会うきっかけをつくってくれるようになっています。
たとえば、毎週、新刊の本をチェックしようと思う人には、<図書館流通センター><週刊新刊案内>というのがあります。「日本国内の新刊書籍が全点」紹介されるそうで、12月20日発行の号には、1307件が載っています。ジャンル別に分かれていますから、関心のあるジャンルの新刊書をチェックすることができます。このサイトの<新刊書籍検索 > では、1980年1月以降に発行された約71万冊の本を検索できます。例えば、書名の欄に「淡水魚」というキーワードを入れると12冊の本が表示されます。
何か調べたいテーマがあって、それに合った本をインターネットで探す場合には、検索エンジンの<goo>を使うのもいい方法のひとつです。例えば、gooの検索窓にまず「淡水魚」というキーワードを入れて検索をします。そして、インターネット上のサイトの一覧が表示される時、その上に書籍情報という項目が出てきます。この項目をクリックすると紀伊国屋書店のBookWebをすでに入力してあるキーワードで検索してくれます。「淡水魚」では34件で、図書館流通センターの検索結果より多くなりますが、これは、書名に「淡水魚」を含む本だけでなく、内容要約の文章にこの言葉を含む本も探しているためです。


▼本と本とのつながり方の発見

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また、図書館流通センターには、テスト運用中ですが、<関連書籍検索>というのがあります。自由にキーワードや文章を入れると関連があるとコンピュータが判断した本を表示してくれます。たとえば「海と川を往復する魚」という句を入れると表題にサケやアユが入った本がリストに出てきたりします。これは、入力した言葉の意味をコンピュータが判断した訳ではなく、内容要約に「海/川/魚」が含まれる本が表示された結果なのだと思われます。
そして、表示された本のどれかを選んで「類似した書籍」を選ぶ機能もあります。試しに原子保著「北の川の魚たち」の類似書を検索してみると、たとえばジャク・モイヤー著「さかなの街----社会行動と産卵生態」という本がリストに入っています。この本はサンゴ礁の魚たちの産卵について書いてありそうなので、サケ科の魚の産卵と比較してサンゴ礁の魚たちの行動を考えることができそうです。
この関連書籍検索はテスト運用中とは言え、まあ使えるものになりつつあることがわかります。
しかし、この検索システムではまだキーワードの体系が丁寧につくられているとは言えず、そのためにこれは凄いと感嘆させるような本と本のつながり方にはなってきません。
5号の特集でも触れたように、Amazon.com がオンライン書店という業態を確立することができた理由のひとつは、個々の本にきめ細かくキーワードをつけて、さまざまな本と本のつながりを発見できるようにしているからです。
つまり、店舗をもつ書店の場合、本の陳列によって、顧客の本に対する関心を惹き、読みたい本との出会いを促す訳ですが、オンライン書店の場合には、これにあたる機能を別の形で提供する必要があります。個々のページのレイアウトやページとページとのつなげ方によって、顧客の関心を触発し、本と本のさまざまな方向へのつながりを楽しみながらたどってもらえるようにしなければなりません。そのためには、書名や著者名、出版社による検索だけではなく、本と本の面白いつながりの発見を促すような、キーワードの体系づくりがきわめて重要になります。日本語の本の検索システムでも、こうした機能が充実してくることが望まれます。

▼オンライン書評を読む

新聞の書評は読みたい本を知る大事なきっかけのひとつになっていますが、インターネット上でも新聞に掲載された書評とそのバックナンバーを読めるものが多くなっています。
主なものに、朝日新聞の<BOOK asahi.com>、読売新聞の<BOOKSTAND>、産経新聞の<読書面>などがあります。
また、インターネット上で書かれる書評も、だんだん増えています。意欲的な試みのひとつは、ひつじ書房が出している<書評ホームページ>という名のオンライン書評誌です。この書評誌では、読者に投稿をしてもらったり、他のホームページに掲載されている書評を転載させてもらったりして、なるべく多彩な書評を集めていこうとしています。98年12月20日現在で452本の書評が集められていて、ジャンル別、著者名、書名などで書評を検索できるようになっています。また、<書評リンク>には、書評を掲載しているさまざまなサイトが集められているのも便利です。
個人の書評のサイトもたくさんあります。なかでも、しっかりしたもののひとつは、toshirouさんの<a・閑話>というサイトの中の<辛口書評>です。文学を中心にノン・フィクションもとりあげられていますが、独自の批評眼で「☆☆☆=お薦め、☆☆=なんか面白い本はないかなと思ったら試みにどうぞ、☆=図書館で借りる方が賢明、★=他の本を読んだ方がいい」といった評価をくだしています。1997年度分は、作家名別、書名別の一覧になっています。


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桐田真輔さんの<KIKIHOUSE >の中の<言葉の部屋>も、文学や評論の幅広い本の読書メモが載せれられています。
<FKS's Meconopsis horridula>の中の<とりあえず読んでみました>も、文芸、評論、科学、コミックなど多彩な本をとりあげて、内容紹介や感想を書いています。
望月さんの<この本が面白い>はミステリー書評を中心にしたサイトですが、読後感を☆の数によりランキングするといった工夫が凝らされており、書評文も読み手の評価が伝わってくる文章でとても参考になります。
自分がすでに読んだ本についてどんな書評が書かれているかぜひ知りたいというような場合には、<論座ネット>で、新聞や雑誌に載った書評を幅広く検索することができます。書名、著者名、評者名のどれかを入力すると、97年1月以降に朝日、毎日、読売など主要新聞6紙と、週刊朝日、週刊文春などの週刊誌、中央公論などの月刊誌10数誌に載った書評を探してくれます。ただし、書評の内容は1行から数行なので、中味を読むには、図書館に行ったりする必要があります。朝日、読売、産経の新聞の書評がヒットした場合には、上で紹介したインターネット上のサイトで読めばいいでしょう。

▼オンライン書店の現状

関心にあう本をインターネット上の検索や書評で見つけたら、インターネット上の書店のページから本を注文するという方法もあります。紀伊国屋書店の<BookWeb><八重洲ブックセンター><青山ブックセンター>などのサイトから本の注文ができます。
しかし、いずれも本の代金と別に配送の費用がかかるので、品揃えのいい書店に立ち寄るのが難しく読書が大好きという人以外は利用する気になりにくいサービスだと言えます。さらに、紀伊国屋書店のBookWebの場合には、インターネット上で本を注文をするには入会金を払って会員にならなければならないというハードルが設けられています。
他方、書籍の取次を行うトーハンの<本の探検隊>は、インターネット上で注文した本を指定した書店で受け取るという方式になっていて、これは当然ながら本代だけで配送料はかかりません。しかし、今のところ、受取先に指定できる書店の数が少ないので、わざわざ交通費をかけて本を受取りにいかなければならないことになりかねず、これも当面は中途半端なシステムと言わざるをえません。
Amazon.com.の場合には、回転率のいいベストセラーものは30〜40%の値引率になっているので、配送料がかかっても書店に出かけて買うのと同じかやや安くなる価格設定になっていると思われます。回転率の悪い本でも20%くらいの値引率になっているので、何冊か注文すれば店頭で買うより安くなるでしょう。店舗をもたずコスト削減ができるオンライン書店の場合、上手にシステムをつくればこうしたサービスが可能になることをAmazon.com.の例は示しています。
では、日本の現状では、日本語の本のこうしたシステムは実現不可能なのでしょうか。ちょっと考えると日本の場合には、再販制度があって新刊書籍の値引販売をできないのでAmazon.com.のようなシステムは成り立たないように見えます。しかし、本当にそうなのでしょうか。再販制度を前提にすると新刊書籍は定価で販売しなければならないのなら、オンライン書店の本の価格は定価にして、配送料を無料にするという形をとればいいのではないでしょうか。こういうオンライン書店ができれば、インターネット・ユーザーで本が好きな人の大多数が利用するようになるでしょう。
もし、こうした配送料をとらないオンライン書店が再販制度との関係で許容されないとすると、再販制度は書籍流通の新しい業態の成立を妨げる制度になっていることになり、この制度の再検討が必要ということになります。

▼電子本のライブラリー

上では、紙の本についてのインターネット上の情報や注文について探ってきましたが、他方で、言うまでもなく電子化された本のデータを入手できるインターネット上のサイトもあります。
日本語の本を電子化して、読みやすい形で無料で提供してくれているサイトとして代表的なものが<青空文庫>です。ここでは、著作権保護の期間を過ぎた文学作品を中心にすでに300以上の作品が電子化されてこの文庫に入っています。
芥川龍之介、小熊秀雄、樋口一葉といった近代文学の作品が多いですが、「落窪物語」、「土佐日記」與謝野晶子 訳「源氏物語」などの古典もあります。また著作権保護の期間を過ぎていない作品で著者が電子テキストの無料提供に同意したものもこの文庫には入っていて、たとえば清水哲男、鈴木志郎康、高橋悠治、津野海太郎といった名前が作品リストにあります。
この文庫では、それぞれの作品がテキストファイル、HTML版、エキスパンドブック版の3つの形式で提供されていて、読者が望む環境を選んで読むことができるようになっています。HTML版を選べば、インターネットに使っているブラウザーで作品を読むことができますし、縦書きのレイアウトでページをめくりながら読みたければ、エキスパンドブック版をダウンロードするのがいいでしょう。エキスパンドブックのファイルを読むには、エキスパンドブックブラウザが必 要ですが、これはボイジャー社のサイト<Windows>または<Mac>から無料でダウンロードできます。エキスパンドブックで読んでみると、電子テキストも内容にあった形にレイアウトすれば、なかなかいい雰囲気で読めることがわかると思います。
それでも、やはり紙にプリントアウトして読みたいという人は、テキストファイルをダウンロードして、DTPソフトを使ってレイアウトすれば、自分の好みの体裁の本をつくることもできるでしょう。
この青空文庫の先駆的な試みを見ると、先人たちが残してくれた知的資産を読みやすい形で電子化する、こうしたライブラリーの蓄積が増えていけば、とても豊かな読書環境がつくられることがわかってきます。

▼絶版の本を探すには

インターネット上で調べて書店で購入したり、著作権保護の期間を過ぎた本を電子本のライブラリーで見つけて読むといった流れについて、上ではたどってみましたが、刊行後すこし時間が過ぎてから探すと絶版になってしまって入手できない本が多いのも、現状の出版物流通の困った点のひとつです。
最近は、印刷の際にデータが電子化されている本が多い訳ですから、その気になれば、絶版になった本の電子本をインターネット上で販売するのは難しくない筈です。著者が電子本を無料で販売することを選ぶのはひとつの形ですが、読者から見れば、有料でも多様な本が入手可能な形で提供され続けることが重要です。その点でインターネット上での電子本の販売は、紙では絶版になったものを含む多様な作品を流通させる可能性をもっていると思われます。現状では、<EBOOK>が日本語の電子本の販売をはじめていますが、まだ、取り扱い点数は多くありません。しかし、この価格設定を見ると、電子本だと紙の本に較べてずっと安く提供できることがわかります。
絶版になってしまった本を読むためのひとつの手段は、図書館で借りて読むことです。大多数の公共図書館が蔵書データをインターネット上で公開してくれていれば、最寄りの図書館に探している本があるかどうか検索してみることができます。しかし、現状では蔵書データをインターネット上で公開している公共図書館は希で、<岐阜県立図書館><静岡県立中央図書館>など限られた所しかありません。<国立国会図書館>でも、今のところ、一部の書誌情報しか検索できません。
絶版になってしまった本を読むためのもうひとつの方法は、古本屋に行って探すことです。では、探している本がどこの古本屋にあるかインターネット上で探すことはできないでしょうか。
東京都古書籍商業協同組合の<日本の古本屋さん>というサイトがあり、書名か著者名で検索ができますが、あいにく、在庫データを入力している店の数が少ないようで、限られた分野の本しかヒットしないようです。
これに較べると、<インターネット古書店案内> の検索は、11万8千点のデータが入っているといい、探している本がみつかる可能性が高そうです。

以上でたどってみたように、本について検索したり、書評を読んだりする際には、インターネットが力を発揮するようになっていますが、インターネット上の書店で日本語の本を注文するという段になると、ためらう人が多いでしょう。日本語の本の場合、読者の立場からよく考えられたシステムのオンライン書店はまだできていないのが現状です。読者の立場からつくられたオンライン書店が軌道に乗れば、今までなかなか店頭に並らばなかった多彩な本に接することが容易になるでしょう。
他方で、青空文庫のような電子本のライブラリーが充実し、電子本に対する評価が浸透するとともに、新刊書でも紙の本と並行して電子本が出版されることが多くなり、紙の本は絶版になっても電子本を読めるという状態になっていくのではないでしょうか。

さて、今回の特集はいかがでしたか。ご感想やご意見をメイルでお送りください。

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