[特集]
No.27  家族のさまざまな形を求めて
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帯広市広瀬牧場 所蔵写真より

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■家族のさまざまな形を求めて  ヨーロッパ(とくにフランス)やアメリカでは、1970年代から家族についての意識や行動が大きく変化し、従来の家族のモデルがほとんど崩壊し、それぞれの人に合った家族のさまざまな形を求める試行錯誤がなされている。
 日本の社会でも、家族をめぐる意識の大きな変化が進みつつある。そしてこの変化は、女性たちの意識や行動に着目すると、とくにはっきりした形で現れる。
 しかし、家族についての意識の変化といっても、日本社会の従来の家族観がどのように形づくられ、どういう機能をもつものだったのかを整理してみないと、こうした変化が何を変えようとする動きなのかが、よくわからない。そこで、今号の特集では、従来の日本社会の家族観の形成を振り返りながら、新しい家族の形に向かっての変化の意味を探ってみる。

▼母娘のつながりにもとずく家族の形

 さまざまな意識調査の経年変化を見ると、結婚や家族をめぐる女性の意識に大きな転換が進みつつあり、これが日本社会を変えていく大きな底流となっていることが感じとれる。
 そのひとつが、近代の日本社会では、老夫婦が長男の夫婦と同居するといった父系的な家族が多かったのに対して、最近は若夫婦が妻方の親と同居するパターンが徐々に増えているという事実があり、これは、女性の望む家族の形を反映しているのだと考えられる。
厚生省「国民生活基礎調査」より
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 例えば、厚生省の「国民生活基礎調査----高齢者をとりまく世帯の状況」の中にある65歳以上で子供夫婦と同居している人についてのデータを見ると、娘夫婦との同居が昭和55年に9.9%だったのが、平成8年には14.1%まで増えている。
 この背景には、結婚した女性が夫の両親と同居することを避け、仕事をもって外に出ている間に子供の世話をしてもらったりするには、自分の両親の方が気兼ねをせずに頼めるという意識がある。ライフデザイン研究所の既婚女性を対象とした夫の親、自分の親との同居・近居意識という調査でも、夫の両親と同居または近居するとうまくいかず、自分の親との同居の場合の方がうまくいくという傾向がはっきり出ている。自分の親との関係は、近居の場合がいちばんいいという結果になっている。
 第11回出生動向基本調査 結婚と出産に関する全国調査(夫婦)の中には、第一子の乳児期に保育で誰の世話になったかというデータがある。これを見ると妻が雇用者の場合、世話をしてもらったのは「夫の親(同居33.3%、近居8.4%)」、「妻の親(同居10.7%、近居17.6%)」となっていて、近居の妻の親に手助けしてもらっている場合がかなり多いことがわかる。
 同じ調査の中に、理想の子供の数と男女の組み合わせという質問があるが、これを見ると15年前には、男児を望む人が多数だったのが、97年には逆転している(回答者は妻)。子供1人と答えている夫婦の場合、82年には51.5%が男児と答えていたが、97年には75%が女児という答えになっている。おどろくべき大きな変化だ。ここには、老後に女の子の方が相談相手にもなってもらえ、息子の結婚相手より気兼ねせずに面倒をみてもらえるという女性たちの意識が働いているのだと考えられる。
 このように、母娘のつながりを中心にした家族という方向への変化が着実に起きている。

▼戦前の「家」制度とは?

 上で見たように母娘のつながりにもとずく家族が増えているが、これは父系的なつながりを偏重する従来の日本社会の家族モデルを変えていく動きだと言える。
 父系的なつながりを重視する考え方は、明治民法ではっきりした形をとる戦前の「家」制度の特徴のひとつだ。現在進みつつある家族についての意識の変化について考えるためにも、この戦前の「家」制度がどういうものだったのかを振り返っておいた方がよい。
 1898年(明治31年)から施行された明治民法では、戸主=家長に家族に対する大きな支配権が与えられている。例えば、家族は戸主である父親の承諾なしに結婚することができない。そして、この民法では長男相続の考え方がとられている。
 明治民法の制定にいたるまでには紆余曲折があり、不平等条約の改正と民法典の制定に書かれているように、明治政府はフランス人のボアソナードを招聘して民法の作成を依頼したが、この法案は1890年に公布されたものの、「家」制度を重視する保守派の「民法出でて忠孝亡ぶ」(穂積八束)といった反対にあって施行が延期されてしまった。そして、この延期派の意見をとり入れてつくられたのが明治民法である。
 つまり、この頃までは、明治政府には、どのような統治秩序をつくるかという点について、相反する考え方があり、この明治民法の施行の頃から、家-村の心情的な共同体を国家秩序の支柱にする流れが支配的になっていくといっていいようだ。

 由谷裕哉さんの家族と人口(1999年度 社会学)の中の「直系家族の制度化」に記されているように、明治民法は、長男が親と同居して嫁を迎え、家長権と家産を継承する「直系家族」を制度化する性格をもっていた。 しかし、こうした形の「家」が日本社会の古くからの伝統であるという考え方には、疑問が多く、夫婦別姓選択制に賛成する人類学者有志の会が言っているように、従来の日本社会の家産の継承の仕方は地域的に多様で、たとえば「末子相続」「姉家督」などの習慣をもった地域もある。
「近代日本の離婚に関する一考察」より
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 つまり戦前の「家」制度は、国家秩序の柱として明治民法などによってつくられたものだと言っていいだろう。注目したいのは、岡本朝也さんが近代日本の離婚に関する一考察で書いているように、離婚率の推移にも、明治民法の施行を境にして、「家」制度の規制が日本社会に浸透していく様子がうかがわれる。明治民法以前の日本社会では、離婚率がかなり高かった訳である。


▼女性の意識変化と
  男女のギャップ

 家族をめぐる女性の意識の変化は、上で触れた母娘のつながりを中心にした家族の形に向かっての動きだけでなく、さまざまな形で現れている。例えば、国立社会保障・人口問題研究所の1997年の出産動向基本調査・独身者調査によると、女性では「生涯、独身で過ごす生き方も悪くない」(92年:38% ⇒ 97年:46%)、「男女が結婚せずに一緒に暮らしても構わない」(24%⇒36%)、「結婚しても必ずしも子どもを持たないでいい」(10% ⇒ 23%)、「いったん結婚しても、相性が悪ければ離婚しても構わない」(38% ⇒ 47%)、「結婚しても家庭のために自分の個性や生き方を半分犠牲にする必要はない」(59% ⇒ 62%)といった意見が5年前に比べていずれも増加している。つまり、パートナーや家庭のために自分を犠牲にするのではなく、自分の個人としての可能性を開発していくという方向に女性たちの意識は向いている。
 ここで注目したいのは、いずれの質問でも、伝統的家族観を否定し、個人を重視する傾向が男性より女性で明らかに強いという点だ。男性の場合97年の回答で、「生涯、独身で過ごす生き方も悪くない」:36%、「男女が結婚せずに一緒に暮らしても構わない」:25%、「結婚しても必ずしも子どもを持たないでいい」:15%、「いったん結婚しても、相性が悪ければ離婚しても構わない」:31%「結婚しても家庭のために自分の個性や生き方を半分犠牲にする必要はない」:48%となっていて、明らかに男性の方が伝統的な家族観に肯定的な傾向をもつ。
 この男女の意識のギャップがどこからきているのかが、大事な問題になってくる。この点について考える手がかりになるのが、結婚の利点についての質問で、10年前には、男性の場合「社会的な信用や対等な関係が得られる」という答が「精神的な安らぎの場が得られる」についで2位を占めてしたということだ。(97年にはさすがにこの答は4位に下がっている。)女性の場合はこうした結婚動機はずっと低く、10年前でも6位である。
 つまり、男性の場合には「世間から一人前と認めてもらうためには、世帯をもつ必要がある」という意識から結婚を考える傾向が強かった訳だ。そして、この「世間」とは会社の上司や同僚、取引先であり、親戚や郷里の人たちである。このように、つい最近まで、「世間」の家族モデルに合わせて自分の結婚を考えることが、男性には多かったと言える。それに対して、個人の可能性の開拓を重視する女性たちの意識は、「世間」の家族モデルに疑問符をつけ、それを変えようとする傾向が強いのだと考えられる。

▼男性たちの意識を規定する「世間」--------- 戦前と戦後

 とすると、男性たちの意識や行動を規定してきた「世間」のあり方が、戦前の家−村−国家の秩序と較べて、戦後社会ではどう変わり、どう連続しているのかが重要な問題になる。
 明治民法における「家」制度は、家-村という心情的な結合を国家的秩序の柱にしようという意思をともなっている。この考え方の下では、国家は天皇を家長とする家族的な秩序として描きだされることが多かった。そして、太平洋戦争に突入していく過程で、家−村は、人々を国家への滅私奉公へと駆りたてる縦型の動員のシステムになっていった。
 敗戦後は、国家の求心力は失われたが、経済復興の時期から、こんどは企業への滅私奉公のシステムがつくられ、家族はそれを「銃後から」支える役割を演じることになった。戦前の社会では、都会に出てきた男性たちもいわば郷里とそこにある家を背負っていて、「故郷に錦を飾りたい」という意識が彼等を立身出世に向かって奮闘させる動機となっていた。しかし、戦後の社会では、自分を背後から支えるものとしての故郷や家を持たない人も増えてきて、他方で、男性たちの行動を規定する「世間」のうちで企業の力が著しく強くなった訳だ。その結果、「世間」が求める家族モデルは、企業の期待する社員像にともなう家族像と重なるものになっていった。
 木本喜美子さんの家族・ジェンダー・企業社会では、こうした戦後社会の大企業が期待する社員像と家族像の関係を具体的に検討している。大企業の持家制度を中心とする福利厚生と年功賃金の下で夫=父親をはじめ家族が企業の価値規範に巻き込まれ、「夫=父親は、労働に耐えて昇進競争を勝ち抜くことに自分自身の役割を「特化」し、また家族員の方もそうした特化を受容する構造」ができていることを指摘する。
 しかし、企業に勤める夫と家事や育児を一手に引き受けさせられた妻とでは、当然、企業の価値観に巻き込まれる度合が違う。そして、会社のことに専らエネルギーを注いでいる間に、妻との関心のギャップがどんどん広がり、夫はそれに気づかない。その結果が、中高年離婚の増加という形で現れている。
 日本経済新聞 女たちの静かな革命妻の熟考・長き老後へ離別選択によると、「離婚はほぼ4件に3件が妻からの申し立てによる。」ものであり、「20年以上同居した夫婦の離婚は96年に3万2000件と過去最高になった。離婚全体の16%に達し、75年の6%に比べ20年余りで10ポイントも上昇した。」という。

▼未婚の母たちのネットワーク

 上でたどってみたように、男性たちの家族についての意識は「世間」の家族モデルに順応する傾向があるのに対して、女性たちの意識は「世間」の家族モデルを疑って、自分なりの感じ方に合った仕事の仕方、パートナーとの関係、家族の形をつくっていく方向に向かっている。
 快適未婚の母のススメのKokariさんは、妻子をもつ男性とつきあっている間に、妊娠し、悩んだ末に出産することにした。結婚は何歳になってもできるが、子供を産むには年齢に限界があるし、歳をとった時のことを考えると、一人くらい血のつながった人間がいないと寂しいと思ったからだという。親を納得させるまでが大変だが、「もし、おろして、このまま、私が結婚しなければ、お父さんお母さんは一生孫の顔が見れないよ」とかいろいろ言って、しぶしぶ認めさせた。「親を説得できたら、もう後はしめたもの(!?)」だと言う。会社は辞めると生活が大変になるので、「事情があって、結婚はしませんが、出産する予定なので、 産休を取りたい」と上司に説明する。陰ではいろいろ言われるだろうけれど、気にしないことにすればどうということはない。頑張って仕事をきちんとやっていれば、一人くらい味方になってくれる人も出てくるという。
 Kokariさんのサイトは、こうした人間関係をはじめとして、マタニティライフ、出産、子供が産まれてからの手続き、復職のタイミング、保育園などについて、未婚の母に対する具体的なアドバイスを整理している。
 Kokariさんが運営している未婚ママの掲示版を見ると、Kokariさんと似た経緯で妊娠した人がたくさん書き込みをしていて、悩みをうちあけたり、励ましたりする場になっている。妻子もちの男性とつきあって妊娠すると周りの人はみな中絶を勧めるが、Kokariさんたちは、自分の気持ちを大事にして産みたければ産んだ方がいいというアドバイスをしている。そして、「案ずるより、産むがやすし」で、この掲示版に書き込む未婚の母たちは、妊娠中に悩んだり、泣いたりしていても、「不思議なもので子供が産まれると、みんな元気になる」とKokariさんは返信に書いている。

▼離婚によるシングル・ペアレントと子育て

 Kiss Your Mammy!の制作者りえさんは、6年間の結婚生活の後、さいきん離婚した女性で、3歳の娘さんを育てている。我慢すれば結婚生活をつづけられたかもしれないけれど、子供のことを考えると我慢して生活して、母親が「いつもいらいらしたり、じめじめしたり、不幸そうでいたら、子供はもっとかわいそう」と考えて離婚を決意したという。りえさんは、自分の母親から「子供がいなかったら別れていたけど、あんたたちがいるから別れなかった。」と言われて迷惑に思った記憶も持っている。
 りえさんのサイトの中にある離婚発しあわせ行きは、離婚を決意できずにいる人のために、りえさんが離婚を決意するまでに、気持ちを整理する過程で学んだことをまとめたページだ。とても冷静で、わかりやすく、当事者が気持ちや考えを整理する上での大事なポイントがあげられている。そして、「離婚して幸せになっている人は、ビジョンをもっている人、生き方を明確にしている人のようだ」と言い、生活設計についてのチェック・ポイントを整理している。また、子供がいると「自分さえ我慢すれば」と考えがちなので、離婚のケース・スタディとしてNさんの場合をとりあげ、子供に離婚について、父親についてどういう説明をするのがいいか考える手がかりを提供している。「事実は事実として伝え、こうなって(離婚して)しまったけど、あなた(子供)は、お父さんからもお母さんからも愛されているんだよ、と言う事を伝えてあげればいい」とNさんは言っている。
 また、ママのミーティング・ルームは、「シングル・ペアレントへの偏見」などシングル・ペアレントと子育てをめぐる意見交換の場になっている。

▼事実婚と婚外子

 「世間」の家族モデルに順応せず、カップルのたがいの気持ちを重視する考え方をとると、いっしょに暮らしても婚姻届けを出さないという家族の形を選ぶ人たちも当然出てくる。  別姓入門の中の事実婚の項で説明されているように、「同棲」とか「内縁」とかいう表現は「法律婚をしたいけどそれが許されない」という感じになるが、積極的に法律婚を選ばないという夫婦が増えているので、この場合「事実婚」という言葉が使われるようになっている。  しかし、こうした事実婚を選んだ夫婦も、子供が産まれることになると、子供が婚外子として差別されることを恐れてあわてて婚姻届けを出すケースが多い。現在の民法では、婚外子の法定相続権は婚内子の2分の1になるというように、婚外子は法律上の差別を受けていて、この民法の規定の合憲性をめぐって法廷で争われている(日弁連婚外子相続分差別の合憲性に関する決定)。つまり事実婚や未婚の母から産まれた子供に対する差別をなくすには、ひとつには、こうした民法の婚外子に対する差別を改めることが必要になる。また、社会的な差別をなくしていくには、未婚の母たちを支えるしっかりした社会的な仕組みをつくり、法律上の結婚から産まれかどうかに関わりなく、子供たちがのびのびと育つ環境をつくっていくことが重要だろう。  きりはら きりさんがきりきりの書庫の中のおりおりの独身・2で書いているように、法律上の未婚者でも子供をもち、育てやすい社会にしていくことが望ましいのではないだろうか。

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