[特集]
No.38  地域通貨(コミュニティ・マネー)の可能性
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『イサカマネー』(「Ithaca HOURs Online」より)

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 通貨というと、円やドルのような普通に流通している貨幣のことを思い浮かべる。だから、小さなグループが自分たちなりに構想した通貨を流通させるなどと言うと、現実ばなれした妄想だと思う人が多いかもしれない。
 しかし、最近は、地域通貨やエコマネーといった言葉がマスメディアにもときどき登場するようになって、円やドルのような普通に国が発行する通貨とは別の狭い範囲のコミュニティの中で流通する通貨が知られるようになってきた。
 地域通貨やエコマネーに関心が向けられるようになっているのは、ひとつには、地域経済が空洞化し地域コミュニティが脆弱になっているところが多いなかで、コミュニティの中でだけ流通する通貨が地域再生に役立つかもしれないと期待されているからだ。さらに、循環型の地域づくり、持続可能な地域づくりに役立つかもしれないとも考えられている。
 それだけでなく、地域通貨という考え方には、小さな範囲での実験的な試みから出発して、試行錯誤を通じて発見や改良を重ね、試みの地点を増やし、範囲をだんだんに広げていくことによって、現状の通貨システムを改革していくこともできるかもしれないという期待も含まれている。

 そして、こうした試みが始まり、広がるには、多くの人々が面白そうだから参加してみようと思うような、いろいろな可能性を感じさせる仕組みであることが不可欠だろう。しかし、国内ではまだ実験的な試みが始まったばかりで、地域通貨のどういうところが面白いのか、何が期待できるのかについて、まだ、はっきりした共通認識ができてはいないようだ。
 そこで、今回の特集では、地域通貨の面白さや可能性を探ってみることにしよう。

▼通貨の先入観をこわすLETS

 地域通貨には、海外ではかなり長い試行錯誤の歴史がある。いろいろなタイプの地域通貨が提案され、実際に使われてきた。そして、現在多くの地域で採用されているもののひとつに、LETS(Local Exchange Trading System)と呼ばれる仕組みがある。
 地域通貨の面白さや可能性を具体的に考える入口として、まず、このLETSをとりあげてみよう。この仕組みは、「通貨」という言葉で思い浮かべるのと違った意外さがあり、また地域通貨の試行錯誤から学んだ工夫が組み込まれているので、想像力を刺激し、地域通貨の面白さを考えるためのよい例題と言えそうだからだ。

 じつは、LETSという仕組みでは、紙幣やコインのような具体的な形をもつ通貨は存在しない。この仕組みに参加するメンバーどうしの交換と残高勘定の記録をその地域のLETSの事務局(Registry Co-Ordinator)が管理しているだけで、メンバーどうしのさまざまな交換を仲介する通貨の役割を果たせる。
 例えば、ある地域のLETSに参加しているBが中古カメラを誰かに譲りたいと思っていて、Aがそれを知って欲しいと思ったとする。AはBを訪ねて実物を見せてもらい、50グリーン(この地域のLETSの単位がグリーンだとする)で譲ってくれないかと申し入れ、Bが納得する。Aは、LETSの事務局に連絡して、Aの口座の50グリーンをBの口座に移してもらう。これで、交換が成立する。この際、交換を事務局に伝える方法はいろいろあるようだ。例えばよく使われているのは、メンバーの皆に、LETSの小切手帳を渡しておき、AからBにグリーンを支払う場合には、小切手にグリーン額や日付を書き入れてサインをしてBに渡し、これをBが事務局に送るというやり方だ。

 この仕組みを系統だてて説明した<LETSystem Home Page>があり、これを読むと、この仕組みの狙いや基本的な考え方がよくわかる。面白いのは、この仕組みは出発点では、参加者すべての口座の残高はゼロから出発するという点だ。いろいろな交換が行われると、誰かの口座はプラスの残高、誰かの口座はマイナスの残高の状態になるが、システム全体では、いつもプラスとマイナスは相殺されて、残高がゼロになる。円やドルのような通貨と違って、LETSの事務局は通貨を発行する必要はない。この仕組みに参加したメンバーが他のメンバーとの交換をしたい時に、いわば自分で「通貨を発行できる」ことになる。普通の通貨の場合は、手持ちのお金(プラスの残高)がないと買物ができないが、LETSの場合には、プラスの残高がなくても、他のメンバーからモノやサービスを「買う」ことができる。

▼LETSがつくりだすコミュニティ

 しかし、このLETSの仕組みでは、何を「買う」ことができるだろうか。それは、その地域のLETSにどんな人が参加しているかによって違ってくる。多くのLETSでは、参加メンバーが提供したいサービスやモノと提供して欲しいサービスやモノを事務局に登録して、それを一覧表にしたニュースレターを事務局がつくり、定期的にメンバーに配布している。だから、ある地域のLETSにどんなメンバーがいるかで、交換が活発に行われるかどうかが左右されることになる。
 登録されるサービスやモノは、普通のお金で取引されている種類もあれば、もともとボランティアやコミュニティの相互扶助的な関係でやりとりされてきた類もある。この両方が重なりあったところが、LETSの領域になる。

 LETSの考え方で、もうひとつ大事なところは、プラス残高にもマイナスの残高にも利子がつかないということだ(1.3 Fundamentals of the LETSystem)。多くの残高を貯め込むことがよい参加者だとは見なされず、残高をメンバーどうしの交換に使うように促す仕組みになっている訳だ。また、マイナスの残高があっても、それが利子でどんどん膨らんでしまうということは起きないようになっている。
 つまり、LETSは、メンバーどうしの間の交換を促すことに重点を置いた仕組みであることがわかる。プラス残高が貯まってくると、他のメンバーが提供しようとしているメニューの中に試してみてもいいものはないかと、リストを見直すようになる。そして、試しに利用してみれば、例えば近所のパン職人が作っているパンがスーパーで売っている全国ブランドのモノよりおいしいことを発見するといったことも起きる。
 また、病気で何ケ月か働けなくなってしかも預金がないという場合でも、LETSに参加しているメンバーに基礎的な食品を提供リストに載せている人があれば、マイナスの残高を増やす形で、しばらく食べていくことができる。元気になってから、他のメンバーにモノやサービスを提供して、マイナスの残高を減らせばいい。

 こうした仕組みが機能するには、信頼性が不可欠である。そのため、LETSの場合には、各メンバーの取引残高をオープンにするという公開の原則がとられる。また、事務局とは別の人が世話人(Steward)になり、LETSの働きが参加者全体の利益に反するものにならないための相談役、チェック係になるといった工夫もされている。

▼大恐慌と地域通貨の思想

 このようにLETSの仕組みは、多くの人が当然のものとして受け容れてしまっている通貨についての通念をこわし、通貨とは一体何なのかをよく考えてみる必要を感じさせる。そして、通貨を与えられたものとして受け容れてしまうのではなく、より望ましい通貨の仕組みを設計してみることが可能だし、それが大事な意味をもつかもしれないことに気づかせてくれる。

 LETSは、1983年にカナダのバンクーバー島のComox Valleyに始まったもので、その後、オーストラリア、ニュージーランド、イギリスで沢山のLETSができている。地域通貨のさまざまな試みや考え方に学びながら、洗練された仕組みへとデザインされているため、地域通貨の代表的な仕組みのひとつとなったのだろう。

 地域通貨とは、ある地域あるいはコミュニティ(地域的なコミュニティであるとは限らない)の中でだけ流通する通貨である。(だから本当はコミュニティ通貨と言った方が適切な呼び方だが、呼び方がやたらに増えても混乱するので、地域通貨という呼び方にしたがっておく。)
 こういう地域通貨を発行するという発想が盛んになったのは、1930年代の大恐慌の時だ。地域の中にはさまざまな技能をもった人がいるのに、貨幣経済の乱気流に巻き込まれて、皆お金がない状態(あるいは持っていても使わない状態)になってしまったために取引の連鎖が断ち切られ、多くの人が失業し、食べられなくなってしまった。それだったら、地域の中で流通する通貨を発行すれば、地域の中での取引が甦り、多くの人の仕事ができ、生活の糧を得られるようになる。<ゲゼル研究会>の「地域通貨の歴史をちょっと(1)」で紹介されているように、1929年にドイツでは、組合員の間でクーポン券でモノやサービスを交換する交換組合ができ、こうした交換組合の数が急激に増えていったという。
 つまり、地域の中の取引が分断されてしまっている状態の時には、地域通貨の導入は地域内の取引を促進し、地域経済を立ち直らせるというのが、地域通貨の基本的な狙いのひとつになる。

 上でも書いたように、LETSの仕組みでは、プラスの残高にもマイナスの残高にも利子がつかないという点が基本原則のひとつになっている。つまり、プラスの残高を貯め込んでも得にならず、交換をして残高をなるべく早く使うことを促すような設計になっている。この考え方の源流は、シルビオ・ゲゼルという人にあるようだ。これまでの通貨の機能のうち交換を促す機能だけを残し、蓄えることによって、富の自己増殖が起きるといった貨幣の性格をなくすには、時間とともに価値が下がるような通貨を設計する必要があるとゲセルは提唱したのだ(The NATURAL ECONOMIC ORDER)。蓄えても利子がつかないというLETSをはじめとする地域通貨の基本的な考え方は、このゲセルの考え方を引き継ぐものだと言っていいだろう。

▼地域内だけで流通する紙幣/イサカアワー

LETSは、なかなかよく考えられた仕組みだが、メンバーどうしの交換を事務局に報告することが必要だ。これにはいろんな方法があるが、現状ではどうしてもちょっと面倒なものになってしまい、それが普及を妨げる一因になっている。
 LETSとともに、もうひとつの代表的な地域通貨といえるイサカ・アワー(Ithaca HOURS)では、LETSに学びながら、気軽に使えるものにするために、地域で紙幣を流通させる方法をとり、注目すべき成果をあげている。これは、地域通貨の導入で何が起きるかを知る上でよい例なので、具体的に調べてみることにしよう。

 イサカ・アワーの仕組みは、蓄えても、借り入れても利子がつかないところや、参加したメンバーが提供したいコトやモノ、提供して欲しいコトやモノを登録して、それがHOURS TOWNというニューズレターに載るところはLETSと同様だが、HOURSという地域通貨を事務局が発行する。そのため、事務局がメンバーの残高の管理をする必要がないし、参加登録をしていない人でも気軽にアワーを使ってみることができる。

 この地域通貨は、1991年にポール・グローバーという人の提案で始まり、これまでに1,300人(370社の企業を含む)が参加登録をし、6,500HOURSの紙幣が発行された。ニューヨーク州のイサカは人口約3万人の町なので、参加率は4%ということになる。1HOURSはほぼ10ドルに当たるので、65,000ドル分のHOURSが流通していることになる。Monica Hargravesさん(The Multiplier Effect of Local Currency)によると、HOURSは年間に6回の交換に使われているという調査結果があるそうなので、これが正しければHOURSによる売買は年約39万ドルという計算になる。参加者1人当たりでは、年間300ドル分くらいのHOURSを使った交換が起きている。

 「Monicaさんが言うように、この中には、アワーがなくてもドルで行われた売買が置き換わった分と、アワーが存在することで生まれた「新たな売買」とが含まれていて、それぞれの大きさを知るのは困難だ。」しかし、「新たな売買」がかなりの大きさで起きていることは間違いないという。「新たな売買」には、大きく見て二通りあり、第一はもともと事業を営んでいた人がアワーがあることによって新たな顧客をえることができるという場合、第二は、これまではドルで売買されてはいなかったサービスやモノがアワーとHOURS TOWNのリストができたために売買されるようになる場合である。<Ithaca HOUR Businesses>には、アワーで買い物をできる店のリストがあるが、これを見ると代金を全部アワーで払うことができる店と受け取る額の上限がある店とがあることがわかる。小さな店では、代金の一部でもアワーで支払うことができるようにすることで、新たな顧客に店に来てもらえる効果がある訳だ。

 その上、アワーの売買に参加し、ニューズ・レターを手にすると、自分が地域の人たちに何を提供できるか、また、地域の人たちから何を提供してもらえるかという点について、今までと違った見方ができるようになっていくという。たとえば、<Success stories>に収録されている参加メンバーの感想の中でBillさんは語る。「アワーは、人々に通貨とは何かを考えさせる。私たちは通貨それ自体が目的だと考えがちだが、それはエネルギーや資源を交換するためのものだ。アワーは、小さな取引に使われるので、どこから来てどこに行くのかを知ることができる。----アワーで私たちは大きな文化的な変化をつくりつつあり、通貨のコミュニティにおける意味を取り戻しつつある。」アワーは、コミュニティの中をぐるぐる巡っていくので、それを使うことでコミュニティの中のさまざまなつながりを感じさせ、つながりへの関心を高めていくことがわかる。

▼イサカ・アワーを支えたつながり

 このようにイサカ・アワーはかなりの成果をあげつつあるようだ。この仕組みが軌道に乗ったのはよいスタートをきることができたからだと思われ、その条件とは何だったのかが問題になる。

 <Cornell's Activist History and Future>に書かれているように、イサカにはコーネル大学があり、コーネル大学を中心にしたベトナム反戦運動や人種差別撤廃運動などが行われた時代からのキャンパス文化やヒッピー的文化をもつ。そして、有機農業やオルタナティブな技術をめざすグループなどの活動がさかんで、また都市と農業を結びつけるGreenStar協同組合やイサカ・ファーマーズ・マーケットなどがつくられている。こうしたさまざまな活動的なグループのネットワークがあったために、イサカ・アワーの仕組みをうまくスタートさせることができたのだろう。

 ポール・グローバーは、不況によって落ち込んでいる地域経済を立ち直らせるには、地域の中を循環する通貨をつくり、地域の中での取引を活発にするのがいいと考えて、イサカ・アワーを提唱したところ、共感する人が多かったので1991年からアワーの発行をはじめた。イサカ・アワーのような紙幣を発行する地域通貨の場合、流通し始めるためには、仕組みに共感して、アワーを受け取ることを公表する人や企業が出てこなければならない。イサカでは、最初に30人が参加に同意したという。この中には、ファーマーズ・マーケットに店を出している人たち、地域の映画館のオーナー、その映画館の掃除をする人、おいしい食事ができるレストランの経営者が含まれていたという(A History of Ithaca HOURs)。イサカには、実験的な試みに参加するパイオニア精神に富んだ人が多かったため、アワーは、比較的に円滑に人々の間に流通するようになっていった。しかし、アワーのように、地域で紙幣を発行する仕組みの場合には、信用を確立するために、通貨発行のルールをはっきりさせることが重要だ。
 アワーの場合には、<Introduction>に書かれているように、参加登録をした人に1HOURあるいは2HOURsが与えられ、参加を続けていると8ケ月ごとに1HOURが与えられるというのが、通貨発行の基本になっている。もうひとつ発行の仕方には、アワーの発行量の11%に当たる分をコミュニティ団体に贈与するという形がある。これまで、35の非営利組織が610HOURsを与えられている。これは、非営利組織やそこで働く人たちと地元のさまざまな仕事をする人とのつながりを強めていく効果をもつと思われる。

 また、イサカ・アワーの運営は、評議会(The Board of Directors)によって行われ、この会議は公開されていて、評議員は毎年、参加メンバーの投票によって選ばれる仕組みになっているという。

▼コミュニティ・センターの運営と「おうみ」

 このように、イサカ・アワーは、着実な成果をあげつつあるようだが、日本の国内での地域通貨についての試みはどの程度進んでいるのだろうか。
 国内では、地域通貨について、加藤敏晴さんがエコマネーという言葉を使った議論をしていて、マスメディアでもエコマネーという言葉が出てくることが多い。加藤さん(エコマネー・ネットワーク)は、上で紹介したLETSやイサカ・アワーとは違ってボランティア領域に限定した地域通貨の仕組みを提案しようとしているようなのだが、まだ、実験的な段階にある。

 インターネット上でわかる範囲では、国内での試みで一番しっかりした組立てをもっている地域通貨の試みは、滋賀県の<草津コミュニティ支援センター>を中心とする「おうみ」だと言える。イサカ・アワーの例からもわかるように、地域通貨がうまく軌道に乗るためには、パイオニア精神に富んだ多彩なメンバーが核となり、互いに補い合うネットワークをつくりだしていくような条件が必要だ。「おうみ」には、幸いそういう条件があるようだ。

 1998年にオープンした草津コミュニティ支援センターは、公設の施設を市民団体が協力し合って運営するという形になっている。この施設は、多目的ホール、会議室、パソコン、プリンター、コピー・マシンなどが使えるオフィスなどからなり、利用団体として登録すれば、こうした施設を使えるようになっている。そして、この施設の管理運営にあたっている事務局は、運営団体のメンバーとボランティアからなっている。団体登録する時に、利用するだけの利用団体か、運営にも協力する運営団体か、どちらかを選ぶようになっているのだという(成熟した市民社会の創造に向けて)。
 開設当初は、登録料がかかる以外は、施設の使用料は無料で、また、施設運営のボランティアにも報酬が払われていなかった。しかし、それぞれの市民団体が市民事業を行うNPOとしてのマネジメント能力をもつようになっていくためには、「善意」に対して「感謝の気持ち」を表すという関係だけではなく、サービスに対して何かの形の支払いがなされる仕組みが必要だという考え方になっていった。
 その結果、施設の使用料を有料にするとともに、「おうみ」という地域通貨を導入することになった。施設運営のボランティアを行った団体や個人はその労力に対して「おうみ」を支払われ、貯まった「おうみ」を施設使用料などの支払いに使うことができる。施設使用料は、「おうみ」でも円でも払うことができることになっている。つまり、コミュニティ支援センターを中心にした「おうみ」の流通が頻繁におきることになる。

▼「おうみ」によるNPOのつながり

 「おうみ」の考え方はイサカ・アワーを土台としたものだが、仕組みはちょっと複雑で、「電子おうみ」と「紙幣おうみ」がある。「おうみ運用マニュアルver3.9」によると、「電子おうみ」の方は、コンピュータ上に記録された口座の残高の移動で「おうみ」のやりとりをする方式だ。コミュニティ支援センターの事務局と事務局運営の仕事に協力する団体や個人が口座をもつ。「電子おうみ」の残高は「紙幣おうみ」に交換してもらうことができる。
 他方、「紙幣おうみ」の方は、「おうみコミュニティ」にメンバーになった人に渡される。1,000円の協力金を払って、「おうみ達人リスト」(提供したい、提供してもらいたいサービス、モノのリスト)に登録すると8おうみが発行される(1おうみは100円にあたる)。つまり、コミュニティ支援センターを核にしながら、「おうみコミュニティ」を広げていくことで、地域の中のたがいの結びつきを深めていく仕組みになっている。
 この「おうみ」の例は、地域通貨の導入の仕方として、自然で無理のない入り方だと言える。無料や無報酬だった、センターと市民団体の関係を有料、有償にする際に、地域通貨を導入することにより、これまでのボランティアとも、普通の通貨による売買とも違った関係の網の目がつくられていくことになる。

 コミュニティ支援センターは、「NPOのためのNPO」(NPO支援に関するレポート)という機能をめざしているというが、NPOどうしの共働的な(コラボレーティブ)関係をつくりだしていく上でも、「おうみ」はとても効果的だと思われる。センターの運営に協力している団体を見ても、環境保全、アート、福祉、子育て、生涯教育などと多彩だが、こうした団体やその周囲の人たちが、「おうみ達人リスト」に登録するようになると、いままでと違ったさまざまなつながりが生まれ、その結果、NPOどうしの共働的な関係も深まっていくと考えられるからだ。
 「おうみマーケット」に登録されている「求めます」「提供します」のリストを見ても、それぞれバラエティに富んでいて、興味をひかれる楽しいものが多く、さまざまな新たな発見や協力関係が起きそうな様子が伝わってくる。

▼エコロジカルな地域づくりと地域通貨

 イサカ・アワーの例からもわかるように、地域通貨は参加者が増えていき、地域の中で地域通貨で買えるモノやサービスの種類が広がってくると、利用価値が高くなり受けとってもいいという人が増えやすくなる。また、地域の中をぐるぐる巡っている地域通貨を使うと地域の中のいろいろな仕事のつながりが実感できるようになり、そうしたつながりに強い関心をもつようになっていく。
 こうした地域通貨は、地域の中でしか使えない「不便な通貨」「弱い通貨」である。ところが「弱い通貨」であるために、円やドルのような国の中で誰にでも受け取ってもらえる「強い通貨」には果たせない役割(地域コミュニティのつながりを強くするという役割)を果たすことができるという面白いパラドックスが起きる。つまり、地域通貨はうまく軌道に乗れば、コミュニティの中のさまざまな技能や資質をもつ人たちをたがいに結びつけ、地域経済を活性化する効果も発揮する。

 さらに、地域通貨が果たしうるもうひとつの効果として、循環型のエコロジカルな地域づくりに役立つということがいわれている。こういう効果が期待できるとすると、なぜなのかを最後に考えてみよう。

 その手がかりのひとつに、イサカ・アワーのサイトの中にSean Kellyさんの<Why HOURS are ECOLOGY Money>というエッセイがある。この中で、地域通貨を導入したからといって、それだけで自然環境への負荷を費用に反映させるような価格体系をつくれる訳ではないが、地域通貨はいくつかの点でエコロジカルな地域づくりに役立つとKellyさんは言っている。ひとつには、製品の輸送のためのエネルギー消費量を減らす効果がある。というのは地域通貨の流通は、地域の中で作られた製品を地域の中で消費するように促す効果があり、その結果、製品を遠くから運んできたり、遠くに送り出す量が減少するからだ。また、地域の中で作ったものを作り方をよく知っている人が消費者に販売することが多くなるため、手間がかかるエコロジカルな製品の価値を買い手に理解してもらいやすくなる。作り手も、どんな人が買うかを知っていると、健康によい製品をつくろうという意識が強くなる。
 また、<Success Stories>の中でMichaelさんは「普通には販路がない持続可能な生活に役立つ実験的な製品が、アワーのおかげで売れるようになる」と言っている。つまり、コミュニティの中でのエコロジー重視の手作り的な技術の製品が普及しやすくなるという効果があるようだ。
 さらに、リサイクル・ショップが地域通貨の流通のひとつの核になり、中古品や再生品の流通がさかんになれば、地域の中でモノが長期間使われるようになるという効果も期待できそうだ。

 ここでたどってきたポイントから、地域通貨は、うまく導入すればエコロジカルで活気のある地域づくりのための有効な方法のひとつになると言えるだろう。

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