[特集]
No.40  和紙の魅力を現代に生かす
[写真]
『ミツマタの郷』
(「高知大学演習林Homepage」より)


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 読者のみなさん、暑中お見舞い申しあげます。夢智子です。

 ある日、うちの母が色とりどりのきれいな紙を袋いっぱい持って帰ってきた。「どうしたの?」と聞くと、ある和紙屋さんが店じまいをするんでもらってきたんだとか。へぇ、和紙って障子や襖みたいに無地で地味なものばかりかと思ったら、こんなにカラフルで模様の入ったものもあるのか。触ってみた感じもさまざまで、かなり分厚くてしっかりしたものもあれば、透けて見えるほど薄いものもある。どれをとっても、何とも言えないあたたかみがあって、とっても素敵だ。

 「せっかくだからもらってきたけど、どうやって使おうか・・・」と少々困惑気味の母。「和紙でできた便箋とか封筒は使ったことがあるけど、ただの紙っぺらをもらってもねぇ…ブックカバーでも作る?」。さっそく読みかけの文庫にカバーをかけてみると、なかなかいい感じに仕上がった。「じゃあ、あそこの猫の写真を和紙に貼って壁に飾ってみよっか」「じゃ、今度は鉢植えを和紙で包んでみる?」などなど、ちょっと考えただけでいろんなアイディアが出てきて、殺風景だった部屋に少し彩りが出てきた。「和紙ってアイディア次第でいろんなことに使えるのね」と夢智子も母もあっという間に和紙のとりこになってしまった。母が言うには、和紙は手漉きといって一枚ずつ手づくりでつくられるものだから、一枚一枚に味があるんだとか。そのお店にはきっとさまざまな味わいの和紙が並んでいたのだろう。「ねえ、そのお店に行ってもっと和紙をもらってこない?」強引に母を誘って、閉店間近の和紙屋さんに押しかけてみた。

 もうほとんどの商品が姿を消していて、物寂しい雰囲気の中、店主のおじさんが店の裏からごそごそと和紙の束を持ってきて、「これは古い和紙で店頭には置いてなかったものなんだけど、もしよかったら持っていっていいよ」と言う。見ると確かにホコリをかぶって汚れているが、最初にもらったカラフルな和紙よりももっと素朴で力強く、素晴らしい味わいを持つ紙だった。

 「この紙なら大切に使えば千年はもつよ」
 「えーっ、千年も?」
 「普通の紙は時間がたつと黄ばんで弱くなってしまうけど、これだけしっかりした和紙だと、使いこむほどに味わいが出てくるからね」
 「まるで漆器の話みたい。ありがとう、おじさん」

 こんなにいい和紙を売っているお店が消えていくなんて、何だか寂しい。おじさんの話では、和紙は手づくりなだけに決して安いものではなく、買っていくのは一部の限られた人ばかり。なかなか多くの人には受け入れられず、やっていけなくなったんだとか。確かに和紙といっても、一体どう使っていいのかわからないのが大多数の人の感覚だろう。でも、夢智子たちみたいに実際に和紙を手にしてあれこれ考えてみると、意外にもいろんな使い方を思いつくものだ。もっと和紙が普通の人にも身近な存在になって、気軽に生活の中に取り入れられるためにはどうすればいいんだろう・・・。

 そんなことを考えながら帰宅して気づいたのが、もらってきた和紙とは大違いの、机の上のプリントアウトされたOA用紙の山。常々、紙を浪費しないようにとは思いつつも、500枚入り300円の安い紙だと思うと、ついつい安心して無駄に印刷してしまう。
 地球上の資源やエネルギーを無駄にせず、上手に使うことを学んでいかなくてはならないこれからの時代、和紙と洋紙とをどういうふうに使いわけていけばいいんだろうか。

▼輸入原料に依存する日本の製紙産業

 まず現在の夢智子自身の主な紙の使い方を振り返ってみると、圧倒的に使用量が多いのがオフィスで使うコピー用紙。ほとんどのことをパソコンで処理するようになっても、まだまだ顧客にはプリントアウトしたものを納入することが多く、プリンターやコピー機で使う紙の量は膨大だ。いらなくなったプリントやミスコピーは、オフィス町内会のリサイクル箱に入れているのだが、1ヵ月でたちまちいっぱいになってしまう。リサイクルするから安心と思っていたのは大間違いで、そもそも使う紙の量を減らすことの方が重要なんじゃないのだろうか。

 そういえば、前回のWebmag39号特集「森林破壊を抑え、資源を上手に活かすには」では、日本が世界一の木材輸入国で、世界中の森の破壊に大きく関与している現実がレポートされていたっけ。その中の「熱帯林行動ネットワーク(JATAN)」の「JATANの活動の背景」には、紙類が日本の木材需要の約4割を占めるとあり、さらに98年の日本の木材輸入量の内訳を具体的にみてみると、製紙原料になる木材パルプの一段階前の形である「チップ」が約2660万立方メートルで、チップの世界の輸入量全体の7割にもなるという。やっぱり私たちが日ごろ大量に使っている紙が森林破壊に与えている影響は馬鹿にならないみたいだ。
 日本製紙連合会の「木材原料の現状」では、日本では製紙原料のうち古紙の割合が高い(55%)ことを指摘している。しかし、廃棄物になった紙が古紙として再資源化されるにしても、紙の生産量が増えれば、新たな原料の使用量も当然増えるはず。実際、林野庁の「木材需給表」を見ると、国内のパルプの使用量は、1985年から97年の間に33%も増加している。そして、パルプなどの製紙原料の輸入依存度は74%にも達しているのだ。

 製紙連合会は、製紙原料になるチップは主に製材時に出る残材や製材に不向きな低質材(細い木、曲がった木、芯の腐った木)なので、「製紙産業は木材資源の有効利用に努めて」いると主張する。しかし、「持続可能な森林管理」という視点から考えると、製紙原料になるチップのうち、どれ位が持続可能な形で管理されている森林から得られた木材を原料にしているのかを、製紙業界はもっとちゃんと明示すべきだと思う。森林を乱伐した木材を原料にしているのに、紙の原料は製材工場の副産物だから許されるということにはならないからだ。きちんとしたデータがないのではっきりしたことはわからないが、製紙原料になっているチップのかなりの部分は持続可能ではない林業から得られたものなのではないのだろうか。

 そういう点からすると、製紙原料を輸入に大きく依存しながら、国内の洋紙の生産量や消費量がどんどん増えていくという現状は、持続可能な社会への転換という方向に逆行していることは明らかだ。

 また、製紙業界は、世界の各地で植林を行っていることを環境への貢献としてよくアピールしているが、JATANのページに収録されている「植林キャンペーン----産業植林の問題点」が指摘するように、安易な植林は環境破壊につながる場合も多いので、一体どんな植林をしているのか、個々に調べてみる必要があるだろう。

▼情報の電子化と紙の消費の関係

 では、国内の紙の消費量が増え続けているのは、どういう使い方によるものなのだろうか。

 「製紙産業の概要」によれば、98年の国民一人あたりの一年間の消費量は、日本は237kgでアメリカ、フィンランド、ベルギー、スウェーデン、カナダに次ぐ世界第6位。世界平均が50.4kgだというから、その5倍近い量を日本人は消費していることになる。「紙・板紙の需要構造」によると、1985年から98年にかけて需要の割合が増えているのは、「印刷・情報用紙」(42.1% ⇒ 47.8%)であり、なかでも「印刷筆記」(24.5% ⇒ 30.0%)の増加が顕著である。どうやらオフィスでのコピー用紙や印刷用紙の使用量の増加が紙の消費が増える一番の原因になっているようだ。

 OA機器がこれだけ普及して、パソコンで多くのことを処理できるようになったのだから、本来なら紙の使用量は減るぐらいじゃなくちゃおかしいのでは? と思いつつ、夢智子自身のことを振り返ると、画面上で見たりチェックしたりするだけではやりにくくて、ついプリントアウトしてしまいがちだ。でも多分、情報のデジタル化が進んでも紙の消費量は増えていくという今のような現象は過渡的なもので、そういつまでも長続きはしないはず。今のところ、情報のデジタル化が進んでも紙の消費量が増えてしまっているのは、パソコンが「書く」ための道具としては使われていても「読む」ための環境としては好まれていないためだと思われる。

 しかし、だんだん「読む」のに快適な環境を提供するディスプレイやソフトが普及していけば、「読む」ために何でも紙にプリントアウトするという人は少なくなっていくのではないだろうか。電子化されたテキストを読みやすくするディプレイの研究はいろんな形で進められているだろうが、例えば、岡本信治さんの「解説・報告 ディスプレイ材料の基礎 その1 エレクトロルミネッセント(EL)素子」という報告によれば、「紙のように折り畳んだり丸めたりできる超薄型・超軽量で高精細な平面ディスプレイが実現できれば、将来のマルチメディア時代に、どこにでも持ち運べ、いつでも鮮やかな画像情報を受け取ることができるようになる」のだという。こういう技術がどの時点で実用化するのかまだはっきりしないけれど、現状のディスプレイとはまったく感じの違った、「読む」ための環境がいろいろな形で提供されるようになるだろう。また、印刷したりコピーした用紙が不要になったら、そのトナーを全部回収して、白い紙に戻す「再生可能な紙」といった技術も開発されつつあるみたいだ。

▼使い捨てではなく、本当に気に入った品を大事に使う

 現在の多くのオフィスでは、情報のデジタル化とともに紙の消費量も増えてしまっているが、これもやはり過渡的な現象で、電子化されたテキストを読む快適な環境を提供するソフトやディスプレイが普及すれば、紙の消費を最小限に抑える作法が当然のこととして浸透していくだろう。持続可能な社会に転換していくためには、このように使い捨て的な紙の消費をできるだけ少なくしていくという行動様式が大切になる。現状では、洋紙の多くは使い捨てられているので、まず洋紙の消費量を減らしていくのは当然のことである。

 では和紙の方はどうだろうか。持続可能な社会での消費者の行動が、使い捨て的な消費をできるだけなくし、高くても自分で本当に気に入ったものを選び、大事に長い間使うという方向に変わっていくとすると、和紙はそういう時代に合った素材として脚光をあびる可能性も大きい。

 そういえば、バブルがはじけて以来、日本では不景気だと言われつづけ、量産型のモノの豊かさだけを追い求めるライフスタイルに少し変化が出てきたようにも見える。夢智子の周りでも、なるべく要らないものは買わないで、作れるものは材料を買ってきて自分の手で作ってみるという人や、工業製品よりも値段が高いけど、天然素材の手作り製品を大事に長く使っていこうという人が増えているように思う。安くてたくさんあるものを次々に買い替えていくのではなく、多少高くついても一つしかないオリジナルなものに価値を見出して、長く大切に使う生活がもっと多くの人に見直されれば、社会全体が使い捨て型から循環型に変わっていけるかもしれない。

 しかし実際、和紙の需要が先細りになってしまっているのは、今までの業界の固定観念や硬直した流通の仕組みが障害となって、こうした新たな時代の底流に対応できていないことが原因なのだろう。和紙の新しい可能性を具体化するために、こうしたしがらみを取り払い、和紙の原点にもどって、和紙の魅力や優れた特性を捉え直し、それを現代に活かす使い方を開発していくことが必要だと思われる。

▼洋紙と較べた和紙の特性

 和紙と洋紙のそれぞれの歴史をさかのぼっていくと、中国で生まれた紙が源流になっている。紙は今から2000年以上前の中国、漢の時代に誕生した。中国ではそれ以前から麻や絹といった布に文字を記していたのだが、布から出る破片やくずから紙をつくる方法を発見し、まだ当時は布よりも下級な書写材料として使われていたらしい(「紙と歴史」)。こうして中国で生まれた紙が日本に伝わったのが600年頃のこと。日本ではそれ以後、長い時間をかけて「和紙」の技術を発達させてきた。他方、中国の紙は8世紀頃にヨーロッパに伝わり、ルネッサンスの時代に印刷技術の普及とともに、印刷機に合った洋紙の生産技術が確立されていく。そして、明治時代の日本でも、この洋紙の生産がはじまり、和紙の方はしだいに衰退して現在に至っている。

 持続可能な社会に転換していくこれからの時代、和紙は再び評価されるようになるはずだが、そのあたりについて具体的に考えるためには、洋紙と比較した和紙の特性をいったん整理してみるとわかりやすいかもしれない。

 「SUTEKIna紙」の「和紙と洋紙(ソモソモ和紙ってな〜に)」によれば、和紙と洋紙の最大の違いは、その原料と技法にあるという。和紙は楮(コウゾ)、雁皮(ガンピ)、三椏(ミツマタ)などの植物の繊維が原料で、「流し漉き」と呼ばれる伝統的な技法によってつくられるのが特徴。
『ヒメコウゾ(姫楮)』
(「Botanical Garden」より)
流し漉きとは、原料の植物繊維を漂わせた水に「ネリ」という粘液(トロロアオイなどの植物から採る)を混ぜて、スノコのようなものを揺り動かしながら、何度もすくいあげるやり方だ。この流し漉きによって、繊維がよく絡んで丈夫な紙となり、前後左右の規則的な動きが表面のなめらかさを生むなどの和紙の優れた特徴が生まれる。つまり、和紙の場合には、原料植物の丈夫な長い繊維を揺すって絡ませるという手仕事で、よく見れば一枚ごとに違ったもち味の紙ができるのだ(「素敵な和紙の作り方」)。

 他方、洋紙の生産工程では、高速の抄紙機を回転させて均質な紙を生産するために、木材の繊維をすり潰して粉末のようにして使う(杉原商店「和紙の質問箱」/「叩解」の和紙と洋紙の違い」)。こうして比べてみると、洋紙が用途に合う均質な品質を、低コストで生産するという要求に応じた素材の加工方法を採用しているのに対して、和紙は優れた天然素材の特性を引きだしていくような作り方をしていることがわかる。

 さらに、洋紙は紙の密度を上げたり、真っ白な仕上がりにするために多くの薬品を用いて繊維をいためたり、黄ばんだりしやすく、また酸性のものが多いため100年ほどしかもたないが、天然素材でつくられた和紙は優れた耐久性を持っている。和紙の中にも、化学薬品を使って、時間がたつと黄ばむものがあるけれど、そうでない和紙は逆に時間とともに光線にあたって白くなる性質がある。ということは、和紙はWebmag特集14号「縄文の漆 / 漆の未来」でとりあげた漆器などと同じように、長く大事に使うことによって、時間とともに味わいが出てくるものだといえる。

『ヒメコウゾ(姫楮)』
(「Botanical Garden」より)
 和紙の原料となる植物については、「和紙 -その多種多様な世界-」に解説があるが、コウゾはクワ科、ガンピ、ミツマタはジンチョウゲ科の植物でいずれも独特な持ち味があることがわかる。また、この中のコウゾとは、ヒメコウゾとカジノキの雑種だそうで、「照葉樹林文化圏の世界 / メコン圏に自生するカジノキ」に書かれているように、中国南西部を中心にした照葉樹林文化圏には、カジノキを使った手漉き紙の技術が根をおろしている。そして、中尾佐助さんによると、ネパール、ブータンではガンピ、ミツマタも手漉き紙の原料として使われているというのだ。こうした点からみると、「和紙」の文化の土台はどうやら照葉樹林文化圏にあると考えた方がいいようだ。

▼生活の全般に使われてきた和紙

 これからの時代の和紙の新たな使い方を考えるためには、これまで和紙がどのような使われ方をしてきたのかという点も整理しておいた方がよいだろう。

 中国で紙が最初につくられるようになったのは、写経に使うことが主な目的だったとされている。つまり、紙がそもそも何のために開発されたかと言えば、重要な情報を文字で記して長く保存するための記録媒体だったというわけだ。こうした記録媒体としての紙の役割をベースにしながら、日本では平安時代の王朝文化、特に和歌の贈答などと結びついて、多彩な美しい和紙がつくられるようになっていく。佐野晃夫氏の個人的な研究論文「和紙の歴史」にそのあたりの変遷が詳しく書かれている。平安貴族たちは雁皮から作られた「薄様」の紙を重宝したそうで、特に宮中の女性たちが色の違う色紙を重ねて歌を書き記し、季節にふさわしい花を添えて贈ったりする優雅な流儀も生まれた。その他、染めた繊維を流して雲のように見せた紙や墨流し模様を入れた紙、紙をずらして重ねた「切り継ぎ」など高度に趣向を凝らした紙ももてはやされた。その後の武家社会になると雅やかな使い方に代わって、扇一本と和紙一束をセットにして贈り物にするといった礼式も生まれた。このように、和紙は貴重品として、歌や手紙など心を通わせる贈り物や、敬意や謝意を表す贈り物というギフトの一面も発達させてきたことがわかる。

 こうして、贈答のコミュニケーションと結びついて、さまざまな美しい和紙の製法が発達し、今度はそうした多彩な製法が活かされて、和紙の用途は幅広い分野に広がっていく。そして江戸時代になると、和紙は庶民の生活になくてはならない素材の一つになっていった。「和紙のある暮らし」に紹介されている「暮らしの中の和紙」をみると、衣食住などのあらゆる生活場面で和紙が活用されていたことに改めて驚かされる。

▼和紙の新しい用途開発------和紙のカーテン

 江戸時代の生活では、和紙の特性を巧みに活かして、あらゆる分野で和紙が使われていたが、明治以降の近代化の過程で生活様式が大きく変化し、生活場面での和紙の用途はしだいに廃れてしまった。一度は廃れてしまった和紙を、これからの時代に再び蘇らせるためには、和紙の優れた特性を生活の中のどんな分野にどう活かせばいいのか、新たな形で用途を開発していく試みが重要になる。

 Heimaさんの「和紙の部屋」に紹介されている、「和紙のカーテン」づくりはそうした試みのひとつとして注目される。「制作模様」によると、Heimaさんは制作物を和紙のカーテンに絞り込む過程で、和紙の次のような特性に着目した。

  1. 吸湿効果に優れている
  2. 透過した光を目に優しいものに変える
  3. 有害な紫外線から肌を守る
  4. シックハウスの原因である化学物質やホコリ、ダニを吸着する
  5. アンモニアなどを吸着し脱臭する

 「えーっ、和紙ってダニもとるの?」と驚く人も多いのでは。その仕掛けはつまりこうだ。和紙を構成する繊維はセルロースが主成分。このセルロース分子が水素結合によって、湿気の度合いに応じて水分子を吸ったり吐いたりすることで湿度を調節する。また、この繊維は非常に大きな表面積と微細な空間を持っていて、この空間に化学物質や臭い物質を吸着し、さらにマイナスの電気を帯びやすいことからホコリやダニまでも吸着できるのだ(「和紙の吸湿効果」)。その他、和紙は繊維が複雑に絡み合っているから、光を乱反射して紫外線をカットしたり、目に優しい波長の長い光だけを通す働きもある。

和紙ののれん---編集部の
ワークショップで制作
 和紙の機能を障子や襖の代わりにカーテンに活かそうというHeimaさんのアイディアはなかなか鋭い。これなら洋風の部屋にもピッタリ合うし、化繊のカーテンなんかよりずっとカラダにも良さそうだ。「人間住宅−環境装置の未来形−」にもあるように、和紙素材は現在シックハウスなどの化学物質による人体への影響が問題となっている住宅分野で、人体に優しい住宅内装材として見直され始めているという。

 和紙がこんなにスゴい機能を持っているなんて、まさに目からウロコが落ちる思い。かつての日本人は和紙の特徴をよく知って、住まいや生活用品にうまく活用する知恵を持っていたんだなぁ。でも、カーテンづくりを行なったHeimaさんによれば、問題は汚れなのだとか。確かに、障子や襖なら張り替えればいいが、和紙のカーテンとなると布のように洗うわけにはいかない。そうなると、こまめにホコリをはたくなどの手入れはもちろん大事だが、汚れを「時間とともに出る深みや味わい」に見せていく工夫や何が何でも真っ白であることを求めない使う側の感性も必要だ。

 おじさんがくれた古い和紙は、まさにその可能性を感じさせる味のあるものだった。いい和紙ほど長持ちするはずなので、そのよさに見合った使い方を考えて、漆や革のように長く使うことによる味わいを大切にすることが和紙とつきあうポイントといえるかもしれない。

▼電子テキストとプリンターで和紙の本をつくる

 Heimaさんの和紙のカーテン制作は、従来、障子や襖などのインテリアに用いられてきた和紙を現代的に蘇らせようとする優れた試みだ。でも、もっと一般の人に気軽に和紙を使ってもらうためには、インテリアだけでなくいろんな分野について、和紙の現代的or未来的な使い方を発信していくことが必要だ。今回、和紙の素晴らしい特徴や可能性を知ったからには、夢智子としても是非その一翼を担ってみたい。というわけで、とりあえずWebmag編集部のみんなに提案して、ミニ・ワークショップを開いてみることにした。

 ワークショップでは、夢智子の和紙アイテムのほか、沖縄の芭蕉や月桃から作られた珍しい紙などをみんなが持ち寄ってくれて、実にさまざまな表情の和紙たちが集まった。その中から、まず正方形に近いかたちをしていて、耳の部分が自然なぎざぎざを残している「八重山紙」にみんなの注目が集まった。この八重山紙は一枚一枚微妙に色合いが違い、素材の色がそのまま活かされた質感のある仕上がりの紙。これは和紙の「流し漉き」とは違って、中国で紙が生まれた時以来の「溜め漉き(ためすき)」でつくられたという。

 さて、Heimaさんは、現代のインテリアに和紙を使うことを検討しているので、別の大事な分野として、これからの生活の中のコミュニケーションで和紙をどう活かせるかをみんなで考えてみることにした。

 現代的な和紙の使い方という点では、イサム・ノグチの「あかり」をはじめ現代アートや工芸に和紙を使う試みはさまざまな形でなされている。けれども、生活の中で和紙を活かすには、アートや工芸作品をつくるだけではなく、もっと誰れもがその気になればできることで、和紙の持ち味を活かしたコミュニケーションの形を考える必要がある。

 みんなで意見を出しあってみると、和紙というと書道や日本画に使うなど決まりきった固定観念にとらわれてしまいがちなことに気づき、もっと自由にこの素材感を活かす使い方を探ってみようという話になった。いろんなアイデアが出たが、一番簡単で、しかも広がりがありそうなのが、和紙にプリンターを使って印刷するというコンセプトだ。

 (あとで発見したのが「電脳浮世絵師 岡本辰春の世界」。この方も、同じ問題意識をもって作品を作っていることがわかった)

 みどりちゃんから出たのは、デジタル化された写真を和紙に印刷してみるというアイデア。例の八重山紙に現代彫刻の写真を印刷してみると、インクののりが非常によく、やはり紙は情報が書き込まれることで、質感がより確かなものになることがよくわかった。自分で撮った写真で気に入ったものを和紙にプリントアウトすれば、心のこもった贈り物になる。もっとも、プリンターの機種によっては、厚さや形が不揃いな紙はひっかかってしまい故障することもあるので、用心しながら紙とプリンターの相性を確かめた方がいい。

 なんだかんだ意見を出しあっているうちに、みんなが最終的に到達したピンとくるアイデアは、インターネット上にある電子化されたテキストを和紙にプリント・アウトして、一冊しかない本をつくってみるというものだ。つまり、これからの時代、本は電子ブックを持ち歩きやすいディスプレイで読むスタイルが当たり前になっていくとしても、これだけは紙の本として持っていたいという愛読本が誰でもあるはずだ。そういう本は、和紙を使って自分の手でつくって、和紙の質感を楽しみながら読めるようにする。あるいは世の中に一冊しかない本を、心のこもったギフトとして贈るのも素晴らしいだろう。

 そこで、編集スタッフの間で人気の高い、宮沢賢治の「鹿踊りのはじまり」のテキストを使って本を作ることに決定。こういう使い方に合いそうな和紙を紙舗・直(東京都文京区千石)にみんなで買いに行って、やや粗いタッチのコウゾ紙を選んだ。クリームがかった色だが、これがコウゾの素材のもともとの色だそうだ。インターネット上にあった電子テキストの「鹿踊りのはじまり」は現代かなづかいになっていたが、せっかくなので旧かなに訂正。どんなフォントを使うかで雰囲気が大きく変わるものだが、今回はやわらかな感じの隷書体を使ってみた。ここまできたら綴じ方も和にこだわろうということになり、和綴じの解説をしてくれているサイト(サードアベニュー倶楽部の製本術入門)を頼りに何とかそれらしく綴じて見事完成!

 仕上がりは、ちょっとシブ過ぎではないかという声もあったが、これを贈り物にもらったら、宮沢賢治の愛読者でなくても読んでみたくなる、そんな存在感のある世界でたった一つの本ができあがった。

 そういえば、夢智子の本棚にもたくさんの書物が並んでいるが、その中には二度と日の目を見ることのない可哀想な本たちも多い。これからは、一度読んでおしまいの本はなるべく電子書籍を購入し、気に入ったものや大切にとっておきたいものだけ、こうして和紙にプリントアウトしていくという新しい読書・蔵書のスタイルもいいかもしれない。オリジナル和紙本が並ぶ本棚は、なかなか贅沢なライブラリーといえるのではないだろうか。今回ミニ・ワークショップで行なった本づくりは、これまでの夢智子の紙の使い方を見直す上で、重要なことを気づかせてくれたように思う。

 和紙を実際に手にして、現代の生活に生かした使い方を考えてみる――いままでまったく身近ではなかった和紙が、急にいろんな可能性を秘めた紙に見えてきた。へんな固定観念は捨てて、使いたいように使えばいいのだ。手にしてみれば、今まで使ってきた無表情な紙とは違って、一枚一枚のあたたかさや素材感を感じとれるはず。一枚一枚の表情を活かして何ができるのか考えてみるのは実はとても楽しいことである。夢智子も、みんなで和紙を活かした使い方を考えるワークショップの続きをもっとやってみたくなってきた。

 みなさんも是非一度和紙を買って、実際に触れながら、オリジナルの使い方を考えてみてはいかがだろうか?

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文中で紹介したホームページ

  • Webmag特集14号 縄文の漆 / 漆の未来

  • Webmag39号特集 森林破壊を抑え、資源を上手に活かすには

  • 熱帯林行動ネットワーク(JATAN)
    (http://www.jca.apc.org/jatan/index.html)

  • 日本製紙連合会
    (http://www.jpa.gr.jp/index.htm)

  • NHK放送技術研究所
    (http://www.strl.nhk.or.jp/toppage.cgi)

  • 王子製紙株式会社:紙と森のエトセトラ
    (http://www.ojipaper.co.jp/index.html)

  • SUTEKI発見
    (http://www.sam.hi-ho.ne.jp/row-t/frame157951.html)

  • 杉原商店
    (http://www.washiya.com/index.html)

  • 関西国際広報センター
    (http://www.kippo.or.jp/index_j.htm)

  • メコンプラザ
    (http://www.mekong.ne.jp/)

  • 和紙の部屋
    (http://web3.incl.ne.jp/design/washi1.html)

  • INAX CULTURE INFORMATION
    (http://www.inax.co.jp/Culture/index.html)

  • 電脳浮世絵師 岡本辰春の世界
    (http://village.infoweb.ne.jp/~tatuharu/index.htm)

  • サードアベニュー倶楽部
    (http://www.3ac.co.jp/index.html)


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