[特集]
No.46 
 自然エネルギーと自立的な地域づくり
[写真]
風車の組み立て
(日本グルントヴィ協会より)

[マーク] 特集編集部への発信 [マーク] 特集編集部との交信録 [マーク] バックナンバー

 1997年に京都で開かれた地球温暖化防止国際会議では、温室効果ガスの大幅な削減を主張するEUとそれに反対するアメリカが激しく対立した。EUがCO2をはじめとする温室効果ガスの大幅な削減を主張した背景には、地球温暖化の進行に対する危機感とともに、温室効果ガスの削減を実現する自信があったからだと考えられる。
 EUの再生可能エネルギー(Renewable energy)の普及プランを調べてみると、温室効果ガス削減への自信はどんな裏づけをもっているのかがわかる。EUでは、エネルギー供給の6%である再生可能エネルギーを2010年には、12%に引き上げるという目標を設定し、これを実現するための行動計画をつくっている。この再生可能エネルギーの普及計画を裏づける実績があり、この計画に自信があったから、温室効果ガスの高い目標設定をすべきだという主張ができたのだ。
 そして、再生可能エネルギー普及の実績は、地域の資源を生かす自立的な地域づくりと不可分のつながりをもっているようだ。こうした、再生可能エネルギー利用と自立的、内発的な地域づくり関連を今回は探ってみることにしよう。

▼EUではバイオマスに大きな役割

 WebMag31号特集では「里山再生と炭焼き&木質発電」をテーマにした。里山はもともと薪炭林として利用することによって維持されてきた生態系なので、利用せずに長い間放置すると生態系が変化し、里山に棲んでいた生き物が生息する環境がなくなってしまう。里山の生態系を再生するには、里山の木を時々伐採する必要があり、そのためには、木を資源としてうまく生かす利用方法を開発しなければならない。炭焼きを再生するのはその方法のひとつだが、炭焼きの現代版と言える、木質バイオマス発電を始めるという構想は発展性があって面白い。
 里山再生の活動のセンターとしての役割を果たしている「里山研究会」のサイトには、そうした問題意識の展開の過程が記されている。里山研究会の代表の田端英雄さんが、里山の間伐材を使った木質発電という考え方を知ったのは、島根大学の小池浩一郎さんが里山研究会で行った報告を通じてだったことがこのサイトの記録からわかる。
 そして、WebMag31号特集を書いた後に、小池浩一郎さんのバイオマス・エネルギーについての講演を聞く機会があった。この講演を聞いて驚いたのは、EUのなかり大胆な再生可能エネルギー普及計画において、バイオマス・エネルギーが主役と言える大きな役割を与えられていることだった。
 EUでは、1995年の時点でエネルギー供給の約6%である再生可能エネルギーを2010年には12%に引き上げるという目標を立てているが、この間に増加する再生可能エネルギー供給の約7割をバイオマス・エネルギーが占めるというのだ。
 このプランを具体的に知りたいと思い、EUのサイトで "ENERGY FOR THE FUTURE: RENEWABLE SOURCES OF ENERGY White Paper for a Community Strategy and Action Plan" (再生可能エネルギー白書) を探して読んでみた。

▼「EUの再生可能エネルギー普及戦略

 「再生可能エネルギー白書」表-2 によると、1995年の時点で114.7Mtoe だった再生可能エネルギーを2010年には、238.1Mtoeに増やすという目標になっている(Mtoe=10,000,000Gcal=11630Gwh)。そして、バイオマス・エネルギーは、この間に44.8Mtoeから135Mtoeに約3倍になると想定されている。そうすると、1995年から2010年の間の再生可能エネルギーの増加分の73%をバイオマスが占めることになる。この目標が達成されると年間のエネルギー供給量の8.3%がバイオマスになる。

 再生可能エネルギーというのは、再生不可能な石油や石炭、天然ガスなどの化石燃料に対比される概念だ。化石燃料は、遠い過去の生物の遺体が堆積してそれが炭化水素になったものである。きわめて長い時間をかけてつくれらた化石燃料を掘り出して短い期間の間に大量に燃焼しているために、大気中のC02の増加が進み、地球の温暖化が進むという大きな問題が起きている。そこで、化石燃料の消費を大幅に減らし、エネルギー消費量を減らすとともに、化石燃料をバイオマス、風力発電、太陽熱、太陽光発電などの再生可能エネルギーに置き換えていくことが必要になっている。
 化石燃料の炭素はもとを辿れば、遠い過去に地球に注がれた太陽エネルギーを使って植物が大気中のC02から炭素を固定したものである。長い時間をかけて堆積した化石燃料をどんどん掘れば埋蔵量が減っていき、再生不可能だ。しかし、薪炭林の里山をもち、太陽エネルギーとCO2から有機物を生産するだけの分量の木を毎年伐採し、炭をつくって燃料にする場合を考えると、里山には変わらない木の量が維持されるから、こうした炭は再生可能なエネルギーと言える。
 また、炭の製造過程や消費の過程でCO2が発生するが、他方で、伐採した分の里山の木が成長する過程でほぼ同じ量のCO2を吸収するので、化石燃料の燃焼と違って大気中のCO2を増加させることにはならない。
 バイオマス・エネルギーとは、この炭のように、光合成によって植物のうちに蓄えられた有機物やそれを食べた動物やその排泄物の有機物から得られるエネルギーである。
 
 1995年から2010年の間のEUにおける約90Mtoeのバイオマス・エネルギーの供給増はおおまかに、(1)農業、林業、木材加工の廃物の熱利用、発電: 30Mtoe、(2)畜産の糞尿、下水処理場などによるバイオガス:15Mtoe, (3)燃料穀物:45Mtoeといった構成になるとされている。
 「 (3)燃料作物」は栽培植物から石油代替燃料を製造するなどのプロジェクトで、現在の石油価格を前提にすると、競争力に乏しい。しかし、石油依存度を低くするには、燃料植物の技術開発を支援する必要がある。需要拡大とともにコストが下がり、石油にかかる環境税がEUで普及すれば、燃料作物も競争力をもつようになるという判断のようだ。
 それに対して、「(1)木質バイオマスや農業廃物利用」、「(2)バイオガス」については、これまでに豊かな経験の蓄積がなされていて、その経験をもとに、EU内での普及を加速させることができるという自信が、2010年までに再生可能エネルギーを倍増させるプランの裏づけになっているように見える。

 このようにEUの再生可能エネルギー普及プランでは、バイオマス・エネルギーにきわめて大きい役割が与えられている。他方、日本では、再生可能エネルギーにほぼ対応するものとして自然エネルギーという言葉が使われることが多く、最近ようやくマスメディアでも自然エネルギーについてとりあげられる機会が増えてきている。しかし、新聞でも「太陽光発電、風力発電などの自然エネルギー」という書き方になっていることが多く、バイオマス・エネルギーはマイナーな扱いだ。
 EUと日本の間のバイオマス・エネルギーについての関心のギャップはいったい何を意味するのだろうか。ここには、さまざまな大事な問題が含まれていると思われる。

 また、「再生可能エネルギー白書」"2-3Reinforcing Community Policies" から、EUでは各国の先行する分野の経験を踏まえて、再生可能エネルギーを普及させるための戦略的な取り組みが進みつつあることがわかる。再生可能エネルギーの普及を思い切って推進することによって、温室効果ガスの大幅削減が可能になるだけでなく、再生可能エネルギーをめぐる国際競争においてEUの優位を確立でき、また、就業機会の拡大をはかることができる。このように、再生可能エネルギーの普及についての戦略的な位置づけを行うとともに、再生可能エネルギーの普及を加速させるためのさまざまな方法の組み合わせという点でも、戦略的な方向づけがなされている。
 他方、日本政府のエネルギー政策はあいかわらず原子力が中心になっていて、自然エネルギーに本気で取り組もうとはしていない。こうしたEUと日本の間の自然エネルギーに対する取り組みのギャップが何を意味するのかについても、よく考えてみる必要がある。

デンマーク トュイホルムの風車群日本グルントヴィ協会より)


▼木質エネルギー利用の先進国スウェーデン

 EUでは、再生可能エネルギーの普及の加速に自信をもっているのは、再生可能エネルギーの自国に適した分野で先行的に普及策をとってきた試みが軌道に乗り、技術が成熟し、需要の拡大とともにコストも下がり、かなりの分野が本格的な普及段階に入っているためだ。
 EUのうちで、エネルギー供給全体の中で再生可能エネルギーのシェアがもっも高いスウェーデンでは、1995年にすでに25.4%に達している(「再生可能エネルギー白書」表-1. )。 "SWEDEN AND THE GROWING ENERGY MARKET" によると、林業や木材加工産業が盛んなスウェーデンでは、木質バイオマスを中心にバイオマス・エネルギーの普及を他の国に先駆けて進めてきた。地域の集中暖房の燃料を石炭や重油から林業や製材所の木屑などに転換したり、家庭用の石油ストープをやめて樹皮やおが粉を固めた木質ペレットを燃料にするストープにするなど、化石燃料をバイオ燃料に置き換える動きがこの15年間くらいに劇的に進んだ。こうしたバイオマスの熱利用の浸透の次の段階として、バイオマスによる発電の普及が進む段階に入っている。
 地域の中にバイオマス発電所をつくることができると、樹皮や木屑、おが粉などを燃料にして発電し、その廃熱も利用するコジェネレーション(電熱併給)が可能になるため、高いエネルギー効率が実現できるようになる。「再生可能エネルギー白書」"3-2-3.10,000 MWth of biomass installations" では、こうした発電+熱利用の設備の普及を戦略的なテーマのひとつとしてあげている。

 スウェーデンでは、どんな経緯でこのようにバイオマス・エネルギーの普及が起きえたのだろうか。
 バイオマス・エネルギーの利用が重要なテーマとなり始めたのは、オイル・ショックの経験によってだと言う。スウェーデンでも、石油依存度がきわめて高かったため、オイル・ショック時の石油価格の高騰の影響は大きく、エネルギー自給率を高める必要が痛感され、バイオマス・エネルギーの利用に関心がよせられるようになった。そして、環境問題への意識が高まるとともに、その視点からもバイオマス・エネルギーの普及が重要だという認識が共有されるようになっていった。
 
 さらに、バイオマス・エネルギー利用を促進する政策としてもっとも効果的だったのは、化石燃料の社会的費用を価格に組み込む税制の採用だった。上で触れたように石油や石炭は、遠い過去のきわめて長い時間をかけて堆積した生物の遺体からできた炭化水素であり、こうした化石燃料を掘り出して短期間に大量に燃焼しているために、空気中のCO2が目立って増加し、地球環境のバランスが崩れている。しかし、石油や石炭の価格は、主に生産や流通の費用からなり、化石燃料の消費がもたらす環境への悪影響によって発生する社会的費用を含んでいない。そこで、化石燃料の消費に環境税をかけ、化石燃料の価格にその社会的費用を組み込み、消費を抑制しようという考え方である。
 たとえば1995年のデータ("FUEL PRICES, INCLUDING CHARGES AND TAXES" )によると、税を除くコストの比較では石炭(0.8c./kwh)の方が木質燃料(1.5c./kwh)より安いが、石炭にはCO2税などがかかるのに対して木質燃料にはかからず付加価値税だけなので、税を含むコストは木質燃料(2.0c./kwh)の方が石炭(4.0c./kwh)よりかなり安くなる。こうした税制の下では、当然、再生可能エネルギーの需要が拡大する。

▼熱利用普及の鍵となった木質ペレット

スウェーデン製の
木質ペレットストーブ
 スウェーデンでは、バイオマスの熱利用が広く普及して、バイオマスによる発電+熱利用を促進する段階に入っているが、熱利用の普及が進む際に鍵となった技術のひとつが、樹皮やおが粉を乾燥させて固めてつくる木質ペレットだ。水分の少ないペレット状にすることによって、輸送をしやすくなるとともに、燃焼温度を高くできるので、ダイオキシンなどの発生を防ぐことができる。
 じつは、木質ペレットの研究と事業化は、日本でもオイル・ショック後の時期に林野庁によって試みられたことがあるのだという。しかし、石油の価格が下がるとともに、こうしたバイオマス・エネルギーは石油と比べてコストが高く競争力がないという判断からか事業化の支援が打ち切られてしまったという。この背景には、スウェーデンの場合と違って、日本政府の政策はエネルギー自給率を高めることをあまり重視しなかったという事情がある。この時期の日本では自動車や家電などをはじめとする工業部門の生産性の上昇が早く、工業製品の輸出が増加していくので、石油、木材、食料などの資源の輸入依存度が高くなるのは当然という政策的な判断がなされたのだろう。そして、日本では、石油にだけ依存せずに、エネルギー供給の多様化をはかるために原子力発電に大きな力をいれる政策がとられる。他方、木質ペレットなどバイオマス・エネルギーは、マイナーなものとして見捨てられてしまった。

 他方、スウェーデンでは、1970年代には原子力発電所の建設が進むが、1980年には原子力発電所の段階的な廃止をきめ、再生可能エネルギーの普及に力が入れられることになった(飯田哲也「持続可能な社会へ向かうスウェーデンの新エネルギー政策」)。原子力発電は巨大技術であるのに対して、バイオマス関連の技術は、木質ペレットやペレット・ストープ(たとえばPellx)などのようにバイオマス関連の技術は草の根的な色彩が強い。木質ペレットは技術としては薪を暖炉で燃やすのとそれ程違わないが、燃料を乾燥しペレットの形に改良することによって、輸送が容易になり、燃焼温度を高くでき、ペレット・ストープは、操作が簡単で、効率的なものになっている。バイオマス・エネルギー支援策は、このように、草の根的な技術改良の積み重ねを促す効果をもち、低コストで使いやすい技術が確立されたのだと思われる。

▼草の根的な技術から育ったデンマークの風車発電

 デンマークも、積極的に再生可能エネルギーの普及策をとってきた国であり、とくに風力発電についてはもっとも先進的な技術をもつ企業が育っている。デンマークでは、2020年までに、風力やバイオマスなど再生可能エネルギーで、エネルギー供給の6割をまかなえるようにするという計画をたてている(「持続可能なエネルギー未来への選択」)。そして、注目すべきなのは、このデンマークの風力発電も草の根的な技術として育ってきたという点だ。
 橋爪健郎さんの「民衆運動としての風車発電」によると、デンマークでは、1983年に原子力発電に反対するグループがフォルケセンターを創設し町工場の職人とともに風車発電の製作をはじめた。そしてフォルケセンターは、開発にともなうノーハウや設計図を公開したため、多くの中小メーカーに製造が広がり、技術開発が進み、個人所有の風力発電所が多数つくられ、化石燃料の発電所と同程度までコストが下がってきたのだ。
風車の組み立て日本グルントヴィ協会より)
 またアマチュアの風車発電オーナーの立場で風車発電の普及の活動を行ってきたデンマーク風車発電協会も、風車の技術改良に大きな役割を果たした。協会では、各メーカーの風車の発電実績の統計を共有し、風車オーナーがどの風車がいいかを選択する手がかりを提供するとともに、メーカーの技術改良を促してきた。
 このように、EUでは再生可能エネルギー技術の離陸過程で、草の根的な技術改良のネットワーク化が大きな役割を果たしていることがわかる。

 日本でも、バイオガス・キャラバンの桑原衛さんが、小規模、中規模のバイオガス・プラントを普及させる活動を続けている。桑原さんは余分なものは全部省いてなるべく単純な仕組みにし、部品もなるべくユーザーが自分で購入するようにして、コストを最低限にする。そして、小規模プラントでユーザーが自分なりに工夫しながら、勘どころを体得することから始め、それをもとに中規模プラントの計画の段階に入っていくという方法をとる。この桑原さんのバイオガスは、草の根的な技術のひとつの典型といえるだろう。
 桑原さんが住む埼玉県小川町(幸田シャーミンのエコインタビュー第5回、金子美登さん)では、小規模プラントがかなり普及し、その経験をもとに中規模プラントの計画が進みつつある。

▼地域の資源の循環的なつながり

 こうした再生可能エネルギーをめぐる経験から明らかになってくる大事な点は、再生可能エネルギー利用は自立的、内発的な地域づくりと密接に結びついているということだ。「再生可能エネルギー白書」"2-3-5.Regional Policy " でも、再生可能エネルギーの利用促進が、さまざまな形で遠隔の過疎地域の発展に役立つことを強調している。
 第一には、地域の中の未利用資源を活用し、内発的な発展を促す。第二には、地域の就業機会を拡大する。第三には、エネルギー供給の面での他の地域への依存を低下させる。第四には、地域に根ざす技術開発や創意工夫が発揮される。といったことが指摘されている。
 例えば、従来は棄てられていた林業や木材加工の残材を使って発電をする場合には、地域の外から買う電力をそれだけ減らし、また、地域の中の仕事を増やすことができる。時には、そうした再生可能エネルギー利用によって地域内でのエネルギー需要をまかなえるだけでなく、余ったエネルギーを地域外に販売することができるようになる。
 再生可能エネルギーには、身近な未利用資源を生かす小規模な設備を個人やグループ、小さな事業体が自ら設置するのが容易なものが多い。そのため、住民たちがそれぞれいろいろな工夫をして、それらが影響しあい結びついて大きな構造変化になっていくという展開が可能だ。
 「再生可能エネルギー白書」"1-4.Preliminary Assessment of some of the Costs and Benefitsでは、再生可能エネルギーの中では、バイオマス・エネルギーは、化石燃料に変わるエネルギー供給の面で少ない投資額で大きな成果をあげられる技術として位置づけられている。これが、2010年までに再生可能エネルギーのシェアを12%に引き上げるという目標を実現するというシナリオで、バイオマス・エネルギーに大きな役割が与えられる理由になっている。
 つまり、バイオマス・エネルギーの技術は、労働集約的であり、地域内での就業機会拡大の効果も大きい。したがって、2010年にかけてバイオマス・エネルギーの供給を3倍にするという思い切った普及策は、農山村地域でのかなり大きな就業機会拡大の効果をもつと思われる。

▼日本でのバイオマス軽視と地域の空洞化

 バイオマス・エネルギーに大きなウェィトをかけたEUの再生可能エネルギー推進策は、このように自立的、内発的な地域発展の促進という動きと深く結びついている。このような点を踏まえると、日本とEUとの間のバイオマス・エネルギーの位置づけのあまりに大きなギャップから何を読みとれるかが、明らかになる。

 日本政府は、相変わらず原子力発電をエネルギー政策の中心にすえているが、原子力発電所と立地する地域の関係は、上で述べたバイオマス・エネルギーと地域の関連と対照的である。原子力発電所は地域の中に異質な植民地のような地帯をつくり、地域の資源の循環的なつながりを分断してしまう。これまでの日本の中央官庁がとってきた政策の多くは、、地域内の資源、人、仕事の循環的な結びつきを分断し、地域を空洞化する効果をもつものがほとんどだったと言えるのではないか。その空洞を不要な道路やダムなどをどんどん作る公共事業によって、一時的に覆い隠してきたにすぎない。
 こうした方向の政策を進めてきた人たちが、地域の中の資源、人、仕事の循環的な結びつき再生させるような草の根的な活動に信頼を寄せないのは当然のことと言える。その結果、日本政府のエネルギー政策では、バイオマス・エネルギーの普及にあまり期待をしていない訳だ。
 
 しかし、国や地方自治体の財政事情の悪化が深刻になり、無駄な公共事業を続けることは不可能になりつつある。そうなると、覆い隠されていた地域の空洞化が露骨に表面化してくる。そして、地域のコミュニティや産業を活性化するには、地域の内発的、自立的な発展をめざさなければならないことが、ますますはっきりしていくだろう。そのためには、バイオマス・エネルギーをはじめとする再生可能エルネルギー利用の促進が有効な戦略となる。

▼100%再生可能エネルギーの暮らしの実験

 EUの「再生可能エネルギー白書」では、2010年に再生可能エネルギーのシェアを12%にするという目標を実現するために、突破口をつくるさまざまなキャンペインが提案されている。そのなかで、きわめて興味深いもののひとつは、エネルギー供給を100%再生可能エネルギーにするパイロット・プロジェクトを100の地域、都市で始めるというものがある("Integration of Renewable Energies in 100 Communities ")。この100の地域、都市は、複数のビルからなる1街区やひとまとまりの郊外住宅地、農村、山村、リゾート地域、島などさまざまなタイプのところを選ぶという。
 日本で今後、再生可能エネルギー利用にへの本格的な取り組みをひとつの柱にして、自立的な、内発的な地域づくりを進める際には、こうした試みがよい手がかりになると思われる。

 化石燃料を使わずに、100%自然エネルギーで暮らすには、どうすればいいか。インターネット上にも、そういう実験的なプロジェクトのサイトがあった。桜井美政さんたちがニュージーランドのカイワカ村で進めているプロジェクトについての「自然と共生する実験住宅」というサイトだ。このプロジェクトの基本になっているのは、つぎのような考え方だ。
「(1)化石エネルギーを使わないで、自然のエネルギーのみを集めて生活する。
(2)その住宅が使命を終わっても、地球に優しく帰ってゆく材料をその地から得て使う。
(3)生活から排出する汚染物は源で断ち浄化する。
(4)有機農法に基づく農法で自給自足の食料生産を行う。」
 自然エネルギーは、風車発電糞尿や野菜屑などによるバイオガス、太陽エネルギーの熱利用、育成した雑木林からの木質燃料などから得る。

 この住宅では、地下室の温度が井戸水と同様に、夏は涼しく、冬は暖かくなることを利用し、地下室の空気が上の階に上がっていく仕組みで温度調整をしている(「地中熱利用による室内の空調」)。屋根に近いところに二重ガラスのソラールームをつくり、夏の暑い時には、この部屋が暖まって煙突から空気が外に出ていき、その分、地下の冷たい空気が上がってくる。他方、冬は、地下の温度の高い空気が上の階に上がってくる。こうした空調で、室内の気温を夏は20度前後、冬は10度前後に保つことができるという。ソラールームの床に水槽があり、この中の温水をシャワーや皿洗いに使う。
 調理用のエネルギーは、バイオガス、ソラークッカー、ソラーオーブン(「太陽エネルギー収集による調理器具」)、風車の電力が使われる。天気のいい日にはソラークッカーでコロッケを揚げ、風の強い日には電気鍋ですき焼きをつくるといったように、その日の天候に合わせて調理をすることになる。夜の電灯や冷蔵庫の電力は、風車発電でまかなう。
 このように、100%自然エネルギーで暮らすそうとすると、さまざまな工夫を組み合わせることが必要になる。こうした試行錯誤の中から、化石エネルギーに依存した生活では気づかなかったさまざまなの発見があり、多くのことを学べるだろう。
 
 桜井さんたちの実験はニュージーランドで行われているが、例えばもう少し広い地域のパイロット・プロジェクトを日本の山村や離島などで行い、会員になれば、100%自然エネルギー村のプランづくりに参加でき、開村してから暮らしを体験できるといった仕組みをつくれば、ある程度の出資金を払ってパイロット・プロジェクトを支援する会員になってもいいという人も少なくないだろう。
 森林と親しみながら、その森林から得られた木材で自分の家を建てたいという人たちも次第にでてきているので、そうした森林との結びつきをもちたい都市住民を会員にした山村のリゾート地の中に、こうした100%自然エネルギーの住区をつくっていくというプランもありうるだろう。

[マーク] 特集編集部への発信 [マーク] 特集編集部との交信録 [マーク] バックナンバー


文中で紹介したホームページ

  • 日本グルントヴィ協会
    (http://www.asahi-net.or.jp/~pv8m-smz/
                    home1.html)

  • WebMag31号特集「里山再生と炭焼き&木質発電」

  • 里山研究会
    (http://homepage.mac.com/hitou/satoyama/)

  • ENERGY FOR THE FUTURE: RENEWABLE SOURCES OF ENERGY White Paper for a Community Strategy and Action Plan(再生可能エネルギー白書)
    (http://europa.eu.int/en/comm/dg17/599fi_en.htm)

  • 飯田哲也「持続可能な社会へ向かうスウェーデンの新エネルギー政策」
    (http://www.jri.co.jp/JRR/199804/industry.html)

  • Pellx
    (http://www.pellx.com/engelska/index.html)

  • 持続可能なエネルギー未来への選択
    (http://www.jri.co.jp/JRR/199603/jizoku.html)

  • 民衆運動としての風車発電
    (http://www.asahi-net.or.jp/~pv8m-smz/
         archieve/windmill_hashizume.html)

  • 幸田シャーミンのエコインタビュー
    (http://www.ecostation.gr.jp/)

  • 自然と共生する実験住宅
    (http://www.ecohouse.co.nz/MOKUJI.HTML)


  • ここから思いついた言葉でホームページを検索!



    InfoNavigator
    *半角カナは使用できません
    検索のコツ