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[写真] 井上優
 アジア不況に終止符を打ち、経済再生に向けて新たな一歩を踏み出そうとしているマレーシアでは、1年以上中断を余儀なくされていたダム建設などの大型インフラ・プロジェクトを再開しつつあります。


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マレーシアの広告事情

月初旬に東京で開かれたアジア国際交流会議アジアの未来にて、マハティール首相が「経済危機後の最悪期は終わった。回復への道を我々はたどっている」と表明しましたが、これはあながち希望的観測、楽観的狂言といったものではなく、ここに住んでいる我々が実感できるほどに1年前とは変化が出てきています。  まず端的にわかることは市民の購買意欲が戻ってきていることですね。私は日系広告代理店の現法に勤めているため、各業界における消費者動向について、諸々のデータを含めた「生の声」が届くところにいるのですが、明らかな変化を見ることができます。

 2年前までの経済好調期には、多額の広告宣伝費の投入をもって、マーケットシェアの争奪戦が繰り広げられており、市場もそれに追随して購買力の高まりを見せてきていました。それが一昨年末より雲行きがおかしくなり、昨年は周知の通りの厳しい年となりました。とかく広告予算というのは真っ先にカットされるものですから、私の本業の冷え込みも推して知るべしってとこでした。(^^;)

告出稿量が落ちると、新聞等の刷りもの、TV等の電波ものにも活気が薄れ、必然的に購買意欲も落ちるという悪循環が始まります。この1年間で、当地の日本人学校の小学1年から中学3年までの各学年でクラスがひとつずつ減ってしまうほど、在留日本人が減りました。日系企業も「本家」が苦しい事、アジア市況の不透明感からやむを得ない処置に出た企業が多かったようです。

ころが99年の年明けから、冬眠していた企業が徐々に動き始め、市民にも「さぁ、不況は終わったぞー」といった気持ちが芽生え始めてきています。これが大きいんです。その点では、マハティール首相のリーダーシップには敬服すべきところがありますね。賛否両論が交錯しましたが、彼の対米ドル固定相場制導入という英断にも、日系企業を含めた外資系企業がどれだけ助けられたことか。
 まだまだ速度はゆったりとしたものでしょうが、このままマレーシアが、またアジアの近隣が以前の賑わいを取り戻して欲しいものです。

て、私の本業に若干触れたついでに、今日はマレーシアのユニークな広告事情についてちょっとお話ししてみましょう。他国には見られない、マレーシアならではの広告事情に我々は日々悩まされているのです。(^^)
 マレーシアの広告規制は、マレー系、中華系を主とした多民族国家、またイスラム教を国教としていることから端を発しているものが多く、特にTVコマーシャルに関する規制はかなり厳しいものとなっています。

ず、イスラムの教典に反するものとして、タバコ、ソーセージ・ハムなどの豚肉加工食品、ドッグフード、コンドーム等の商品については、いかなる媒体を通じても「広告」ができません。
 しかしながら面白いのは、毎年広告出稿量の上位に名を連ねるのは、ダンヒル、マルボロ、マイルドセブンなどの「タバコ会社」なのです。もちろん彼らはタバコの広告は打てません。じゃーどうして? 彼らは皆全く違う業種の会社を設立しているのです。「マルボロ・クラシック」というアパレル会社、マイルドセブン・シーフェアズクラブという会員制ヨットクラブ等々。そしてそれらの会社をタバコと同じロゴを使って広告するのです。うまく抜け道を使ったイメージ戦略ってやつですね。

スリム(イスラム教徒)の女性は肌の露出が原則的にはできませんので、コマーシャルでも女性の「露出度」について、膝上や肩のカットはダメだとかうるさく規制されます。ですから水着のシーンなどはこの国ではありえないんですよー。また、未婚の男女交際はイスラム教典で禁じられていますので、それを連想させるようなシーン、つまり若い男女が二人だけでフレームに収まるようなカットは使えません。必ず「グループ交際」でなければいけないのです。(笑)  規制はされていませんが、ムスリムは犬を嫌いますので、犬とじゃれ合うようなコマーシャルシーンを流すと、マレー人には売れない商品になってしまいます。猫にしないとダメなんですねぇ。

た、これは大原則になりますが、「コマーシャルに登場するタレントはもとより、制作スタッフは全てマレーシア国籍を有すること、またロケ地はマレーシア国内であること」なんていう規制があるんです。ですから日本のように外タレを使ったCMなんてお金があっても作れないんですよ。海外ロケも、雪山や砂漠などのマレーシアでは撮りようのないシーンがどうしてもコンセプト上必要だとお役所に申し出て、何とか許可された場合のみトータル秒数の20%まで許可されます。これも内需を高めるという政策から来るものだと思うのですが、我々には何とも厄介な規制となっています。  その他、CMに出てくる画面上のスーパー(文字)はマレー語でなければいけないとか、何かに陶酔、狂乱しているような表情、表現はダメだとか、いろいろあるんです。

事上で足かせになることもありますが、これら全てがマレーシアの文化だと思っているので、最近では気にならなくなってきました。でも、日本の感覚からすると面白いでしょ。
 お国が違うとこんなに「当然のこと」と思っていることが違うんですよ。

 この手の「お国柄」は他にもありますので、またの機会にご紹介しますね。


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