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[写真] 岩嵜博論
夕立が来るようになっていよいよ夏という感じですね。ぼくが通っている大学は郊外にあるので、夕立がダイナミックです。実家はさらに辺境なので、もっとダイナミックな夕立が楽しめる上、さらに夕焼けもとてもきれいだったりします。どうして都心の夕立や夕焼けはこんなにちっぽけでがっかりなんでしょう。


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自転車で街を回遊する(1)

よいよ夏です。梅雨曇の切れ間から覗く太陽の光は、強烈な明るさで地表を照らし出し、夏らしい光と影のコントラストを作り出しています。湿っぽい空気も、日差しの変化によって夏らしい軽やかな湿度に変わろうとしています。雨が降っていると外に出るのも億劫でしたが、このごろは、外に出かけるために玄関のドアを開けた瞬間、日ごとに明るくなっている光の束に包まれるのが楽しみになってきました。ドアを開けて一気に駅まで駆け出したくなります。

当は自転車に乗って風を切りながら走ることで一日が始まったらと思うのですが、残念なことにぼくが利用している最寄りの駅には駐輪場がありません。以前住んでいた街には、駅前に大きな駐輪場があったので、よく自転車を利用していました。今住んでいる街には駐輪場がほとんど整備されていないため、駅に行くのにも、ちょっとした買い物に行くのにも自転車を使うことが少なくなりました。

輪場がないから仕方がないのですが、そのおかげで自転車に乗らなくなってしまったことを思うと、ちょっとさみしい気もします。どれだけ自動車が普及したからといって、手軽に移動するための手段としての自転車の利用価値はまだまだ高いと思います。それにもかかわらず、日本の街の多くは自転車の利用を軽視してきたのではないでしょうか。今回と次回の2回にわたって、街を移動する交通手段としての自転車を見直してみたいと思います。

周辺の駐輪場の整備状況は、自治体によって様々のようです。例えば、ぼくが以前住んでいた東京都三鷹市では、主要な駅の周辺に、年間契約の有料駐輪場や、一次利用の有料/無料駐輪場がそれぞれ整備されていました。(三鷹くらしのガイド索引)ぼくも、最寄りの駅の近くにあった登録制の駐輪場を利用していました。ところが、現在住んでいる東京都町田市では、駅の近くに市営の駐輪場はありません。三鷹市のホームページでは、駐車場の案内と同等に駐輪場の案内も掲載されていましたが、町田市のホームページには、駐車場の情報しかありません。(町田の商業)駐輪場として利用できる用地の有無、都心からの距離、周辺住民の状況などの条件の違いは考慮すべきですが、自転車に対する行政の取り組み方の違いがよくわかります。

周辺での自転車の利用は、大きな問題を抱えています。それは、放置自転車の問題です。自転車文化センターのホームページでも、放置自転車の問題が社会問題として取り上げられています。(社会問題(放置自転車))それによると、放置自転車の数が減少傾向にあるものの、依然としてその数は多く、対策が求められているようです。自治体によって駐輪場整備の度合いが違うのも、直面している放置自転車の問題の大きさの違いによるものかも知れません。

のように、日本の街では自転車は駐輪場の不足や、それに伴う放置自転車の増加などネガティブな側面が注目されています。海外の街ではどうなのでしょうか。学芸出版のホームページに連載されていた、ドイツ在住の都市計画家、春日井さんによるドイツのまちづくりの紹介の中で、自転車重視のまちづくりに取り組んでいるミュンスターという街の様子が紹介されています。(ドイツのユニークな“まちづくり”003

れによると、この街では、車の利用を抑制し、そのかわりに、自転車が積極的に利用されるまちづくりの政策を推進しているということです。具体的には、自転車道路ネットワークの強化や、自転車のための交通規制を緩和、自転車のための特別標識や特別信号の整備などによって、自転車の利用を促進しています。また、日本で問題になっている駐輪場の問題も、駅前をはじめ市内各地に余裕を持って設けることによって回避されています。さらに驚くべきことに、この街では、自転車重視のまちづくりを推し進めると同時に、無料の駐車場を廃止するなどといった、車の利用を抑制するような政策を実行しているのです。このような自転車重視のまちづくりの事例は、オランダにも見られるようです。

のように、都市環境をよりよいものにするため、自動車の便利さを犠牲にしてまで、自転車の利用を推し進めるという姿勢は、まず自動車交通を整備してから、余裕があれば自転車のことも考えようといった日本の街のまちづくりの姿勢とは根本的に異なるものではないでしょうか。快適さのためには、少々の不便さを伴ってもよいという潔さを感じ取ることができます。

て、日本では本当に自転車は規制の対象となっているだけなのでしょうか。実は、日本にも、自転車を自動車交通に代わるオルタナティブとして積極的に取り入れていこうという姿勢が見られるようです。建設省道路局のホームページには、道路局による取り組みの一つとして、自転車利用促進のための道路環境の整備という項目が紹介されています。この中では、「短距離移動の自動車交通から自転車交通への転換による地球温暖化防止を目指して、良好な自転車走行環境を確保する必要がある。」とされていて、自転車交通施策の必要性が、地球環境問題との関連のもと説かれています。

らに、今年の5月には、建設省道路局環境課が、自転車利用促進のための環境整備に関する調査報告書というものを作成しているようです。この調査報告書では、自転車交通の利用促進の際に障壁となる、道路の形状の不具合を軽減するための具体的な提案や、自転車利用環境整備の具体的な進め方などが提示されています。

のように、中央省庁の行政の現場では、既に自転車交通が見直され始めていることがわかります。しかし、その試みは始まったばかりのようです。日本は不況だといわれて久しいのですが、景気がよいときには、景気の上昇を促進する自動車の利用に疑問を呈することは考えられなかったでしょう。不況の只中にあるからこそ、自分たちにとって何が必要で何が必要でなくなってきたかが冷静に議論されるようになったのかも知れません。自動車を捨てて自転車に乗りかえる、あるいは、便利さを捨てて快適さを選択するような潔さが日本でも芽生えてきたのかもしれません。

て今回は、自転車と、街づくりや環境整備といったことについてお話してきました。次回は、これまで触れてきたような自転車の可能性を踏まえながら、自転車の利用方法から、自転車の利用の仕方そのものの可能性について考えていきたいと思います。


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