[Web Travelers]
[写真] 金子伸二
 マンションの庭に群生するクローバーの間を縫って、ペンペングサが一気に背を伸ばしました。雑草としか思ってませんでしたが、春の七草の一つ、ナズナのことなんですね。素朴な姿で、まとまって咲くとなかなかきれいなので気に入っていたのですが、ある日管理人さんに一掃されてしまいました。英語ではshepherd's purse(羊飼いの財布)と呼ばれるこの植物のことを、もう少し調べてみたくなりました。


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もうひとつのトーキョー案内

 々回のタウトの旅と物見る力では昭和の初めに日本を訪れたドイツ人建築家、ブルーノ・タウトの日本での足跡をたどりましたが、タウトの頃とは比べものにならないほど、今では数多くの外国人が観光やビジネスなどで日本を訪れています。タウトの場合、彼が日本で出会ったものの印象をまとめた記録は、当時の日本人に、自分たちが当たり前のように暮らしている日本という地理的な空間とそこで起きている出来事が、「外」からやってきた人にとっては極めてユニークで興味深いものであることを伝えました。それは日本人にとって、自身を客観的に理解するためのもう一つの目の役割を果たすものでした。
それでは今日海外から日本を訪れる人たちの目に、日本はどのような空間として映ずるのか。今回は外国人の日本旅行に関連したページをたどりながら、物見遊山の旅行者気分で、日本観光を楽しんでみましょう。

 ず、現在の日本観光の定番パターンはどんなものなのか、JTBの米国支社であるJapan Travel Bureau USAでパッケージツアーのサンライズ・ツアーを見ると、成田空港から入って東京、箱根、京都、奈良を見て関西空港から出るというルートが多いようです。とりわけ東京見物は日程的にも多くとられていて、東京タワーや皇居、明治神宮、浅草寺といった定番の観光名所のほか、「スキヤキ・ナイト」「カブキ・ナイト」「ゲイシャ・ナイト」などのオプショナル・ツアーも設けられています。なんか日本観光のパターンって、タウトの頃から変わっていないような気もしますが、秋葉原を通ったりもするようで、「ハイテク日本」的な部分も押さえられているようです。

 本を訪れる外国人にとって心強い情報源となるのがJapan for Visitors。日本観光に関連したサイトのリンク集の一種ですが、単にサイトを並べるだけでなく、それぞれのサイトの内容にまで踏み込んで、情報を再編集するような形でリンクが構成されていて、日本人にとっても役立ちそうです。
あるいは、有名観光地を回るパッケージ・ツアーではなく、自分のスタイルでじっくり見て歩きたいという人にはRandy Johnson's Japan Pageというページがあって、そのなかのFavorite Getaways in Rural Japanでは、Randyさんが自ら訪れた全国津々浦々の旅の情報が篤実な文章で丁寧に紹介されています。それぞれの地理や地域性の捉え方が非常に明晰で、そのまま訳して日本の子供たちの地理のお勉強に使いたくなるような文章です。Randyさんに比べて、ろくに自分の住んでいるところを見て歩いていないのが恥ずかしくなってきます。

 れでは実際に日本を訪れた人たちは、その滞在の中でどんな印象を持って返るのでしょうか。Journeys to JapanはGary Kobliskaさんが1982年から89年にかけて5度来日し、全都道府県を訪れた時の記録がまとめられたものです。その第1回、1982年の関西と関東の旅については日本語版日本への旅が併載されていて、読んでいくと観光名所をアクティブに回るGaryさんの旅の視点を追体験しているかのようです。ふだんそこに生活している人間にとっては、こうした観光名所の存在は空気のように意識から除外されているものですが、外から来る人にとってはむしろこうしたものが意識の主役を占めている。同じ一つの地理空間の中に、二つの異なった価値空間が併存しているところが実感できて、とても興味深いです。
一方、Roger & Marilyn's Photo Tour of Tokyo, Japanは、Roger JesraniさんとMarilyn Jesraniさん夫妻が1998年に日本を訪れた際の写真をもとに日本への旅行者向けの情報が構成されたサイトです。やはり一般的な観光名所が中心ですが、それ以外に観光の途中で見かけた街の風景や人々の様子なども収められていて、Garyさんとはまた異なった視点が感じられます。わずか7日間の滞在によるものとは信じられないほどの充実度で、一つの都市の姿を鮮明に抽出して見せてくれる編集手腕には驚かされます。う〜ん、このお二人、ただ者ではありません。
そして、英語による東京情報誌Tokyo Q - A weekly city guideのサイトに収められたTokyo photo galleryは、旅行者としてではなく、東京に滞在するカメラマンKen Straitonさんによる東京の風景の記録です。しっとりとした質感のあるモノクロ写真にはある種の抽象化された魅力が醸し出されていて、まさに今の東京を捉えたものでありながら、あたかも一つ一つの写真すべてが別の時代、別の都市で撮られた風景ででもあるかのようで、そこから今の東京、そして日本という空間の不思議さをあらためて感じることができます。

 ウトの頃と同様、今の私たちにとっても、こうした明敏な「外からの目」は、自分たちにとって当たり前のものとなっている生活空間を新鮮な視点で捉え直す格好の手掛かりを与えてくれるものといえるでしょう。



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