[Web Travelers]
[写真] 眞柄裕美
 今年の春は、去年の高温多湿のせいで杉の花粉量が例年以上と予測されていましたが、実際、シーズンが始まってみると、花粉用のマスクをした人に会わずに街を歩くことはできないというくらい、花粉症の人が増えているようです。かくいうわたしも、たまに目がしょぼしょぼと痒く、窓を開ければ大きなクシャミが出るようになり、いよいよ仲間入りを覚悟しているところです。


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棚田を耕す人

 年、暖かくなると花の種をまいているのですが、今年は花よりも、何か食べられるものにしようと考えているところです。トマト、じゃがいも、ニラ、イネ・・・。イネも、田んぼまでいかなくとも、プランターに水をはって育てることはできるそうです。まあ、せいぜい数本の単位で、育ててみたというレベルでしょうが。そんなことを考えていたら、たまたまテレビで、千葉県の鴨川の棚田で都市に住む人が米作りに参加するというニュースを見かけました。参加者の中には、東京の多摩地区から来たという人もいて、「遠いけど、頑張って通いたい」とインタビューに答えていました。
その人の背景には、山から海へと降りていく見事な棚田が広がり、多摩からはるばる千葉まで通いたくなる理由の一つには、この景色もあるのかなと思えるほどでした。 そのニュースによると、棚田は機械による農作業が不向きなことと、農業従事者の高齢化で人手が不足しているため、耕作されずに放置される水田が増え、環境の悪化も引き起こしているそうです。そこで、都市の住民にも手伝ってもらいたい、または逆に、都会に住む人の方から何か手伝わせてほしい、ということで、都市住民が棚田で米づくりに参加する取り組みが各地で行われているようです。ネット上でも、具体的に試み、呼びかけるグループが増えつつあります。

 「棚田支援市民ネットワーク」は、「棚田を入り口に、中山間地のさまざまな問題を共に考え、自分たちにできる応援をしよう」という非営利団体で、都市の住民の側からの発信です。何故、棚田を守らなければならないのかは、「棚田とは」に書かれていますが、それによると、棚田には、洪水や山崩れを防ぎ、ふるさとの原風景とも呼べる美しい景観をつくり出し、将来の食料危機に備えるなどの多面的な役割があるからだそうです。現在の活動としては、新潟県松之山町、長野県八坂村、千葉県鴨川市の三ケ所で、米づくりコースや体験イベントを実施し、東京で月一回の棚田講座を開いているそうです(「事務局便り」)。棚田ネットとして米づくりにどこまでかかわることができるかは、現在も試行錯誤の段階で、「棚田の案山子No.7」によると、松之山での去年の作業量は全体の3割ぐらいで、今年はどこまで増やすことができるか地元の人と一緒に考えるそうです。

 田支援市民ネットワークは、都市の住民からの働きかけですが、農村の側からの発信もあります。

 「水俣・久木野だより」は、水俣市久木野村の村おこし施設「愛林館」館長、沢畑さんのサイトです。この愛林館は、「エコロジー(風土・循環・自立)に基づくむらおこし」をテーマに、水俣市の委託を受けて久木野地域振興会が運営しています。その活動の一つである環境教育の中で、棚田の田植え・稲刈り体験が行われ、現在は、棚田での大豆の耕作団員を募集中です(「大豆耕作団」)。遺伝子組み換え食品の影響で、今や外国産の大豆は消費者に人気がなく、わずか4%しか作られていないという国産大豆の値段は上昇していますが、安全な国産大豆を自分で育てる、または育ててもらって、棚田の保全にも一役買おうというものです。

 た、沢畑さんは、館長の仕事以外にも、農林業の現場からの提言を新聞や雑誌に発表され、棚田についても、保全のための具体的な方法を提案されています(「棚田保全のページ」)。たとえば、農薬や除草剤の安易な使用を減らすために農薬の間接税の導入、棚田向きの基盤整備、小型農業機械の開発、地域外の住民を受け入れるための宿泊所確保や農作業指導者への日当制度などが挙げられています。また、「意見異見 水と空気の価格」では、これまでは森や棚田が豊かな水をたくわえ、きれいな空気をつくってきたものの、市場経済の中では、もはや林業も農業も経済的に成り立ちにくいので、今後は、税金を投入して森や棚田を保全する必要があるのではないか、と問題提起されています。

 業に関しては、愛林館では、「林業労働をきっちり体験する」ための合宿が開かれています(「働くアウトドア」)。「Webmag特集第31号 里山再生と炭焼き&木質発電」でも、里山や雑木林を守るために、下草刈りや除伐、炭焼きなどに取り組む各地のグループを紹介しましたが、愛林館では夏休みの休暇にそれらの作業がまとめてできるように日程が組まれています。

 俣久木野では、水俣市と地域振興会が愛林館の活動を支えていますが、県が直接、棚田保全の活動に取り組んでいるところもあります。

 「棚田ファンクラブ」では、鳥取県農村整備課が、棚田ファンクラブの会員を募集し、棚田保全ボランティア活動をおこなっています。このファンクラブは会費が無料で、ボランティア活動は、主に草刈りや農業水路の清掃なのですが、汗を流した後は棚田米のおにぎりと漬け物の昼食が出されるそうです(「棚田を守る運動」)。「棚田を守る運動 / 今までの活動紹介」には、ボランティア隊の活動の模様が紹介され、集落の代表者の「本当に、これだけの草刈り作業ができるのか、心配していた。予想を上回る、たくさんの人に参加していただいて、作業も早く終わり、昔の棚田の姿を久しぶりに目にすることができ、感無量です。これを契機に、みなさんとの交流を深めながら、保全活動を継続していきたい。」という感謝の言葉も紹介されています。また、ボランティアに参加した人たちの声も掲載され、「良い経験になった」、「棚田の米づくりの苦労がわかった」、「また来たい」など、ボランティアの充実感が伝わってきます。

 にも、一枚一枚の水田に月が写し出されるという「田毎の月」で有名な長野県更埴市の姥捨の棚田では、市の農林課が「おばすて棚田」を貸し出し、美しい景観を将来に受け継ごうとしています(「素晴らしい棚田(千枚田)を後世に残そう」)。おばすて棚田の近くには、「田毎の月」を一望できる古刹長楽寺や温泉やキャンプ場もあります。

 た、中国山脈の「柿木村大井谷棚田ホームページ」では、農作業の参加をする「棚田オーナー制度」と、トラストに応募してお米を受け取ったりイベントに参加できる「棚田トラスト制度」と二通り企画されています。

 田を守るために何ができるのか、都市から、地元から、それぞれの立場で考え、交流し、その土地に合ったそれぞれのやり方で行動する人たち。参加者も、企画者も、受け入れる農家も、とても充実した時間を過ごしているようです。



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